既治療CLDN18.2陽性胃がん、CAR-T療法satri-celがPFS改善(CT041-ST-01)/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/10

 

 既治療のCLDN18.2陽性進行胃または食道胃接合部がん患者において、医師が選択した治療と比較してsatricabtagene autoleucel(satri-cel、自家CLDN18.2特異的キメラ抗原受容体[CAR]T細胞療法)による治療は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)について有意差はないものの臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・Peking University Cancer HospitalのChangsong Qi氏らが実施した「CT041-ST-01試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年6月7日号に掲載された。

中国の無作為化実薬対照比較第II相試験

 CT041-ST-01試験は、既治療のCLDN18.2陽性進行胃・食道胃接合部がんにおけるsatri-cel治療の有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化実薬対照比較第II相試験であり、2022年3月~2024年7月に中国の24施設で参加者のスクリーニングを行った(CARsgen Therapeuticsの助成を受けた)。

 年齢18~75歳、CLDN18.2陽性の進行胃・食道胃接合部がんで、2ライン以上の前治療に不応であった患者を対象とした。被験者を、satri-cel(細胞量250×106、最大3回まで)を投与する群、または医師が選択した治療(TPC)を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。TPCは、標準治療薬(ニボルマブ、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、rivoceranib[apatinib])から1つを選ぶこととした。

 主要評価項目は、ITT集団におけるPFSとし、盲検下独立中央判定とした。

奏効率、病勢コントロール率も良好

 156例(年齢中央値52.0歳[四分位範囲:44.5~59.0]、女性69例[44%]、胃腺がん136例[87%]、食道胃接合部腺がん20例[13%])を登録し、satri-cel群に104例、TPC群に52例を割り付けた。それぞれ88例(85%)および48例(92%)が実際に試験薬の投与を受けた。satri-cel群では、28例(27%)が3ライン以上の前治療を受けており、72例(69%)が腹膜転移を有していた。TPC群では、それぞれ10例(19%)および31例(60%)であった。

 PFSの追跡期間中央値は、satri-cel群9.07ヵ月、TPC群3.45ヵ月だった。ITT集団におけるPFS中央値は、TPC群が1.77ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.61~2.04)であったのに対し、satri-cel群は3.25ヵ月(2.86~4.53)と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.37[95%CI:0.24~0.56]、片側log-rank検定のp<0.0001)。

 OS中央値は、satri-cel群が7.92ヵ月(95%CI:5.78~10.02)、TPC群は5.49ヵ月(3.94~6.93)であり(HR:0.69[95%CI:0.46~1.05]、片側log-rank検定のp=0.0416)、有意差はないもののsatri-cel群で臨床的に意義のある良好な傾向を認めた。

 奏効率(完全奏効+部分奏効)はsatri-cel群22%、TPC群4%(部分奏効2例のみ)、病勢コントロール率(完全奏効+部分奏効+安定)はそれぞれ63%および25%であった。奏効期間中央値はsatri-cel群が5.52ヵ月で、TPC群の部分奏効の2例ではそれぞれ4.47ヵ月および5.42ヵ月だった。奏効までの期間中央値はsatri-cel群が1.94ヵ月、TPC群の部分奏効例はそれぞれ1.77ヵ月および2.96ヵ月であった。

固形がんでの世界初の無作為化対照比較試験

 安全性解析は、試験薬の投与を少なくとも1回受けたすべての患者で行った。試験治療下でのGrade3以上の有害事象は、satri-cel群で88例中87例(99%)、TPC群で48例中30例(63%)に発現した。試験治療下での有害事象による死亡は、それぞれ1例(播種性血管内凝固症候群による)および1例(血液凝固障害による)にみられた。

 satri-cel群で最も頻度の高いGrade3以上の治療関連有害事象は、リンパ球数の減少(86/88例[98%])、白血球数の減少(68例[77%])、好中球数の減少(58例[66%])であった。サイトカイン放出症候群は、satri-cel群の84例(95%)で発現した。

 著者は、「本試験は、固形がんにおけるCAR T細胞療法の世界初の無作為化対照比較試験と考えられる」「これらの結果は、satri-celが進行胃・食道胃接合部がんの既治療患者における標準治療となる可能性を示唆しており、より早期の治療ラインでのさらなる検討を支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)