外傷患者への早期の酸素投与、制限的vs.非制限的/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2025/01/10

 

 成人外傷患者において、早期の制限的酸素療法は非制限的酸素療法と比較し、30日以内の死亡や重大な呼吸器合併症を減少しなかった。デンマーク・RigshospitaletのTobias Arleth氏らTRAUMOX2 Trial Groupが、デンマーク、オランダ、スイスの15の病院前救護拠点および重症外傷センター5施設で実施した無作為化非盲検評価者盲検比較試験「TRAUMOX2試験」の結果を報告した。すべての重症外傷患者に対して早期から酸素投与を行うことが推奨されているが、過度に酸素を投与することは死亡や呼吸器合併症のリスク増加と関連することが示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年12月10日号掲載の報告。

30日以内の死亡と重大な呼吸器合併症の複合アウトカムを比較

 研究グループは、2021年12月7日~2023年9月12日に、鈍的または穿通性外傷により参加施設に直接搬送され、外傷チームの発動を要し24時間以上の入院が予想される成人外傷患者を、施設到着前または外傷センター入院時に、制限的酸素療法群(SpO2の目標94%、8時間)または非制限的酸素療法群(12~15L/分または吸入酸素濃度0.6~1.0、8時間)に1対1の割合で無作為に割り付け、2023年10月12日まで追跡した。

 主要アウトカムは、30日以内の死亡および/または重大な呼吸器合併症の複合とし、盲検下で麻酔および集中治療医学の医療専門家が評価した。また、30日以内の死亡ならびに重大な呼吸器合併症のそれぞれを、重要な副次アウトカムとして個別に評価した。

主要アウトカムの発生は、16.1% vs.16.7%で有意差なし

 計1,979例が無作為化され、1,508例が試験を完了した(制限的酸素療法群750例、非制限的酸素療法群758例)。患者背景は、年齢中央値50歳(四分位範囲:31~65)、男性73%、外傷重症度スコア中央値14(9~22)であった。

 主要アウトカムの解析対象(制限的酸素療法群733例、非制限的酸素療法群724例)において、複合アウトカムのイベントはそれぞれ118例(16.1%)と121例(16.7%)に発生した(オッズ比:1.01[95%信頼区間[CI]:0.75~1.37]、p=0.94、絶対群間差:0.56%ポイント[95%CI:-2.70~3.82])。

 複合アウトカムの個別イベントの発生についても、両群間で有意差は認められなかった。

 有害事象および重篤な有害事象の発現は、無気肺を除いて両群間で同程度であった。無気肺は、制限的酸素群が非制限的酸素群と比較し発現頻度が低かった(それぞれ27.6%、34.7%)。

 なお、著者は研究の限界として、非盲検デザインが治療決定に影響を与える可能性があること、無作為化後に除外された患者によりバイアスが生じた可能性があること、傷害の種類は意図的に不均一としたこと、アウトカムに影響を与えるには介入時間が短い可能性があることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)