2014年、UNICEFとWHOは、「すべての新生児のための行動計画(Every Newborn Action Plan:ENAP)」の中で、すべての国が2030年までに年間死産率(annual stillbirth rate:SBR)を出生1,000件当たり12件以下にするという絶対目標を表明している。米国・ワシントン大学のNicholas J. Kassebaum氏らGBD 2021 Global Stillbirths Collaboratorsは、近年、死産は世界的に徐々に減少しているものの、その数は依然としてかなり多く、とくに開発が遅れている国々に高度な負担が集中しているとの調査結果を報告した。研究の成果は、Lancet誌2024年11月16日号に掲載された。
1990年から2021年の185の国と地域のデータを解析
本研究は、GBD 2021の一環として実施され、204の国と地域のうち185から1万1,412件の資料を取得し、1990年から2021年までの死産のデータを抽出した(Bill & Melinda Gatesの助成を受けた)。
最終的なデータセットは、2つの妊娠週数の閾値(20週以上と28週以上)とマッチするよう調整され、GBD 2021の最終評価としての出生と新生児の全死因死亡のデータを用いて死産の総数を算出した。
さらに、見逃された死産数の評価を行い、死産の傾向および新生児の死亡との関連で死産の減少の進展状況を評価した。
死産は39.8%、新生児死亡は45.6%改善
2021年の世界の死産率は、妊娠週数20週以上では出生1,000件(死産+生児出生)当たり23.0(95%不確実性区間[UI]:19.7~27.2)であったのに対し、28週以上では16.1(13.9~19.0)であった。2021年の高所得国の妊娠週数20週以上での死産率は1,000件当たり4.7(4.1~5.4)であり、日本は2.0(1.5~2.5)と低値だった。
2021年の世界の新生児死亡率は、生児出生1,000件当たり17.1(95%UI:14.8~19.9)であり、これは219万人(190万~255万)の新生児死亡数に相当する。
妊娠週数20週以上での世界の推定死産数は、1990年の508万人(95%UI:407万~635万)から2021年には304万人(261万~362万)へと39.8%(31.8~48.0)減少したが、同時期の世界の新生児死亡数の改善率45.6%(36.3~53.1)(1990年の新生児死亡数403万人[386万~422万]から減少)には及ばなかった。
死産の30.5%が、20から28週の間に発生
2021年の死産数は、南アジアとサハラ以南のアフリカで世界全体の77.4%(304万人中235万人)を占め、1990年の60.3%(508万人中307万人)から増加した。また、2021年には、世界全体の死産数(304万人)の30.5%に相当する92万6,000人(95%UI:79万2,000~110万)が、妊娠週数20週から28週の間に発生しており、国によって大きなばらつきを認めた。
著者は、「死産を継続的に減少させるための戦略を検討する中で、質の高い妊産婦ケア、とくに熟練した医療提供者のいる施設での出産前ケアと分娩に、誰もが公平にアクセスできる環境づくりへの取り組みが、2030年までにすべての国がENAP目標を達成するための、世界の保健コミュニティの中心的な目標でなければならない」、「世界的な死産の負担を減少させるには、妊産婦保健の不公平性に対処し、その質を強化するとともに、データシステムの堅牢性を向上させることが緊急に必要である」としている。
(医学ライター 菅野 守)