IBSの2次治療、低用量アミトリプチリンが有用/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/10/27

 

 プライマリケアにおける過敏性腸症候群(IBS)の2次治療として、低用量アミトリプチリンはプラセボと比較し、6ヵ月後のIBS重症度尺度(IBS Severity Scoring System:IBS-SSS)スコアが有意に低く、安全性および忍容性も良好であることが示された。英国・リーズ大学のAlexander C. Ford氏らが、英国のプライマリケア55施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Amitriptyline at Low-Dose and Titrated for Irritable Bowel Syndrome as Second-Line Treatment:ATLANTIS試験」の結果を報告した。IBS患者の多くはプライマリケアで管理されている。IBSに対する1次治療が無効であった場合、英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは2次治療として低用量の三環系抗うつ薬を考慮することが推奨されているが、プライマリケアにおける有効性は不明であり処方頻度は低い。Lancet誌オンライン版2023年10月16日号掲載の報告。

1次治療後に症状持続のIBS患者をアミトリプチリン群とプラセボ群に無作為化

 研究グループは、プライマリケアでIBS(サブタイプを問わずRome IV基準を満たす)と診断され、食事の改善、水溶性食物繊維、鎮痙薬、下剤、止瀉薬などの1次治療の効果が得られず、IBS-SSSスコアが75点以上の症状を有し、ヘモグロビン、白血球数、血小板数およびCRPが正常、抗組織トランスグルタミナーゼ抗体陰性、自殺念慮がない18歳以上の患者を、アミトリプチリン群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間投与した。投与量は、1日1回(夜)10mgより開始し、症状や副作用に応じて3週間で1日最大30mgまで漸増した後、試験期間中は症状や副作用に応じて変更可とした。

 主要アウトカムは、無作為化後6ヵ月時点のIBS症状(IBS-SSSで評価)で、ITT解析を実施した。安全性については、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者を対象として評価した。

6ヵ月後のIBS重症度尺度スコアはアミトリプチリン群で有意に低値

 2019年10月18日~2022年4月11日に、463例(平均年齢48.5±16.1歳、女性68%、男性32%)がアミトリプチリン群(232例)またはプラセボ群(231例)に無作為に割り付けられ、338例が試験を完遂した。

 主要アウトカムである6ヵ月時点のIBS-SSS合計スコアにおいて、アミトリプチリン群はプラセボ群より有意に優れていた(群間差:-27.0点、95%信頼区間[CI]:-46.9~-7.1、p=0.0079)。

 6ヵ月以内に投与中止に至った患者は、アミトリプチリン群46例(20%)(有害事象による投与中止は30例[13%])、プラセボ群59例(26%)(同20例[9%])であった。重篤な副作用は5例(アミトリプチリン群2例、プラセボ群3例)、試験薬と関連のない重篤な有害事象は5例(それぞれ4例、1例)報告された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員