外陰部高度扁平上皮内病変でイミキモド外用は手術との比較で非劣性/Lancet

外陰部の高度扁平上皮内病変(vHSIL)の治療において、外用免疫調節薬イミキモドによる局所療法は、有効性に関して外科手術に対し非劣性で、安全性も良好であり、本症の1次治療となる可能性があることが、オーストリア・グラーツ医科大学のGerda Trutnovsky氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年4月25日号で報告された。
オーストリア6施設の無作為化非劣性第III相試験
本研究は、外陰部上皮内新生物(VIN)の治療における、イミキモドの手術に対する非劣性の検証を目的とする無作為化第III相試験であり、2013年6月~2020年1月の期間に、オーストリアの6つの病院で参加者の登録が行われた(オーストリア科学基金とオーストリア婦人科腫瘍グループの助成を受けた)。対象は、年齢18~90歳の女性で、組織学的にvHSILと確定され、肉眼的に単巣性または多巣性病変を有する患者であった。主な除外基準は、(1)臨床的に浸潤性病変が疑われる、(2)外陰がんまたは外陰部の重度の炎症性皮膚症の既往がある、(3)過去3ヵ月以内にvHSILに対する積極的な治療を受けている場合であり、免疫不全状態、妊娠中、授乳中の女性も除外された。
被験者は、イミキモド(5%クリーム)の投与または手術(切除術またはアブレーション)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。イミキモドは、緩やかな増量計画に基づき、4~6ヵ月間にわたり最大で週3回、患者自身により塗布された。ベースライン、6ヵ月、12ヵ月の時点で、外陰部鏡検査、外陰部生検、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査、患者報告アウトカムの評価が行われた。
主要エンドポイントは、局所イミキモド治療または1回の外科的介入から6ヵ月の時点での臨床的完全奏効(CCR)であった。CCRは、外陰部病変の臨床的証拠がないこと(原発病変の完全消失)と定義された。解析はper protocol集団で行われ、非劣性マージンは20%とされた。
intention-to-treat解析でも非劣性の強い傾向が
110例が登録され、このうち109例がintention-to-treat集団(単巣性vHSIL例78%、多巣性vHSIL例22%)で、イミキモド群56例(平均[±SD]年齢53.0[15.7]歳、閉経後61%)、手術群53例(50.2[14.4]歳、43%)であった。per protocol解析には98例(46例、52例)が含まれた。6ヵ月時のper protocol解析によるCCRは、イミキモド群が80%(37/46例)、手術群は79%(41/52例)で達成され、イミキモド群の手術群に対する非劣性が示された(非劣性解析のp=0.0056)。閉経状態や喫煙習慣の有無と臨床効果には関連がなかった。
CCRのintention-to-treat解析では、イミキモド群の非劣性の強い傾向が認められた(CCR割合:イミキモド群72%[39/54例]vs.手術群79%[42/53例]、非劣性解析のp=0.065)。
また、浸潤性病変は、手術群(2回目の手術を受けた患者を含む)で5例に認められたのに対し、イミキモド群ではみられなかった。
6ヵ月時の全体のHPVクリアランス率は44%で、両群間に差はなかった。手術群では最初の1ヵ月間に外陰部痛が、イミキモド群では2ヵ月間に外陰部の掻痒の頻度が高かった。また、イミキモド群は、びらんや紅斑のほか、疲労、頭痛、筋肉/関節の痛みの頻度が手術群よりも高かったが、多くが軽度~中等度だった。鎮痛薬の使用は手術群で多かった。治療満足度は両群間に差はなかった。
著者は、「この試験は免疫組織化学的解析と長期追跡調査が継続されており、今後、イミキモドによる局所治療が最も有益な患者を特定するのに役立つと考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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