企業による資金提供は、患者会に影響を及ぼすか/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/03

 

 患者会への企業による資金提供は一般的に行われており、企業からの財政支援を抑制する指針を持つ患者会は少なく、資金提供に関する透明性も不十分であり、資金提供を受けた患者会は出資企業にとって有利となる立場を取る傾向があることが、オーストラリア・シドニー大学のAlice Fabbri氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年1月22日号に掲載された。患者会は、保健医療(消費者教育、医学研究助成、薬剤や治療法の承認および公的保障に関する決定への寄与)において重要な役割を担うが、製薬企業や医療機器製造企業を含む複数の財政支援源に依拠することが多い。利益相反および患者会の品位や独立性に関する潜在的な脅威があるため、企業と患者会の財政上の関係への関心が高まっているという。

患者会への資金提供の影響をメタ解析で評価

 研究グループは、製薬企業および医療機器製造企業による患者会への資金提供の影響について調査する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。

 2018年1月までに医学データベース(Ovid Medline、Embase、Web of Science、Scopus、Google Scholar)に登録された文献を検索した。また、選択基準を満たした論文の参考文献を調査するとともに、この分野の専門家に連絡を取って情報を収集した。

 対象は、患者会に関する横断研究、コホート研究、症例対照研究、分割時系列解析、前後比較研究を含む観察研究であり、以下のアウトカムのうち1つ以上を報告している研究とした。(1)企業から資金提供を受けている患者会の割合、(2)企業から資金提供を受け、当該の資金に関する情報を公開している患者会の割合、(3)企業からの資金提供と、健康や施策の問題に関する組織の立場の関係。言語や出版形態は問われなかった。

 複数の研究者が独立にデータの抽出を行い、2人のレビュアーが独立に個々のアウトカムに関するエビデンスの確実性を評価した。エビデンスの質はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)システムで評価した。

出資企業の利益を誘導するバイアスを防ぐ戦略が必要

 2003~18年に発表された26件の研究(27論文、すべて横断研究)が解析に含まれた。ほとんどの研究は、複数の疾患領域の患者会を含んでおり、主に欧米の高所得国で行われた研究であった。

 26件の研究のうち15件で、企業から資金提供を受けている患者会の割合が報告されていた。その割合は20%(12/61組織)から83%(86/104組織)にわたっていた。

 企業から資金提供を受けている患者組織のうち、27%(175/642組織、95%信頼区間[CI]:24~31)がウェブサイト上で情報を開示していた。米国政府機関との協議における開示率は、2つの研究で大きく異なっており(米国疾病予防管理センター[CDC]:0%、米国食品医薬品局[FDA]:91%)、関連する政府機関の開示要項の違いを反映していることが示された。

 企業による財政支援を抑制する組織方針を持つ患者会の割合は、2%(2/125組織)から64%(175/274組織)にわたっていた。

 4つの研究が、議論の多いさまざまな問題に関して、企業からの資金提供と組織の立場の関係を解析しており、企業から資金提供を受けている患者会は受けていない患者会に比べ、全般的に出資企業の利益を支持していた。

 潜在的な有害性に関する情報の包括性を評価した研究では、情報の項目数は、企業から資金提供を受けている患者会が3.7項目(標準偏差:3.7)、受けていない患者会は10項目(同4.2)であり、統計学的に有意な差は認められなかった(Mann-Whitney検定のp=0.1)。

 著者は、「主要なアウトカムに関するデータの質が低いため、これらの結論は限定的なものとなる」と指摘し、「患者会は、患者支援や教育、研究において重要な役割を担うため、出資企業の利益に有利となるバイアスを防ぐための戦略が必要と考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員