変形性手関節症に、経口ステロイド短期投与が有効/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/11/21

 

 痛みを伴う変形性手関節症で、遠位・近位指節間(DIP/PIP)関節に炎症が認められた患者において、プレドニゾロン10mg投与は有効かつ安全であることが示された。オランダ・ライデン大学のFeline P B Kroon氏らによるプラセボ対照無作為化二重盲検試験「HOPE試験」の結果で、著者は、「われわれの試験結果は、疾患が再燃した変形性手関節症患者に対する新たな短期的治療オプションを臨床医に提示するものとなった」とまとめている。変形性手関節症は、疾患負荷が大きく、医療的ニーズを満たす効果的な治療オプションがない疾患である。Lancet誌オンライン版2019年11月11日号掲載の報告。

ベースラインから6週間後の痛みの変化をVASで評価
 HOPE(Hand Osteoarthritis Prednisolone Efficacy)試験は、局所炎症が骨関節炎の一因と考えられることから、痛みと滑膜炎を呈する変形性手関節症患者における、プレドニゾロンの短期投与の有効性と安全性の検証を目的とした。

 オランダ2ヵ所のリウマチ外来診療所を通じて、痛みを伴う変形性手関節症でDIP/PIP関節に炎症が認められた患者を適格とみなした。包含基準は、(1)DIP/PIP関節結節が4ヵ所以上あり、(2)軟部組織腫脹または紅斑が1ヵ所以上、(3)超音波でパワードップラー陽性またはグレード2以上の滑膜肥厚が認められるDIP/PIP関節が1ヵ所以上、(4)48時間の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)ウォッシュアウト中に、100mm視覚評価スケール(VAS)で30mm以上を示した手指の痛みが発症(VAS 20mmで手指の痛みが悪化と定義)とした。

 研究グループは適格患者を無作為に2群(1対1)に分け、一方にはプレドニゾロン10mg、もう一方の群にはプラセボをそれぞれ1日1回、6週間にわたり経口投与した。その後2週間はテーパリングで用量を漸減し、さらに6週間にわたり試験薬を投与せず追跡した。患者と試験チームは治療割付を知らされなかった。

 主要エンドポイントは、ベースライン(外来受診時)から6週間後の手指の痛みの変化で、VASで評価した。

6週間後の痛みの変化量、プレドニゾロン群-21.5、プラセボ群-5.2
 患者登録のスクリーニングは2015年12月3日~2018年5月31日に行われた。患者のベースライン受診が完了し治療が開始されたのは2015年12月14日~2018年7月2日であり、最後の患者が最後に試験治療を受けるために外来を受診したのは2018年10月4日であった。

 149例が適格性の評価を受け、57例(38%)が除外、92例(62%)が適格として包含された。除外理由は、大部分が1つ以上の包含基準を満たさなかったためで、最も多かったのはNSAIDウォッシュアウト後に滑膜炎症または再燃が認められなかったことだった。

 92例は、プレドニゾロン群(46例、50%)、プラセボ群(46例、50%)に無作為化され、全例が主要エンドポイントの修正ITT解析に包含された。14週間の試験を完遂したのは、両群ともに42例(91%)だった。

 ベースラインから6週間後の手指の痛みの平均変化値は、プレドニゾロン群-21.5(SD 21.7)、プラセボ群-5.2(24.3)で、群間差は-16.5(95%信頼区間[CI]:-26.1〜-6.9、p=0.0007)だった。

 非重篤有害事象の発生数は、両群で同等だった。重篤有害事象の報告は5件だったが、プレドニゾロン群での報告は1件(心筋梗塞)で、4件(手術を要した感染性外傷性脚部の血腫、腸手術、ペースメーカー植込み手術を要した心房細動、子宮摘出を要した症候性子宮筋腫)はプラセボ群での発生だった。

 また、患者4例(4%)が有害事象のため試験が中断された。1例(2%)はプレドニゾロン群(心筋梗塞)、3例(7%)はプラセボ群(腸手術、感染性脚部血腫、膝のライム関節炎)だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)