1型糖尿病の低血糖リスク、デグルデク vs.グラルギン/JAMA

1型糖尿病患者において、低血糖は良好な血糖コントロールの大きな障壁であり、重大な低血糖は昏睡や死亡につながるおそれがある。米国・Mountain Diabetes and Endocrine CenterのWendy Lane氏らは、1型糖尿病患者における症候性低血糖の発現について、インスリン デグルデク(以下、デグルデク)とインスリン グラルギンU100(以下、グラルギン)を比較した無作為化試験「SWITCH 1」で、デグルデクによる32週間の治療はグラルギンと比較して、症候性低血糖の発現を低下させることを明らかにした。JAMA誌2017年7月4日号掲載の報告。
低血糖の発現についてデグルデクのグラルギンに対する非劣性を検証
SWITCH 1試験は2014年1月~2016年1月12日に、米国84施設およびポーランド6施設において、低血糖のリスク因子を1つ以上有する1型糖尿病成人患者501例を対象に、2×32週間の治療期間(それぞれ、至適用量調整期16週+維持期16週)で実施された二重盲検無作為化クロスオーバー非劣性試験であった。被験者は、デグルデク→グラルギン投与(249例)およびグラルギン→デグルデク投与(252例)に1対1の割合で、かつそれぞれ投与時期を朝1回投与または夕方1回投与に1対1の割合で、無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、維持期におけるすべての重大な(米国糖尿病学会の定義に基づく)、または血糖値(<56mg/dL)で確定した、症候性低血糖の発現頻度(件/曝露人年[person-years’ exposure:PYE])。副次評価項目は、夜間の重大なまたは血糖値確定症候性低血糖の発現頻度、重大な低血糖を経験した患者の割合(どちらも維持期)などであった。主要評価項目などの非劣性マージンは、発現頻度の率比(RR)の両側95%信頼区間の上限値が1.10以下とし、非劣性が認められた場合は優越性を検証する両側検定を実施した。
デグルデクのほうが全症候性低血糖の発現頻度が低い
無作為化された501例(平均年齢45.9歳、男性53.7%)のうち、395例(78.8%)が試験を完遂した。維持期におけるすべての症候性低血糖の発現頻度は、デグルデク群2,200.9件/100PYE、グラルギン群2,462.7件/100PYEで、デグルデク群が有意に低かった(発現頻度のRR:0.89[95%信頼区間[CI]:0.85~0.94]、非劣性のp<0.001、優越性のp<0.001、発現頻度の差:-130.31件/100PYE[95%CI:-193.5~-67.16])。
維持期における夜間の症候性低血糖の発現頻度も、デグルデク群が有意に低いことが認められた(デグルデク群277.1件/100PYE、グラルギン群428.6件/100PYE、発現頻度のRR:0.64[95%CI:0.56~0.73]、非劣性のp<0.001、優越性のp<0.001、発現頻度の差:-61.94件/100PYE[95%CI:-83.85~-40.03])。
維持期に重大な低血糖を経験した患者の割合も、デグルデク群が低かった(デグルデク群10.3%[95%CI:7.3~13.3%]、グラルギン群17.1%[95%CI:13.4~20.8%]、McNemar検定のp=0.002、リスク差:-6.8%[95%CI:-10.8~-2.7])。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
原著論文はこちら
Lane W, et al. JAMA. 2017;318:33-44.
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グラルギンU100使用中の1型糖尿病患者は低血糖を回避するためにデグルデクにSWITCHすべきか?(解説:住谷 哲 氏)-711
コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏
社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 部長
J-CLEAR評議員