心臓手術後の心房細動、心拍数調節か?洞調律維持か?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/04/26

 

 心臓手術後の心房細動の治療において、心拍数調節(heart-rate control)と洞調律維持(rhythm control)の効果に差はないことが、米国・クリーブランド・クリニックのA. Marc Gillinov氏らCardiothoracic Surgical Trials Network(CTSN)の検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年4月4日号に掲載された。心房細動は、心臓手術後にみられる最も頻度の高い合併症で(20~50%)、死亡や他の合併症、入院の発生を増加させることが知られている。術後心房細動の予防を目指した種々の研究が進められているが、有効な方法は確立されておらず、病態が安定した患者の初回治療では、心拍数調節と洞調律維持のどちらが優れるかの議論が続いている。

2つの治療アプローチを無作為化試験で比較
 CTSNの研究グループは、心臓手術後の新規の心房細動または心房粗動に対する心拍数調節と洞調律維持の効果および安全性を評価する無作為化試験を行った(米国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。

 対象は、冠動脈疾患または心臓弁膜症で待機的心臓手術を受け、血行動態が安定し、心房細動の既往歴がない成人患者であった。術後の入院期間中(7日以内)に60分以上持続する心房細動または心房細動再発のエピソードを認めた患者を登録し、心拍数調節群または洞調律維持群に無作為に割り付けた。

 心拍数調節群では、安静時心拍数<100拍/分を目標に、心拍数を抑制する薬物療法が行われた。効果がみられない場合は、洞調律維持群に転換することとした。

 洞調律維持群では、アミオダロンを投与し、必要に応じて心拍数低下薬を併用した。割り付け後に24~48時間持続する心房細動がみられる場合は、直流除細動(direct-current cardioversion)が推奨された。

 2014年5月~15年5月までに、米国とカナダの23施設に2,109例が登録され、695例(33.0%)が心房細動を発症した。このうち523例が無作為化割り付けの対象となり、心拍数調節群に262例、洞調律維持群には261例が割り付けられた。

総入院日数、合併症、心房細動消失に差はない
 ベースラインの患者背景は両群で類似していた。全体の平均年齢は68.8±9.1歳で、女性が24.3%含まれた。冠動脈バイパス術(CABG)が約40%、心臓弁手術(修復、置換)が約40%に行われ、約20%にはこれら双方が施行されていた。

 主要評価項目である割り付けから60日までの総入院日数中央値は、心拍数調節群が5.1日、洞調律維持群は5.0日であり、両群で同等であった(p=0.76)。

 死亡率にも両群間に差はみられなかった(p=0.64)。また、血栓塞栓症や出血を含む重篤な有害事象の発生率は、心拍数調節群が100人月当たり24.8件、洞調律維持群は26.4件/100人月であり、有意な差は認めなかった(p=0.61)。

 両群とも約25%の患者が、割り付けられた治療から脱落した。その主な理由は、心拍数調節群が「薬剤が無効」、洞調律維持群は「アミオダロンの副作用」であった。

 手術から心房細動の発現までの平均日数は2.4(0~7)日であった。退院時に、心拍数調節群の42.7%、洞調律維持群の43.3%がワルファリンの投与を受けていた。

 術後の初回入院の退院時に、心房細動のない安定した心臓の調律が達成された患者の割合は、心拍数調節群が89.9%、洞調律維持群は93.5%であった(p=0.14)。

 発症から60日の時点で、心房細動が消失した患者のうち、これが30日までに達成された患者の割合は、心拍数調節群が93.8%と、洞調律維持群の97.9%に比べ有意に低かった(p=0.02)。一方、初回入院の退院から60日の時点での心房細動のない患者の割合には両群間に差はなかった(84.2 vs.86.9%、p=0.41)。

 著者は、「2つの治療戦略の一方が他方に勝ることはないことが示された」とまとめ、「このような場合、直流除細動の併用の有無にかかわらず、アミオダロンを用いた洞調律維持が心拍数調節のベネフィットを上回るか否には、患者や医師の嗜好が影響を及ぼす」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)