シミュレーションによるコミュニケーション訓練、実臨床では改善効果なし/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2013/12/16

 

 シミュレーション・ベースのコミュニケーション技能訓練は、内科研修医やナース・プラクティショナーの終末期ケアのコミュニケーションやケアの質を改善しないことが、米国・ワシントン大学のJ Randall Curtis氏らの検討で示された。終末期ケアに関するコミュニケーションは臨床技能の中心に位置づけられる。シミュレーションに基づく訓練により技能獲得が改善されることが示されているが、患者報告によるアウトカムへの影響は、これまで明らかにされていなかった。JAMA誌2013年12月4日号掲載の報告。

コミュニケーション技能研修の効果を無作為化試験で評価
 研究グループは、内科研修医およびナース・プラクティショナーに対するコミュニケーション技能に関する介入が、患者や家族の報告によるアウトカムに及ぼす影響の評価を目的とする無作為化試験を実施した。

 2007~2013年までに、ワシントン大学およびサウスカロライナ医科大学の内科研修医391人、ナース・プラクティショナー81人が、8つの研修会からなるシミュレーション・ベースのコミュニケーション技能に関する介入を受ける群(介入群、232人)または通常の教育を受ける群(対照群、240人)に無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は、患者の報告によるコミュニケーションの質(QOC)であった。QOCは17項目(0~10点、0=不良、10=完全)の平均値とした。副次評価項目は、患者の報告による終末期ケアの質(QEOLC:26項目、0~10点)、うつ症状(8項目から成る健康調査票[PHQ-8]、0~24点、得点が高いほど不良)、家族の報告によるQOC、QEOLCとした。

うつスコアはむしろ上昇
 介入群の211人(平均年齢30.5歳、女性57%)、対照群の234人(30.3歳、58%)が解析の対象となった。1,866人の患者(回答率44%)および936人の家族(同68%)が評価を行った。

 介入により、QOCおよびQEOLCに有意な変化はみられなかった。すなわち、介入後の平均QOCは6.5点(95%信頼区間[CI]:6.2~6.8)、平均QEOLCは8.3点(同:8.1~8.4)であったのに対し、対照群はそれぞれ6.3点(同:6.2~6.5)、8.3点(同:8.1~8.5)であった。

 補正後の比較では、両群間に患者報告によるQOC(p=0.15)および家族報告によるQOC(p=0.81)のいずれにおいても有意な差は認めなかった。また、QEOLCについても、患者報告(p=0.34)および家族報告(p=0.88)のいずれもが両群間で同等であった。

 介入群では、うつスコアが対照群よりも有意に上昇した(10.0 vs 8.8点、補正後モデルを用いた介入効果:2.2、p=0.006)。

 著者は、「シミュレーション・ベースのコミュニケーション技能訓練は、内科研修医やナース・プラクティショナーの終末期ケアのコミュニケーションや、ケアの質を改善せず、わずかながら患者のうつ症状を増悪させた」とまとめ、「これらの知見により、シミュレーションによる訓練から実際の患者ケアへの技能の移行や、コミュニケーション技能評価の妥当性に疑問が生じる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)