2型糖尿病の発症予測、遺伝学的リスクモデルは有用でない:Whitehall II試験

提供元:ケアネット

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公開日:2010/02/05

 



2型糖尿病の発症予測では、表現型に基づく非遺伝学的なリスクモデルの方が、2型糖尿病関連一塩基多型(SNP)に基づく遺伝子型モデルよりも有用なことが、イギリスUniversity College London心血管遺伝学センターのPhilippa J Talmud氏らが行ったコホート研究(Whitehall II試験)で示された。イギリスでは最近、発症予測に関する2つの非遺伝学的モデル(ケンブリッジ2型糖尿病リスクスコア、フラミンガム子孫試験2型糖尿病リスクスコア)が確立され、ルーチンに用いられている。その一方で、2型糖尿病の発症に関連する20のSNPが同定されているが、発症予測にどの程度役立つかは明らかにされていなかった。BMJ誌2010年1月23日号(オンライン版2010年1月14日号)掲載の報告。

1980年代に開始された前向きコホート研究の7回目のスクリーニングの解析




Whitehall II試験の研究グループは、将来の2型糖尿病の発症予測において、2型糖尿病関連SNPの有用性を評価し、すでに確立されている表現型に基づく非遺伝学的モデルにこれらの遺伝情報を付加することで予測能を向上させられるか否かを評価するために、プロスペクティブなコホート研究を実施した。

Whitehall II試験には、1985~1988年までに35~55歳のロンドン市の公務員10,308人が登録された。7回目の調査(2003~2004年)において、6,156人からDNAが採取された。登録時に健康であった5,535人(平均年齢49歳、女性33%)のうち、第7回調査の時点で302人が10年以上持続する新規の2型糖尿病に罹患していた。

表現型に基づく非遺伝学的リスクモデルのうち、ケンブリッジ2型糖尿病リスクスコアは年齢、性別、薬物療法、2型糖尿病の家族歴、BMI、喫煙歴に基づいて算出され、フラミンガム子孫試験2型糖尿病リスクスコアは年齢、性別、親の2型糖尿病既往歴、BMI、HDLコレステロール、トリグリセライド、空腹時血糖から計算された。

遺伝学的リスクモデルには、2型糖尿病との関連が確認されている20のSNPが使用され、リスク対立遺伝子(allele)の保有数(0~40個)と遺伝学的リスク機能(個々のリスク対立遺伝子を遺伝子研究のメタ解析で得られたオッズ比に従って重み付け)に基づいてスコアが算出された。

2型糖尿病の発症は、標準的な経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)、主治医による診断、あるいは糖尿病治療薬の使用によって確定された。

表現型リスクモデルと遺伝学的リスクモデルを合わせても識別能は改善されず




遺伝学的リスクスコアは将来の糖尿病患者を識別できなかった。ケンブリッジ2型糖尿病リスクスコアとフラミンガム子孫試験2型糖尿病リスクスコアは、遺伝学的リスクスコアよりも識別能が優れていた。

表現型によるリスクモデルに遺伝学的情報を加味しても識別能は改善されず、モデルの精度を調整(キャリブレーション)してもわずかな改善効果しか得られなかった。ケンブリッジリスクスコアに遺伝学的情報を加えた場合は約5%の改善効果が得られたが、フラミンガム子孫リスクスコアに付加しても識別能は改善されなかった。

著者は、「表現型に基づくリスクモデルの方が遺伝学的リスクモデルよりも将来の2型糖尿病患者の識別能が優れており、両者を合わせた場合、最良でもわずかな改善効果しか得られなかった」と結論し、「2型糖尿病関連遺伝子に関するトランスレーショナル研究の成果を臨床に適用する場合は、病因や治療標的の面からアプローチする方がよいかもしれない」と考察している。

(医学ライター:菅野守)