将来、腎移植が必要になる可能性がある人は、どの時点で移植を受けるべきなのだろうか。その答えの手がかりとなり得る研究結果が発表された。この研究では、腎機能がある程度保たれている段階で腎移植(先行的腎移植)を受けても、透析が必要となるほど悪化してから移植を受けた場合と比べて死亡リスクに有意な差は認められないことが示された。米イェール大学医学部生体腎臓ドナープログラムの医療ディレクターを務めるAbhishek Kumar氏らによるこの研究結果は、「Transplantation Proceedings」5月号に掲載された。
Kumar氏は、「この研究結果は、腎移植は本当に必要になるまで待ってから受けるべきであることを示している。そうでなければ、自分の腎臓が機能する期間を無駄にしてしまうことになる」と述べている。
透析は、機能不全に陥った腎臓に代わって血流から余分な水分や老廃物を排出する治療法だが、透析を受けている患者に身体的・精神的負担を伴い、免疫機能の低下も起こりやすい。このため、一般的に末期腎不全患者は透析が必要になる前に腎移植を受けた方が良いと考えられている。
Kumar氏は、「献腎移植リストに登録されている場合、いつ移植を受けるかを自分で決めることはできない。一方、生体ドナー臓器を移植する場合には、移植のタイミングについてある程度は自分で決められるが、問題は、いつ移植を受けるのが最善かということだ」と話す。
この点を明らかにするためにKumar氏らは、2000年から2020年の間に成人に実施された28万8,309件の腎移植データの分析を行った。これらの腎移植のうち、5万2,018件(18%)は先行的腎移植であった(献腎移植33%、生体腎移植67%)。これらのレシピエントは、移植時のeGFR(推算糸球体濾過量)の値に応じて、4群(10mL/分/1.73m2未満、10以上15mL/分/1.73m2未満、15以上20mL/分/1.73m2未満、20mL/分/1.73m2以上)に分類された。
先行的腎移植を受けた患者は、白人、高学歴、民間保険加入者が多い傾向が認められた。eGFRに応じた4群間で死亡率を比較したところ、統計学的に有意な差は認められなかった。また、生体ドナーからの先行的腎移植を受けた患者のみを対象にしたサブグループ解析でも、死亡率に統計学的に有意な差はなかった。
Kumar氏は、「私は患者に、移植を受けるのに最適なタイミングは透析が必要になったときだと伝えることがある」と話す。ただし同氏は、透析や移植に最適なタイミングは人によって異なり、予測するのは難しいことを指摘し、「可能であれば透析は避けるべきだが、早期に移植を受けることがその解決策になるわけではない」と述べている。
[2025年6月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら