糖尿病性腎症の世界疾病負荷、1990~2021年にかけて増大

提供元:HealthDay News

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公開日:2025/04/28

 

 糖尿病性腎症の世界疾病負荷は1990~2021年にかけて増大しており、2050年まで増大が続く見込みである、とする研究結果が報告された。成都市第三人民病院(中国)のXiao Ma氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に2月21日掲載された。

 慢性腎臓病(CKD)は糖尿病の深刻な合併症であり、その世界的負担は徐々に増加している。
米国では2000~2019年の間に、約80万人の患者が糖尿病を主因とする腎不全により透析または腎移植を受けているという報告もある。糖尿病性腎症の独立したリスク因子としては、遺伝、高血糖、高血圧などが挙げられているものの、CKDを併発した糖尿病の発生率に関する完全な統計はない。そのような背景から、著者らは、世界疾病負荷研究(GBD)に基づき、1990~2021年のデータを使用して、1型および2型の糖尿病に起因するCKDの世界的な負荷の動向および今後の予測について分析した。

 本研究では、推定年間変化率(EAPC)を用いて、疾病サブタイプ別および地域別の疾病負荷の動向を推定し、糖尿病によるCKDに対する様々な年齢層および代謝因子の影響を評価した。疾病負担の推定には、死亡者数、年齢標準化死亡率、障害調整生存年(DALY)、年齢標準化DALY率が使用された。国や地域の社会経済発展の指標には社会人口統計学的特性指数(SDI)を用いた。GBDが対象とする国や地域は、その指数によって、低SDI、中低SDI、中SDI、中高SDI、高SDIの5つのカテゴリーに分類された。さらに自己回帰和分移動平均(ARIMA)モデルを用いて、2022~2050年までの糖尿病性腎症の疾病負担を予測した。

 解析の結果、糖尿病性腎症の疾病負荷およびそのEAPCは、世界204カ国の国別および地域別のSDIサブグループによって、大幅に異なっていた。また、さまざまな年齢集団や代謝因子(腎機能障害、空腹時血糖高値、高BMIなど)が糖尿病性腎症の疾病負荷に及ぼす影響にも、大きなばらつきが見られた。代謝因子が加齢に伴う死亡者数や死亡率に及ぼす影響には、正の相関が認められた。1型糖尿病によるCKDと2型糖尿病によるCKDの死亡率には、異なる代謝因子が異なる影響を及ぼしていた。

 糖尿病性腎症の世界的な負荷は、ARIMAモデルに基づく予測では、治療介入を行わなければ2022~2050年にかけて増大が続くとされた。2050年までに、死亡者数は9億5480万人、DALYs
2569万1,300年、死亡率は10万人あたり8.118人、DALYsは10万人あたり196.143年になると試算された。

 著者らは、「本研究から、治療介入を行わない場合、糖尿病性腎症の世界的な負荷は2022~2050年にかけて年々増大し、将来的に世界全体の医療システムをさらに圧迫する可能性が示された。今回のデータは、特に糖尿病性腎症のリスクが高い集団における、糖尿病性CKDに対する費用対効果の高い政策や個別化された介入策の開発に役立つと考える」と述べている。

 また、糖尿病の負担が中程度のSDIの国々で一貫して高かったことに関しては、「特に医療資源が乏しい低・中所得国においては、糖尿病とその合併症の効果的な管理のための、より正確で費用対効果の高い診断ツールや介入が今後必要とされるのではないか」と指摘している。

[2025年3月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら