良いニュースを秘密にすることは活力をもたらす

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/12/26

 

 喜ばしい知らせ(ニュース)を誰かと共有するのは楽しいが、しばらくの間、自分だけの秘密にしておくことで、より多くの活力が得られるとする研究結果が報告された。米コロンビア大学ビジネス学分野のMichael Slepian氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Personality and Social Psychology」11月号に掲載された。

 今回の研究に先立ってSlepian氏らが実施した、500人(女性289人、平均年齢41歳)を対象にした調査によると、素晴らしいニュースを知ったときに最初にすることとして、76%が「誰かと共有する」と答えたという。しかし、人生には、プロポーズや待ち望んだ妊娠など、喜ばしい出来事でも秘密にしておきたいものもある。

 Slepian氏らは、2,500人以上を対象に5つの実験を行い、人々が良いニュースを秘密にしておく動機を探り、また、不快さや恥ずかしさを理由に秘密にする場合と喜ばしいことを秘密にする場合とで、秘密を持つことが及ぼす影響の違いについて検討した。

 最初の実験では、参加者に「新しい学校/仕事を始める」「自分にプレゼントを買う」などの38個の良いニュースのリストを提示し、その中から自分に当てはまるものと、秘密にしているものを選んでもらった。参加者に当てはまった良いニュースの数は平均14~15個で、そのうちの5~6個が秘密にされていた。次に参加者を、秘密にしている良いニュースを思い浮かべる群と、秘密にしていない良いニュースを思い浮かべる群にランダムに割り当て、それらの一つ一つを思い浮かべたときに感じる活力やポジティブな感情を主観的活力尺度(subjective vitality scale;SVS)で評価してもらうとともに、その秘密を他人と共有するつもりであるかどうかを尋ねた。

 その結果、秘密にしている良いニュースを思い浮かべた参加者の方が、秘密にしていない良いニュースを思い浮かべた参加者よりも多くの活力を感じていることが明らかになった。また、ニュースが秘密であるか否かにかかわらず、良いニュースを他の人と共有するつもりだと答えた人も、高い活力を感じていることが示された。この結果についてSlepian氏は、「自分で秘密にすることを決めた良いニュースは、その人を良い気分にさせるはずだ。そのようなポジティブな感情は、活力の予測因子であることが知られている」と説明する。

 他の実験からは、良いニュースを秘密にすることが活力をもたらす別の理由も明らかになった。ある実験では、参加者に良いニュースのリストの中から近い将来、自分に起こりそうなものを選んでもらった。参加者の一部には、その日の遅くにパートナーに伝えるまでそのニュースを秘密にしておくことを想像してもらい、残りの参加者には、現在パートナーと連絡が取れないため、その日の遅くにしかそのニュースを伝えられないことを想像してもらった。その結果、パートナーを驚かせるためにニュースを秘密にすることを想像した群では、単に情報を知らせることができなかった群に比べて、より多くの活力を感じていたことが示された。

 また、別の実験では、参加者に、現在のポジティブな秘密、ネガティブな秘密、ポジティブでもネガティブでもない秘密を思い起こしてもらった。それらの動機について調べたところ、人が良いニュースを秘密にするのは、外部からの圧力を感じたからではなく、内面的あるいは個人的な理由からであることが示された。Slepian氏は、「良いニュースは、それを自分の意思で秘密にすると決めることができた場合には活力をもたらす。一方、内容のネガティブさや恥ずかしさを理由とする秘密は、外部からの圧力や恐怖に支配されていることが多い」と説明している。

 Slepian氏は、「人は時に、何らかのニュースをより興奮に満ちたものにするために、わざわざ多くの手間をかけて明かそうと計画したりする。このようなサプライズは非常に楽しいものだが、驚きは、感情の中で最も儚いものでもある。何日も、何週間も、あるいはそれ以上の時間をかけて、他人の喜びに満ちた驚きの表情を想像する時間を持つことで、たとえ自分の心の中だけであっても、このワクワクする瞬間をより長く味わうことができるのだ」と話している。

[2023年11月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら