スタチンが致死的な脳内出血リスクを低減する可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/21

 

 コレステロール低下薬のスタチンは、心臓を守るだけでなく、出血性脳卒中の一種である脳内出血のリスクを低減する可能性のあることが、新たな研究で示された。南デンマーク大学(デンマーク)のDavid Gaist氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に12月7日掲載された。

 脳内出血は、動脈または静脈が破れることで生じる。米国脳神経外科学会(AANS)によると、脳内出血は脳卒中の15~30%を占めており、死亡率も極めて高い。また、出血そのものが脳を損傷するだけでなく、出血による頭蓋内の圧力の上昇が脳にさらなる悪影響を及ぼすこともある。Gaist氏は、「スタチンは脳梗塞のリスクを低減することが明らかにされているが、初回の脳内出血リスクに与える影響については、見解が一致していなかった」と述べている。

 今回の研究では、デンマークの医療記録を使用し、2009年から2018年の間に初めて脳葉領域に出血を来した55歳以上の患者989人(平均年齢76.3歳、女性52.2%)を特定した。脳葉領域には前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉などの大脳の大部分が含まれる。これらの患者を、脳内出血の既往がなく、年齢、性別、その他の因子が類似する3万9,500人と比較した。さらに、脳葉領域以外の領域(大脳基底核、視床、小脳、脳幹など)に出血を起こした患者1,175人(平均年齢75.1歳、女性46.5%)についても、脳内出血の既往がなく、年齢、性別、その他の因子が類似する4万6,755人と比較した。スタチンの使用状況は処方データを用いて判断した。

 その結果、高血圧、糖尿病および飲酒などの因子を考慮しても、スタチンを使用していた患者では、脳葉領域の脳内出血リスクが17%、脳葉領域以外の領域の脳内出血リスクが16%低いことが明らかになった。いずれの脳領域でも脳内出血リスクの低さはスタチン使用歴の長さと関連を示し、5年以上使用している患者においては、脳葉領域でのリスクは33%、脳葉領域以外の領域でのリスクは38%低かった。

 Gaist氏は、「われわれは、脳葉領域とそれ以外の領域に着目し、スタチン使用と初回の脳内出血リスクに部位が関わっているのかを検討した。その結果、スタチンを使用していた患者では、いずれの脳領域でも脳内出血のリスクが低いことが分かった。スタチンを長期間使用している場合のリスクは、さらに低かった」と説明する。

 その上でGaist氏は、「スタチンが脳梗塞だけでなく脳内出血のリスクも低減させ得るというこの結果は、同薬剤を使用する人にとって心強いニュースだ」と述べる。その一方で同氏は、「ただしこの研究は、主にヨーロッパ系の人から成るデンマークの人のみを対象にしたものだった。ヨーロッパ系以外の集団を対象に、研究を重ねる必要がある」と話している。

[2022年12月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら