キッチンマグネットが心筋梗塞の夫に救急受診を促した―AHAニュース

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/18

 

 今年の2月初め、米国テキサス州に住むDanny Saxonさんは、プールの修理と掃除の仕事を終えた後、胃薬を口にした。当時Dannyさんは常に胃の不調に悩まされていた。それから数分後、腕の筋肉が引きつるような感覚に続き、痛みが起きてきた。Dannyさんは、心臓発作の初期症状として腕がしびれることがあると耳にしていたため、恐れを感じた。しかし彼は、まだ自分が50歳であると思い直し、恐れを否定した。

 Dannyさんの妻、Morganさんは、夫の今日の予定を聞くために電話を掛けた。電話に出たDannyさんは、「どうやら自分は不安発作か何かを患っているようだ。自分でも驚いている。後で詳しく話す」と語った。それからDannyさんはトラックに乗り、運転を始めた。帰宅するか病院に行くか決めかねていた。

 電話を切った後もMorganさんは、夫が言っていたことが気になっていた。かつて夫が不安発作の話をしたことはなく、「腕がしびれる」という症状も心配であり、心臓発作を起こしているのではないかと考えた。夫は自分より20歳も年上で、高血圧の薬を服用しており、3人目の子どもができた時に「やめる」と誓ったタバコも、いまだ吸い続けていた。

 彼女はふと7年ほど前に、息子が学校を通じて米国心臓協会(AHA)の募金活動に協力した時に入手したカードを使い、自作したキッチンマグネットを思い出した。そのカードには心臓発作の警告サインが列記されていて、何かの役に立ちそうだと考えた彼女は、市販のキッチンマグネットにカードを取り付けて、冷蔵庫に貼っておいた。Morganさんはその写真を撮影し、「病院に行く状態? それとも911番に電話すべき?」というテキストメッセージを添えて、夫の携帯に送信した。

 Dannyさんの携帯がメッセージ受信音を鳴らした時、彼は危険な状態だった。腕や胸の不快感について書かれた、マグネットの写真の最初の数行を目にして、彼はすぐに病院に向かった。救急外来の入り口で救急救命士(EMT)の姿が目に入ったので「助けてくれ。心臓発作のようだ」と叫ぶと、EMTはすぐに車椅子をセットしDannyさんを座らせた。

 救急外来で診察を受けている最中にMorganさんから電話が入った。EMTがその電話を受け、「Dannyさんを診察中だが彼は胸痛を訴えており、血圧がかなり高い」と状況を話し、「すぐに病院に来てほしい」と伝えた。Morganさんは父親と子どもたちを車に乗せ、病院へ急いだ。

 1時間後に病院に到着した時、夫は冗談を言って笑っていた。そばで看護師が背を向けて電子カルテの入力をしていた。その状況を見てMorganさんは安心した。しかし、しばらくたつとDannyさんは咳き込むように苦しみ始めた。やがて、白目をむいてもがき出した。Morganさんは「Danny! Danny! どうしたの?」と叫んだ。

 看護師は直ちに院内緊急コールを発信するとともに、胸骨圧迫を始めた。病室が多数の医療スタッフでいっぱいになったため、Morganさんの父親は彼女に「廊下に出ていよう」と声をかけた。

 Dannyさんは心停止に陥っていた。3回の除細動により心拍が再開した。その夜の心臓カテーテル検査により、右冠状動脈が100%閉塞していることが分かり、バルーンで血管を拡張後にステントが留置された。2日後、Dannyさんは自宅に戻ることができた。

 ライフスタイルと家族歴の双方がDannyさんの心臓に影響を及ぼしていた。Dannyさんの父親は60歳で4カ所のバイパス術を受け、母親もステント留置術を経験していた。それにDannyさんは長年のヘビースモーカーだった。ただし、2月のその日以降は吸っていない。「私はテキサスの田舎で育った男だ。心臓発作が起きるまで、危険因子の全てを無視しようとしていた」とDannyさんは話す。

 Dannyさんは身体的な健康を取り戻したが、メンタルの不調が続いている。仕事を再開した初日には、心臓発作が再発したと思い込んで救急外来を受診するようなこともあった。結局、何も問題は起きていなかった。「毎朝、目覚めとともにその日に何か起きるのではないかと不安になる」と彼は語る。Morganさんも同じようなメンタルの不調に悩んでいる。しかし彼女は、これらの問題は、やがて時間が解決してくれると考えている。

 Saxonさん夫婦の話がどのように伝わったのか、心臓発作の警告サインが書かれたAHAの公式マグネットを誰かが送ってくれた。現在それはSaxonさん宅の冷蔵庫に、Morganさん自作バージョンと並べて貼られている。

[2022年6月17日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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