インフルエンザや肺炎のワクチン接種でアルツハイマー病リスクが低下

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/08/18

 

 インフルエンザや肺炎球菌のワクチンに予想外の効果がある可能性を示唆する2件の研究結果が、アルツハイマー病協会国際会議のバーチャルミーティング(AAIC 2020、7月27~31日)で発表された。これらのワクチンを接種した人では、アルツハイマー病の発症リスクが低下することが示されたのだ。同会議ではさらに、認知症患者が重篤な感染症に罹患すると、認知症のない人と比べて、死亡リスクが高まることを示した研究結果も報告され、感染症予防の重要性が浮き彫りになった。

 1つ目の研究は、米テキサス大学ヘルスサイエンスセンターのAlbert Amran氏らが実施したもので、60歳以上の男女9,066人のデータセットが解析された。その結果、インフルエンザワクチンを1回接種した人は、アルツハイマー病のリスクが17%低く(オッズ比0.8309、P<0.0001)、より頻回に接種した人では、そのリスクが13%低くなる(オッズ比0.8736、P=0.0342)ことが明らかになった。また、インフルエンザワクチンの初回接種年齢が下がるほど、アルツハイマー病の発症リスクが低くなることも分かった(初回の接種年齢が1歳上がるごとに、ハザードリスクは1.0924上昇、P<0.0001)。

 2つ目の研究は、米デューク大学社会科学研究所のSvetlana Ukraintseva氏らによるもので、5,146人の高齢者(65歳以上)を対象に、肺炎球菌ワクチンおよびインフルエンザワクチンの接種または肺炎球菌ワクチンのみの接種とアルツハイマー病発症リスクの関連について検討された。その結果、65~75歳時に肺炎球菌ワクチンを接種した人は、アルツハイマー病を発症するリスクが25~30%低いことが明らかになった。肺炎球菌ワクチン接種の効果が最も大きかったのは、アルツハイマー病発症リスクを高める遺伝子を保有していない人で、リスクは最大約40%低下していた(オッズ比0.62、P<0.04)。また、65~75歳時における肺炎球菌ワクチンおよびインフルエンザワクチンの接種回数は、アルツハイマー病発症リスクの低下と関連していたが(オッズ比0.88、P<0.01)、この効果はインフルエンザワクチンのみの接種では認められなかった。

 ただし、これらの研究結果は、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種とアルツハイマー病リスクの低下の関連を示したものに過ぎず、因果関係を証明するものではない。それでもAmran氏とUkraintseva氏は、米疾病対策センター(CDC)の予防接種に関する推奨に従うのが賢明だと話している。

 では、これらのワクチンは、どのような機序でアルツハイマー病の発症リスクを低下させ得るのか。特定の感染症が脳に何らかの影響を与え、アルツハイマー病の発症を促していると仮定すると、ワクチン接種により感染症の発症リスクが低下することでアルツハイマー病発症リスクの低下がもたらされる可能性がある。あるいは、ワクチン接種が炎症を抑制するなど、アルツハイマー病の関連因子に何らかの作用を及ぼすことも考えられる。そのほか、ワクチンを接種する人は、普段から生活習慣が健康的であるため、それが脳に保護的に働くとも言える。こうした推測は可能だが、アルツハイマー病協会でメディカル・サイエンティフィック・アフェアーズのバイスプレジデントを務めるHeather Snyder氏によれば、現時点ではワクチンを接種した人でアルツハイマー病の発症リスクが低下した理由は不明だという。

 同会議ではさらに、デンマーク認知症研究センターのJanet Janbek氏らによる研究結果も報告された。それによると、65歳以上のデンマーク国民149万6,436人のデータを解析した結果、感染症が原因で入院した認知症患者では、認知症と感染症のいずれにも罹患していない人と比べて、死亡リスクが6.52倍であることが判明したという。また、死亡リスクの上昇は、その後10年間続くことも明らかになった。

 なお、学会発表された研究は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

[2020年7月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら