婦人科腫瘍の循環器合併症~血栓症と高血圧~/日本婦人科腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2026/08/13

 

 婦人科がんと循環器疾患の関連は深い。第68回日本婦人科腫瘍学会学術集会にて、大阪がん循環器病予防センターの向井 幹夫氏は「婦人科腫瘍学と腫瘍循環器学の連携」と題し、両者の密接な関係について紹介した。

婦人科腫瘍とがん関連血栓症(CAT)

 婦人科腫瘍患者は、閉経後の動脈硬化リスク上昇に加え、卵巣摘出後の外科的閉経や薬物治療により心血管イベントリスクが増大する。中でも、CATへの対応は婦人科腫瘍の診療においてきわめて重要である。

 がんはTissue Factor(TF)やサイトカイン、さらにマイクロパーティクルを分泌して凝固系を活性化し血栓を形成する。がんはこの血栓を利用して転移するのである。がん自体による血栓形成以外に、薬剤による血栓形成も問題となる。婦人科がんで汎用される内分泌薬やパクリタキセル、タキサンなどの化学療法薬は血栓症合併リスクが高い。

 日本の固形がん1万例における静脈血栓塞栓症(VTE)の発症を前向きに調べたCancer VTE Registryによれば、全体集団では5.9%、婦人科腫瘍では5.5%にVTEが認められた。また、婦人科腫瘍800例超におけるVTEの発症と危険因子を調べたGOTIC-VTE試験では、全体のVTE発症は5.8%、卵巣・卵管・腹膜がんでは13.7%に上る。その多くは無症候性であり、近位部よりも遠位部が多かった。婦人科腫瘍における脚の腫れは治療によるリンパ浮腫とみなされがちだが、末梢の血栓が隠れているケースは多いと、向井氏は注意を促す。

 『肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン』2025年改訂版では、がん関連VTEに関する記載が追加された。そこでは、活動性がん患者の肺血栓塞栓症/中枢型深部静脈血栓症(DVT)の治療は、がんが治癒しない/活動性がなくならない限り継続を考慮すること、中枢型DVTの延長治療には低用量DOACを考慮することなどが記載されている。

婦人科腫瘍とがん関連高血圧(Onco-Hypertension)

 がん治療関連高血圧では、がん由来のサイトカインや化学療法の血管内皮障害により、通常の高血圧より急速に病態が重篤化する。通常5年かかるプラーク形成が、これらの薬剤では1年程度で起こる可能性があるという。

 血管新生阻害薬は投与直後から血圧を上昇させ、長期使用で血管内皮の障害を引き起こす。そのほかプラチナ系薬、アルキル化薬、PARP阻害薬、アロマターゼ阻害薬など婦人科腫瘍の治療で汎用される抗がん剤には血圧を上昇させるものが多い。

 『高血圧管理・治療ガイドライン』2025年改訂版では、担がん患者の項が追加され、がんと高血圧の双方向性や治療ステップが示されている。そこでは、がん治療患者の降圧治療開始時期と降圧目標、降圧薬の第1選択、治療抵抗性への対応などが取り上げられている。

 婦人科腫瘍における循環器合併症の管理には、ライフステージ、性ホルモン、血栓・出血リスクといった婦人科特有の課題がある。より良い循環器疾患の合併症管理には、婦人科腫瘍医と循環器医の情報共有と連携が大きな鍵を握ることは間違いない。

(ケアネット)