ピロリ菌で大腸がんリスク増、除菌の恩恵を受けやすい人は?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2026/08/10

 

 Helicobacter pyloriH. pylori)感染は大腸がん発症リスクを高める可能性があり、除菌治療が長期的なリスク低減につながる可能性が示された。中国で実施された2つの大規模ランダム化試験の解析により、遺伝的リスクや病原性因子を考慮した層別解析では、除菌の恩恵を受けやすい集団が存在することも明らかになった。北京大学のXuan Han氏らによる研究結果は、Gut誌オンライン版2026年6月30日号に掲載された。

 H. pyloriは胃がんや消化性潰瘍の原因菌として知られる一方、近年は慢性炎症や腸内細菌叢の変化などを介して大腸がんにも関与する可能性が指摘されている。今回の解析では、中国・山東省で実施された2つのランダム化試験を対象とした。1つは1995年開始のShandong Intervention Trial(SIT、3,365例、追跡期間29.4年)、もう1つは2011年開始のMass Intervention Trial in Linqu, Shandong Province(MITS、18万284例、追跡期間13.8年)である。MITSでは、宿主の遺伝的リスクとH. pyloriの病原性因子に対する血清陽性率に基づいて大腸がんリスクを評価するケースコホート研究も実施された。

 主な結果は以下のとおり。

H. pylori陰性例と比較して、除菌治療を受けていないH. pylori陽性例は、大腸がんリスクが有意に高かった(SIT/ハザード比[HR]:2.96、95%信頼区間[CI]:1.30~6.71、MITS/HR:1.27、95%CI:1.04~1.55)。このリスク増加は、4つのH. pyloriの病原性因子(CagA、HpaA、Omp、HP0305)に対する血清陽性例、および遺伝的リスクが高い例(ポリジェニックリスクスコア上位10%)でとくに顕著であった。
・SITでは、H. pylori除菌治療は29.4年間の追跡期間において大腸がんリスクの有意な低下と関連しており(HR:0.47、95%CI:0.22~0.99)、除菌成功例ではより大きな低下が観察された(HR:0.38、95%CI:0.15~0.94)。一方、MITSでは、治療後13.8年時点で全体的な効果は認められなかった(HR:1.17、95%CI:0.95~1.43)。しかし、病原性因子に対する血清陽性例と遺伝的リスクが高い例では保護効果が認められた。

 著者らは、試験間の相違について、追跡期間の長さ、除菌レジメン、対照群治療の違いに加え、生活習慣や時代背景の差が影響した可能性を挙げている。さらに「H. pylori感染は胃がんだけでなく大腸がんリスクにも関与する可能性がある。除菌治療による大腸がん予防効果は長期間の追跡で初めて明らかになる可能性があり、とくに遺伝的高リスク者や病原性菌株感染例で恩恵が大きいことが示唆された。また、今後は遺伝情報や菌株情報を組み合わせたリスク層別化により、より個別化された大腸がん予防戦略の構築につながる可能性がある」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)