神経炎症は、アルツハイマー病(AD)の病態形成に関与していることから、公衆衛生上の懸念が高まっている。一般的な慢性炎症性疾患であるアレルギー性鼻炎は、全身性炎症の一因となり、ADリスクに影響を及ぼす可能性がある。台湾・台北医学大学のShih-Han Hung氏らは、アレルギー性鼻炎の既往歴とその後のAD発症との関連を詳細に評価するため、台湾の大規模かつ代表的なコホートを用いて検討を行った。Scientific Reports誌オンライン版2026年5月2日号の報告。
台湾の国民健康保険研究データベース(LHID2010)を用いた本ケースコントロール研究では、初めてADと診断された65歳以上のAD群4,681例および傾向スコアマッチングで抽出された対照群1万4,043例を対象とした。アレルギー性鼻炎の既往歴は、耳鼻咽喉科専門医による診断を含む、2回以上の臨床診断と定義した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、潜在的な交絡因子を調整した後、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。
主な内容は以下のとおり。
・AD群におけるアレルギー性鼻炎の既往歴を有する割合は、対照群と比較し、有意に高かった(25.29%vs.21.01%、p<0.001)。
・人口統計学的変数、社会経済的地位、地理的要因、併存疾患(高脂血症、糖尿病、冠動脈疾患、難聴、高血圧を含む)で調整を行った結果、アレルギー性鼻炎の既往歴はAD発症リスクの上昇と強い関連が認められた(調整OR:1.279、95%CI:1.182~1.384)。
・この関連性は、男性(調整OR:1.196、95%CI:1.053~1.358)と女性(調整OR:1.339、95%CI:1.210~1.482)の両方において統計学的に有意であった。
著者らは「本研究において、アレルギー性鼻炎の既往歴とアルツハイマー病発症リスク上昇との間に有意な関連性が認められることを示唆している。これらの知見は、慢性末梢炎症が神経変性に関連する可能性のある因子であることを浮き彫りにしている」としている。
(鷹野 敦夫)