鉄欠乏性貧血に対する静注鉄は速やかな鉄補充が期待できるが、急性感染症患者の場合は、病原体への鉄供給により感染を悪化させる可能性が懸念されている。そこで、米国・Charleston Area Medical CenterのHaris Sohail氏らは、鉄欠乏性貧血を有する急性感染症患者を対象に、静注鉄投与と生存、ヘモグロビン(Hb)値の回復などとの関連を検討した。その結果、静注鉄投与は検討したすべての感染症で14日および90日生存率の上昇と、Hb値の良好な回復に関連していた。本研究結果は、Blood誌2026年5月21日号に掲載された。
本研究は、111医療機関の匿名化された電子健康記録を集積したTriNetX Research Networkの2000年1月~2025年6月のデータを用いた後ろ向きコホート研究である。対象は、MRSA菌血症、肺炎、尿路感染症、大腸炎、蜂窩織炎のいずれかと鉄欠乏性貧血を併発し、感染症診断から2日以内に抗菌薬を投与された18歳以上の入院患者とした。診断から7日以内に静注鉄を投与された患者と非投与患者を、感染症ごとに1:1の傾向スコアマッチングを行って比較した。主要評価項目は14日および90日生存率で、副次評価項目は入院期間、輸血実施日数、Hb値の変化などとした。
主な結果は以下のとおり。
・選択基準を満たした患者は33万9,145例であった。傾向スコアマッチング後の各群の患者数は、MRSA菌血症8,433例、肺炎1万9,281例、尿路感染症1万8,613例、大腸炎5,340例、蜂窩織炎8,404例であった。
・静注鉄群では、すべての感染症で14日および90日生存率が非投与群より有意に高かった。各感染症の90日生存率は以下のとおり(静注鉄群vs.非投与群、ハザード比[95%信頼区間]を示す)。
MRSA菌血症:88.6%vs.83.8%、0.67(0.62~0.73)
肺炎:84.7%vs.78.1%、0.66(0.63~0.69)
尿路感染症:89.1%vs.85.6%、0.73(0.69~0.78)
大腸炎:89.7%vs.83.8%、0.60(0.53~0.68)
蜂窩織炎:92.2%vs.89.2%、0.70(0.63~0.78)
・感染症および鉄欠乏性貧血診断後60~90日までのHb値の上昇幅は以下のとおり(静注鉄群vs.非投与群)。
MRSA菌血症:1.32g/dL vs.1.00g/dL
肺炎:1.25g/dL vs.0.97g/dL
尿路感染症:1.39g/dL vs.1.02g/dL
大腸炎:1.45g/dL vs.0.74g/dL
蜂窩織炎:1.41g/dL vs.0.92g/dL
(いずれもp<0.0001)
・赤血球輸血を実施した日数は、蜂窩織炎を除くすべての感染症で静注鉄群が有意に少なかった。
・入院期間は、MRSA菌血症と尿路感染症では静注鉄群でわずかに長かったが、肺炎、大腸炎、蜂窩織炎では有意差を認めなかった。
本研究結果について著者らは、鉄欠乏性貧血を有する急性感染症の入院患者に対する静注鉄投与は、感染症の種類を問わず、生存率の上昇とHb値の良好な回復に関連していたとまとめた。ただし、本研究は後ろ向き観察研究であり、静注鉄による生存改善を示したものではない。感染症の重症度や静注鉄を投与した臨床的理由など、未測定交絡の影響も否定できず、安全性と有効性の確認には前向き研究が必要であるとしている。
(ケアネット 佐藤 亮)