病名や薬物治療手順を一部変更、「蕁麻疹診療ガイドライン」改訂/日本皮膚科学会

提供元:ケアネット

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公開日:2026/06/26

 

 国際ガイドラインの改訂や病態解明の進展、新たな生物学的製剤の登場などを背景に、8年ぶりの改訂版となる「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」が2026年4月に公開された。病型分類および病名の一部変更や治療アルゴリズムのアップデートが行われた今回の改訂について、ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福永 淳氏(大阪医科薬科大学)が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。

慢性蕁麻疹→慢性特発性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹→NSAID誘発蕁麻疹へ

 蕁麻疹の病型について、特発性の蕁麻疹、刺激誘発型の蕁麻疹、血管性浮腫、蕁麻疹関連疾患という4つの大分類に変更はないが、その下の分類や病名がいくつか変更された。まず、特発性の蕁麻疹は「急性特発性蕁麻疹(発症後6週間以内)」と「慢性特発性蕁麻疹(発症後6週間超)」に、“特発性”という言葉を加える形に病名が変更された。

 刺激誘発型の蕁麻疹は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーがアレルギー性蕁麻疹の一部であるという考え方に基づき、別分類されていた2018年版から、アレルギー性の蕁麻疹(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)という表記に変更された。またアスピリン蕁麻疹は、アスピリンでのみ生じるという誤解を生む可能性があることから、NSAID誘発蕁麻疹と改めた。

 血管性浮腫に関しては、「マスト細胞起因性」および「非マスト細胞起因性」という中分類を新たに設け、非マスト細胞起因性の病型の1つとして「メディエーター不明の血管性浮腫」が追加された。

 さらに、病態に関する記述も最新の知見をもとに大きくアップデートされた。その中で最大の特徴といえるのが、すべての文言において「肥満細胞」という名称を削除し、「マスト細胞」に統一した点である。「脂肪細胞(肥満に関わる細胞)」と混同することを避けるための配慮であり、疾患の正しい理解を促進する狙いがあるという。

日本独自の疫学データを追加、慢性特発性蕁麻疹患者のボリュームゾーンは40〜50代

 これまでの日本のガイドラインでは、蕁麻疹に関する詳細な疫学データが不足していたが、今回の改訂では新たに医療情報データベースなどを用いた研究結果が追加された。日本人の慢性特発性蕁麻疹の推定有病率は1.2〜1.6%であり、全国でおよそ200万人の患者が存在すると推測される。新規発症率はおよそ0.7〜0.8%である。

 福永氏は、「慢性特発性蕁麻疹の有病率はヨーロッパ諸国と比較して、東アジアでより高い傾向がある。年齢分布を見ると、実は0〜9歳の小児期に新規発症の大きなピークが存在する。しかし、この年代の多くは自然治癒に向かうため、実際に医療機関で継続的な治療を要する患者のボリュームゾーンは40~50代となる。また、男女比は2対3で女性に多いことも明らかになった」と語った。

網羅的検査の実施は推奨されない

 検査に関しては、2018年版から「原因検索のための網羅的な検査」を推奨しない方向性であることに変更はないが、今回その姿勢をより明確に打ち出している。I型アレルギーの検査実施については、1型アレルギーが疑われる詳細な問診・病歴がある場合にのみ、疑わしい抗原に対して個別の検査を選択的に行うべきとされた(CQ1)。急性特発性蕁麻疹(CQ2)および慢性特発性蕁麻疹(CQ3)に対する検査についても、全例でルーチンに実施する必要はないとしたうえで、推奨文では以下のように記載された。
急性特発性蕁麻疹:発熱などの全身症状を伴い,細菌やウイルスの感染が疑われる場合には血算・血清・生化学検査などの一般的な検査を行ってもよい
慢性特発性蕁麻疹:非定型的な症例、難治性の症例などで、背景因子、合併症の存在が疑われる場合は抗ヒスタミン薬やオマリズマブの反応性を予測できる可能性があり、それらに応じた検査(血清総IgE値,甲状腺自己抗体,CRPの測定)を行ってもよい

PROMs活用を推奨し、治療の第1目標を変更

 今回のガイドライン策定委員会で全員一致で推奨に強い合意が得られたのが、UAS7(Urticaria Activity Score over 7 days)や、UCT(Urticaria Control Test)などの患者報告アウトカム尺度(PROMs:Patient-Reported Outcomes Measures)を用いた疾患コントロール状態の客観的評価である。治療の第1目標は、2018年版での「治療により症状が現れない状態」から「治療により生活に支障がない状態」と変更された。またその目安をUCTのスコアで表しており、第1目標(治療により生活に支障がない状態)がUCT12点以上、第2目標(治療により症状が現れない状態)がUCT16点と明記された。福永氏は、「日常診療のアセスメントの際には、ぜひUCTを活用して客観的な評価を行っていただきたい」と呼びかけた。

薬物治療はStep 2にオマリズマブまたはデュピルマブ、ステロイドは「急性増悪時のみ」

 治療手順については、急性と慢性でアルゴリズムが明確に分けられた。急性は主に救急外来などでの短期間の対応を想定している。薬物治療手順は、慢性特発性蕁麻疹について以下が示された。
Step 1:第2世代抗ヒスタミン薬
Step 2:Step1に追加してオマリズマブまたはデュピルマブ
Step 3:Step1に追加してシクロスポリンまたは試行的治療

 2018年版でStep 2とされていたH2-拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸については、国際ガイドラインやエビデンスレベルの低さなどを背景に、Step1の補助的治療としての位置付けに変更された。

 また、Step 3に含まれていた副腎皮質ステロイドに関しては、「急性増悪時のみ」とされて、プレドニゾロン換算量0.2mg/kg/日未満で2週間以内の使用に限定することが明記された。

(ケアネット 遊佐 なつみ)