65歳以上の高齢者、NSAIDsの腎機能への影響は?

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/05

 

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、疼痛管理に広く使用されているが、とくに高齢者において腎毒性のリスクが懸念される。NSAIDsと急性腎障害の関連が知られているが、長期使用が腎機能に与える影響については、これまで一貫した見解が得られていない。そこで、韓国・Samsung Medical CenterのJung-Sun Lim氏らの研究グループは、韓国の高齢者コホートを10年間追跡した大規模な研究により、NSAIDsの長期使用が腎機能に与える影響を検討した。その結果、NSAIDsの定期的な使用が高齢者の慢性腎臓病(CKD)発症リスクを高め、腎機能の低下を加速させたことが示された。本研究結果は、Drugs & Aging誌オンライン版2025年8月6日号に掲載された。

 本研究は、韓国の高齢者コホート(National Health Insurance Service-Senior Cohort:NHIS-SC)の2009~19年のデータを用いた後ろ向きコホート研究である。対象は、ベースライン時に腎機能が正常(推算糸球体濾過量[eGFR]60mL/min/1.73m2以上、血清クレアチニン0.4~1.5mg/dL)であった65歳以上の成人4万1,237例とした。年齢、性別、併存疾患などの背景因子を調整するため、傾向スコアマッチングを行い、NSAIDsの処方日数が1ヵ月以上またはMPR(medication possession ratio)80%以上の604例(NSAIDs使用群)と、NSAIDsの使用歴がない1,208例(対照群)が抽出された。主要評価項目は、追跡期間中のCKD発症(eGFR 60mL/min/1.73m2未満かつベースラインから10%以上低下)とした。Cox比例ハザードモデルを用いて、NSAIDs使用とCKD発症リスクの関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・傾向スコアマッチング後のCKD発症率(/1,000人年)はNSAIDs使用群20.18、対照群16.25であった。多変量解析において、NSAIDs使用群は対照群と比較してCKD発症リスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.11~1.93)。
・NSAIDsの種類別にみたサブグループ解析において、COX-1阻害薬(HR:1.53、95%CI:1.16~2.01)、COX-2阻害薬(HR:1.61、95%CI:1.16~2.23)のいずれも、CKD発症リスク上昇と関連していた。
・eGFRの経時的変化を追跡した結果、NSAIDs使用群は追跡2年目以降の腎機能低下が速い傾向にあった。
・末期腎不全(ESRD)の発症は、NSAIDs使用群4例、対照群1例にみられたが、両群間に有意差は認められなかった。

 本研究結果について、著者らは「本研究において、高齢者のNSAIDsの定期的な使用は、CKD発症リスクを上昇させ、腎機能の低下を加速させた。高齢者へのNSAIDsの投与は慎重に行い、投与する場合は腎機能を定期的にモニタリングすることが推奨される」と結論付けた。

(ケアネット 佐藤 亮)