双極性うつ病に対する抗うつ薬使用と躁転リスク

提供元:ケアネット

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公開日:2025/07/04

 

 双極性うつ病治療における抗うつ薬の使用は、気分極性の転換を引き起こす可能性が懸念され、依然として議論の的となっている。中国・首都医科大学のLei Feng氏らは、双極性うつ病患者に対する抗うつ薬使用と軽躁/躁転リスクとの関連を検証するため、リアルワールドにおける多国籍観察研究を実施した。Health Data Science誌2025年6月3日号の報告。

 2013年1月〜2017年12月の4つの電子医療記録データベース(IQVIA Disease Analyzer Germany、IQVIA Disease Analyzer France、IQVIA US Hospital Charge Data Master、北京安定医院)と1つの行政請求データベース(IQVIA US Open Claims)より得られた双極性うつ病患者の治療パターンに関するデータを収集し、分析した。抗うつ薬を投与された患者(AD群)と投与されなかった患者(非AD群)における双極性うつ病の初回診断日から730日後の軽躁/躁転リスクの発生率を比較し、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象は、5つのデータベースより抽出された12万2,843例。
・双極性うつ病に対し抗うつ薬を投与された患者の割合は60.6%。
・双極性うつ病の初回診断日における平均年齢の範囲は37.50±15.72〜52.10±16.22歳。
・傾向スコアマッチングにより潜在的交絡因子で調整した後、AD群の躁転リスクは、非AD群と比較し、有意な差は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.96〜1.13、p=0.989)。
・また、躁病治療薬の投与の有無に関わらず、差は認められなかった(HR:0.69、95%CI:0.38〜1.25、p=0.535)。

 著者らは「双極性うつ病のマネジメントにおいて、抗うつ薬が実臨床で広く使用されていたが、抗うつ薬使用は、躁転リスクと関連していなかった。そのため、抗うつ薬は双極性うつ病の治療選択肢の1つとして考えられる」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)