高所得国での非喫煙者の肺がん、よく料理する人ほどリスク高い?

提供元:ケアネット

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公開日:2025/07/02

 

 家庭内空気汚染が非喫煙者における肺がんの潜在的な原因であるというエビデンスが蓄積され、空気中の粒子状物質、家庭用家具から発生する揮発性有機化合物、調理煙への曝露が肺がんリスクを高める可能性がある。今回、英国・レスター大学のBria Joyce McAllister氏らが、家庭内空気汚染の1つである調理煙への曝露と非喫煙者の肺がんとの潜在的関連について高所得国で検討し、関連性が認められたことを報告した。1日1食調理する女性に対し1日3食調理する女性の肺がんのオッズ比(OR)は3.1と発症リスクが高かった一方、換気フード使用のORは0.49と予防効果が示唆された。BMJ Open誌2025年6月20日号に掲載。

 世界では肺がんの10~25%が非喫煙者に発症すると推定されている。低中所得国では、非喫煙者における肺がんの環境リスク因子、とくに暖房や調理用バイオマスの燃焼による家庭内空気汚染が広く調査されてきたが、高所得国においても近年エビデンスが発表され始めている。本研究では、Embase、Scopus、Cochrane library、CINAHLをそれぞれの開始時から2024年3月まで検索し、高所得国における家庭内空気汚染とその非喫煙者の肺がんへの影響に焦点を当てた症例対照研究を対象に系統的レビューを実施した。抽出された研究は、曝露評価や報告方法が異なりメタ解析が不可能であったため、ナラティブシンセシスを行った。

 主な結果は以下のとおり。

・解析には3件の研究の計3,734人が含まれた。すべての研究は台湾または香港で実施され、伝統的な中華料理の調理法を用いる中国人女性が対象であった。
・Chenらの研究では、生涯の調理煙への曝露を測定する「調理時間・年」によって肺がんリスクを評価し、曝露が最高レベルの場合のORは3.17(95%信頼区間[CI]:1.34~7.68)であった。
・Yuらの研究では、調理煙への曝露の指標として「調理皿・年」を使用し、曝露が最高レベルの場合のORは8.09(95%CI:2.57~25.45)であった。一方、Koらの研究では、調理年数よりも毎日の調理皿数のほうがリスク指標として重要であることが示され、1日1食調理する女性に対する1日3食調理する女性のORは3.1(95%CI:1.6~6.2)であった。
・換気フードは非喫煙者の肺がんの予防効果があり、調整ORは0.49(95%CI:0.32~0.76)であった。

 この3件の研究のレビューの結果から、著者らは「高所得国における調理煙への曝露と非喫煙者の肺がん発症リスクに関連がある可能性が示唆された。これは、低中所得国における調理煙曝露と非喫煙者の肺がんとの関連を示す多くのエビデンスを裏付けるものであり、曝露のリスクを明確に裏付けている」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)