米国と日本における医薬品の承認格差を調査した結果、2005~22年に米国で承認された医薬品のうち44%が日本では未承認であり、近年に承認された医薬品ほど未承認に留まる傾向が強かったことを、慶應義塾大学の笠原 真吾氏らがJAMA Network Open誌2025年6月10日号のリサーチレターで報告した。
近年、米国で承認された医薬品が他国では未承認のままとなる傾向が強まっており、患者の医薬品アクセスに制限が生じる可能性がある。そこで研究グループは、米国で承認された医薬品のうち、日本では承認されていない医薬品の特徴を明らかにすることを目的として横断的解析を実施した。
対象となった医薬品は、2005~22年に米国または日本で初めて承認された新規分子化合物および生物学的製剤であった。2年の猶予期間を設定して、2024年12月31日時点の日本における承認状況を評価した。米国で承認されたものの、日本では未承認であった医薬品の傾向をロジスティック回帰分析で検討した。
主な結果は以下のとおり。
・2005~22年に米国または日本で711品目の医薬品が承認された。
・711品目のうち633品目は米国で承認されており、そのうち280品目(44.2%)は日本では承認されていなかった。
・日本で承認された431品目のうち78品目(18.1%)は米国で承認されていなかった。78品目のうち63品目(80.8%)は欧州医薬品庁(EMA)でも承認されていなかったため、これらの医薬品はローカル薬とみなして回帰分析から除外した。
・近年(2014年以降)に米国で承認された医薬品ほど日本では未承認である傾向が強かった。
・抗腫瘍薬・免疫調節薬(β係数:−0.93)および血液・造血器系薬(−0.90)は日本でも承認される傾向が強かった一方で、消化器・代謝系薬(−0.43)、神経系薬(−0.51)、全身用感染症薬(−0.52)はやや承認されにくい傾向がみられた。
・生物学的製剤、日本の製薬会社またはグローバルな大手製薬会社が開発した医薬品は日本でも承認される傾向が強かった。
・FDAによる迅速審査指定の有無は日本での承認に影響しなかった。
研究グループは「本研究の結果は、小規模企業や外国企業への承認経路を最適化することで承認格差を是正し、日本における医薬品アクセスが向上する可能性があることを示唆している」とまとめた。
(ケアネット 森)