肺炎へのセフトリアキソン、1g/日vs.2g/日~日本の約47万例の解析

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/20

 

 肺炎患者へのセフトリアキソン(CTRX)の投与量は1~2g/日とされているが、最適な用量は明らかになっていない。市中肺炎患者では1g/日と2g/日の有効性は同等とする報告もあるが、ICU入室を要する重症例では2g/日が有効であることを示唆する報告もある。そこで、谷口 順平氏(東京大学大学院医学系研究科)らの研究グループは、DPCデータを用いた解析により、肺炎で入院した患者におけるCTRX 1g/日と2g/日の有効性および安全性を比較した。その結果、30日院内死亡率について、全体集団ではCTRX 1g/日群と2g/日群の間に有意差はみられなかったが、機械的換気を要する重症例では2g/日群のほうが有意に低かった。本研究結果は、Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌オンライン版2025年6月10日号に掲載された。

 研究グループは2010〜22年のDPCデータを用いて、入院後2日以内にCTRXによる治療を開始した肺炎患者47万1,694例を抽出した(1g/日群17万3,079例、2g/日群29万8,615例)。主要評価項目は30日院内死亡率、副次評価項目は有害事象(胆道合併症、Clostridioides difficile感染[CDI]、アレルギー反応およびこれらの複合)とした。有効性および安全性の解析について、両群間の背景因子を調整するため、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いて解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・傾向スコアマッチング後の30日院内死亡率は1g/日群4.6%、2g/日群4.5%であり、両群間に有意差はみられなかった(リスク差[RD]:−0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.3~0.1)。
・副次評価項目の有害事象(胆道合併症、CDI、アレルギー反応の複合)の発現割合は1g/日群1.8%、2g/日群1.9%であり、わずかながら2g/日群が有意に高かった(RD:0.1%、95%CI:0.0~0.2、p=0.007)。CDIの発現割合もわずかながら2g/日群が有意に高かった(1.1%vs.1.2%、RD:0.1%、95%CI:0.0~0.2、p=0.014)。
・機械的換気を要する重症例を対象としたサブグループ解析において、30日院内死亡率は1g/日群20.4%、2g/日群17.2%であり、2g/日群が有意に低かった(RD:-3.2%、95%CI:-5.6~-0.9、p=0.006)。
・寝たきりの患者を対象としたサブグループ解析において、CDIの発現割合は1g/日群2.2%、2g/日群2.7%であり、2g/日群が有意に高かった(RD:0.4%、95%CI:0.2~0.7、p=0.006)。

 本研究結果について、著者らは「通常の肺炎治療では1g/日を超えるCTRXは不要な可能性があるが、機械的換気を要する重症例では2g/日を選択肢として検討すべきである」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)