糖尿病患者の認知症リスク低減、GLP-1薬とSGLT2阻害薬に違いは?

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/10

 

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)およびSGLT2阻害薬と2型糖尿病患者のアルツハイマー病およびアルツハイマー病関連認知症(ADRD)のリスクを評価した結果、両剤はともに他の血糖降下薬と比較してADRDリスクの低下と関連しており、GLP-1薬とSGLT2阻害薬の間には有意差は認められなかったことを、米国・University of Florida College of PharmacyのHuilin Tang氏らが明らかにした。JAMA Neurology誌2025年4月7日号掲載の報告。

 GLP-1薬およびSGLT2阻害薬とADRDリスクとの関連性はまだ確認されていない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1薬およびSGLT2阻害薬に関連するADRDリスクを評価するために、2014年1月~2023年6月のOneFlorida+ Clinical Research Consortiumの電子健康記録データを使用して、無作為化比較試験を模倣するターゲットトライアルエミュレーションによる検証を実施した。対象は50歳以上の2型糖尿病患者で、ADRDの診断歴または認知症治療歴がない者とした。ADRDは臨床診断コードを用いて特定した。

 2型糖尿病患者39万6,963例のうち、(1)GLP-1薬と他の血糖降下薬の比較コホートが3万3,858例(平均年齢:65歳、女性:53.1%)、(2)SGLT2阻害薬と他の血糖降下薬の比較コホートが3万4,185例(65.8歳、49.3%)、(3)GLP-1薬とSGLT2阻害薬の比較コホートが2万4,117例(63.8歳、51.7%)であった。潜在的な交絡因子を調整するため逆確率重み付け(IPTW)を用いたCox比例ハザード回帰モデルで、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

(1)GLP-1薬開始群のADRD発症率は、他の血糖降下薬開始群よりも低かった。
・発症率差(RD):1,000人年当たり-2.26、95%CI:-2.88~-1.64
・HR:0.67、95%CI:0.47~0.96
(2)SGLT2阻害薬開始群のADRD発症率は、他の血糖降下薬開始群よりも低かった。
・RD:1,000人年当たり-3.05、95%CI:-3.68~-2.42
・HR:0.57、95%CI:0.43~0.7
(3)GLP-1薬開始群とSGLT2阻害薬開始群の間にはADRD発症率の差は認められなかった。
・RD:1,000人年当たり-0.09、95%CI:-0.80~0.63
・HR:0.97、95%CI:0.72~1.32

 これらの結果より、研究グループは「2型糖尿病患者では、GLP-1薬とSGLT2阻害薬はどちらも他の血糖降下薬と比較してADRDのリスク低下と統計学的に有意に関連しており、両薬剤間に差は認められなかった。本研究の結果は、GLP-1薬とSGLT2阻害薬による神経保護を支持するものであり、2型糖尿病患者のADRD予防戦略における役割を示唆するものである」とまとめた。

(ケアネット 森)