Helicobacter pylori(H. pylori)除菌後においても0.5~1.2%の人に原発性胃がんが発生する可能性がある。このような高リスクの集団を識別する新たなバイオマーカーとして、非悪性組織におけるepimutationの蓄積レベル(epimutation負荷)ががんリスクと関連していることが複数の横断的研究で報告されているが、前向き研究でリスク予測におけるDNAメチル化マーカーの有用性は確認されていない。今回、星薬科大学の山田 晴美氏らの研究により、epimutation負荷のDNAメチル化マーカーであるRIMS1がH. pylori除菌後の健康人における原発性胃がんリスクを正確に予測可能であることが示された。Gut誌オンライン版2025年4月15日号に掲載。
本研究では、H. pylori除菌後の健康人でopen typeの萎縮性胃炎を有する人を前向きに募集し、胃前庭部と胃体部の生検検体でマーカー遺伝子であるRIMS1のDNAメチル化レベルを測定した。主要評価項目は胃がん発生率で、主要な目的はメチル化レベルの最高四分位と最低四分位におけるハザード比の比較であった。副次的な目的は、2年に1回の内視鏡検診より年1回の検診から利益を得られる可能性のある人を特定するためにRIMS1メチル化レベルのカットオフ値の決定であった。メチル化レベルのカットオフ値は、NNS(number needed to screen)に対応する推定1年胃がん発生確率とした。
主な結果は以下のとおり。
・1,624人の参加者が1回以上の内視鏡検査を受け、追跡期間中央値4.05年で27人に原発性胃がんが発生した。
・RIMS1メチル化レベルの最高四分位群では10万人年当たり972.8人と、最低四分位群の127.1人年よりも発生率が高かった。
・Cox回帰分析の結果、単変量ハザード比(HR)は7.7(95%信頼区間[CI]:1.8~33.7)、年齢・性別調整HRは5.7(同:1.3~25.5)であった。
・超高リスク集団を特定するためのメチル化レベルのカットオフ値は、NNS1,000の場合は25.7%(年齢・性別調整HR:3.6、95%CI:1.7~7.7、p<0.001)であった。
本結果から、著者らは「DNAメチル化マーカーは、H. pylori除菌後に胃がん検診を免除できる人を特定できる可能性がある」とし、一方で「DNAメチル化マーカーによって特定された超高リスク集団は、現行のガイドラインのように2年に1回ではなく、毎年胃がん検診を受ける必要がある」としている。
(ケアネット 金沢 浩子)