転倒リスクの高い2型糖尿病治療薬は?/筑波大

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/21

 

 骨格筋量の低下によって転倒リスクが増大することが知られており、一部の2型糖尿病治療薬は体重減少作用が強く、骨格筋量の減少を引き起こすことで転倒リスクを増大させる可能性が示唆されている。この課題について筑波大学システム情報系知能機能工学域の鈴木 康裕氏らの研究グループは、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に転倒と糖尿病治療薬との関連を調査した。その結果、SGLT2阻害薬は転倒の危険因子であることが明らかになった。この結果はScientific Reports誌2025年3月17日号に掲載された。

SGLT2阻害薬処方時は転倒リスクも考慮

 研究グループは、いくつかの糖尿病治療薬、とくにSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が、筋肉および除脂肪体重の減少を引き起こすことと、転倒の関連を評価した。方法は、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に、毎年1回転倒調査を最長5年間実施。転倒の危険因子は離散時間生存分析モデルを用いて同定した。

 主な結果は以下のとおり。

・調査では、471例の参加者を中央値2年間にわたって観察した。
・参加者の年齢中央値は64歳で、転倒発生率は100人年当たり17.1件だった。
・独立した転倒の危険因子は、「転倒歴」、「SGLT2阻害薬の使用」、「年齢」であった。
・SGLT2阻害薬のみ使用のオッズ比(OR)は1.80(95%信頼区間[CI]:1.10~2.92)、GLP-1受容体作動薬のみ使用のORは1.61(95%CI:0.88~2.84)、両方使用のORは2.89(95%CI:1.27~6.56)だった。
・SGLT2阻害薬の使用は、転倒の独立危険因子だったが、GLP-1受容体作動薬の効果は統計学的に有意ではなかった。
・SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用は、転倒のリスクを有意に増加させた。

 この結果から研究グループでは「2型糖尿病患者にこれらの薬剤を処方する際には、転倒のリスクを考慮することが重要」と示唆している。

(ケアネット 稲川 進)