日本語でわかる最新の海外医学論文|page:650

ピロリ除菌療法、エソメプラゾール vs.ラベプラゾール

 CYP2C19代謝活性は、PPIを含むHelicobacter pylori除菌療法の有効性に影響する。弘前大学の下山 克氏らは、異なるCYP2C19遺伝子型を有する日本人において、CYP2C19による代謝を受けないラベプラゾールあるいはエソメプラゾールを用いた3剤併用1次除菌の有効性を比較する無作為化試験を実施した。その結果、除菌率は共に80%未満であったが、各CYP2C19遺伝子型群において同等に有効であることが示された。Internal Medicine誌オンライン版に2017年7月1日に掲載。

インフルエンザワクチン、遺伝子組換え vs.不活化/NEJM

 従来の不活化インフルエンザワクチンと比べて、遺伝子組み換えインフルエンザワクチンが優れた防御能を示したことが、米国・Protein Sciences社のLisa M. Dunkle氏らが行った第III-IV相の多施設共同無作為化二重盲検試験の結果、報告された。検討されたのは遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチン(RIV4)で、試験は2014~15年のインフルエンザシーズンに、50歳以上の成人を対象に実施された。標準用量の鶏卵培養4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4)接種群よりも、確認されたインフルエンザ様疾患の確率が30%低かったという。なお、同時期のインフルエンザはA/H3N2型が主流で、ワクチン株の抗原性との不一致により多くの認可ワクチンについて効果の低下がみられたシーズンであった。NEJM誌2017年6月22日号掲載の報告。

認知症の家族による終末期ケア、初期段階でやっておくべきこと

 認知症は、機能低下や認知機能低下を特徴とする進行性の神経変性疾患である。英国において、認知症者への終末期ケアの質は良くないといわれている。認知症者へのケアに関して、たとえば合併症のマネジメントのために、終末期においていくつかの困難な決断が生じることがある。英国・ロンドン大学のKethakie Lamahewa氏らは、認知症者の終末期における医師や家族の介護者による意思決定の困難さについて検討を行った。Health expectations誌オンライン版2017年6月22日号の報告。

レーベル遺伝性視神経症、遺伝子治療が有望

 レーベル遺伝性視神経症(LHON)患者を対象とした低~中用量のAAV2(Y444,500,730F)-P1ND4v2単回硝子体内注射の安全性および有効性を検討する非盲検臨床試験が行われ、LHONに対する遺伝子治療は安全で外側網膜神経線維層に悪影響を及ぼさないことが認められた。検討を行った米国・マイアミ大学ミラー医学校のJohn Guy氏らは、「本剤の高用量での臨床試験への道が開かれた」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2017年6月21日号掲載の報告。

PD-L1高発現NSCLCの初回治療はペムブロリズマブ?KEYNOTE-024のPFS2データ/ASCO2017

 PD-L1高発現(TPS50%以上)SageIV非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ペムブロリズマブ単剤と化学療法を比較したKEYNOTE-024試験。初回解析で、無増悪生存期間(PFS)のハザードレシオ(HR)は0.50(p<0.001)、全生存期間(OS)のHRは0.60(p=0.005)と、ペムブロリズマブの優越性が示された。ASCO2017では、その後の追跡によるPFS2と、アップデートされたOSについて、米国The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer CenterのJulie Brahmer氏が発表した。

BRCA1変異女性の乳がんリスク、80歳で72%/JAMA

 BRCA1またはBRCA2遺伝子変異の保因状況は、乳がん、卵巣がん、対側乳がんのリスクを予測し、リスク評価では家族歴および変異位置が重要となる可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のKaroline B. Kuchenbaecker氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年6月20日号に掲載された。これまでに行われた後ろ向き研究では、BRCA1変異保因女性が70歳までに乳がんを発症するリスクは40~87%、BRCA2変異保因女性は27~84%であり、卵巣がんのリスクはそれぞれ16~68%、11~30%と報告されている。このような大きなばらつきが生じる原因として、サンプリング法、対象集団や遺伝子変異の特性、分析法の違いなどが挙げられ、後ろ向き研究におけるバイアスの可能性が指摘されており、これらの問題を回避する前向き研究の実施が望まれてきた。

HER2陰性乳がん術前化学療法後のカペシタビン術後補助療法は生存率を改善する-CREATE-X(JBCRG-04)(解説:矢形 寛 氏)-698

これは、サン・アントニオ乳がんシンポジウム2015で報告された日韓合同第III相臨床試験の結果が論文化されたものである。本学会時には、あまり大きな話題として取り上げられなかったように思われる。それは過去のカペシタビン追加の臨床試験でその有効性が示されてこなかったことと、アジア人のみの報告だったからであろうか。今回正式に論文化されたことで、より注目を浴びてくる可能性はある。 そもそも過去の報告とは根本的に異なる試験であり、適格基準が異なる、トリプルネガティブ乳がんの割合が30%と高い、タキサンなどとの同時併用ではなく逐次投与である、カペシタビンの標準投与量が使われ、6から8サイクルと十分量の投与が行われている、といったことが挙げられる。この結果は今までの標準治療を変えるものである。

高力価スタチンで糖尿病発症リスク2.6倍

 脂質降下薬が糖尿病発症に関連するかどうか調べるために、日本大学薬学部の大場 延浩氏らが、脂質異常症の日本人労働者約7万例を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、糖尿病の臨床的危険因子の調整後も、スタチン使用により糖尿病発症リスクが1.9~2.6倍に増加したことが示された。BMJ open誌2017年6月30日号に掲載。

統合失調症患者のワーキングメモリ改善のために

 口頭による指示に従う能力は、日々の機能において重要であるが、統合失調症患者ではほとんど研究されていない。最近の研究によると、行動ベースのプロセスは、主にワーキングメモリに依存する指示に従う能力を促進する可能性が示唆されている。中国・Castle Peak HospitalのSimon S. Y. Lui氏らは、統合失調症患者が指示に従うことで行動ベースの利点を得るかを検証した。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2017年5月22日号の報告。

パッチ式インフルエンザワクチンは有用か/Lancet

 溶解型マイクロニードルパッチを活用したインフルエンザワクチン接種は、忍容性に優れ確固たる免疫獲得をもたらすことが報告された。米国・エモリー大学のNadine G. Rouphael氏らによる検討で、Lancet誌オンライン版2017年6月27日号で発表された。報告は、従来の注射器に代わる予防接種法の検討として初となる、第I相の無作為化プラセボ対照試験「TIV-MNP 2015」の結果である。

うつ病に対するtDCS療法 vs.薬物療法/NEJM

 うつ病治療として、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct-current stimulation:tDCS)療法の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)に対する非劣性は示されず、有害事象はより多かったことが、ブラジル・サンパウロ大学のAndre R. Brunoni氏らによる単施設の二重盲検無作為化非劣性試験の結果、報告された。大うつ病障害治療としての電気刺激療法は、2009年に経頭蓋磁気刺激(TMS)が米国FDAに承認され、さまざまな試験で異なる結果が報告されている。TMSは、けいれんリスクは小さいがコスト高であり、より安価で安全な手法としてtDCSが開発されたが、これまでに同法と薬物療法を直接比較する試験は行われていなかった。NEJM誌2017年6月29日号掲載の報告。

屈曲病変の通過性を向上させた新型DES発売/日本メドトロニック

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:トニー セメド)は2017年7月3日、薬剤溶出性ステントResolute Onyx(リゾリュートオニキス)コロナリーステントシステム(医療機器承認番号:22900BZX00186000)が7月1日付で本邦の保険適用となった旨を発表。製品販売開始は、7月10日を予定。Resolute Onyxは既存製品のResolute Integrityと比較して優れた通過性向上が期待できるという。

お酒はうつ病リスク増加にも関連

 うつ病の発症率に対するリスクファクターの変化による影響を調査した研究はほとんどない。カナダ・マギル大学のXiangfei Meng氏らは、大規模縦断的集団ベース研究におけるうつ病の心理社会的リスクファクターおよびうつ病発症に対するリスクファクター改善による影響を定量化するため検討を行った。BMJ open誌2017年6月10日号の報告。

中国人における糖尿病、前症含めると約5割に/JAMA

 先行研究で中国の糖尿病有病率の上昇が示されていたが、同国は今や世界最大の糖尿病蔓延国であることが明らかになった。2013年時点で、中国本土の成人における糖尿病有病率は10.9%、糖尿病前症有病率は35.7%と推定されたという。中国疾病予防管理センターのLumin Wang氏らが、3年ごとに実施している慢性疾患とリスク因子サーベイランス調査(China Chronic Disease and Risk Factors Surveillance study)の2013年の結果を報告したもので、JAMA誌2017年6月27日号で発表した。なお、同調査では、糖尿病および糖尿病前症の推定有病率は、中国の民族によって異なることも明らかにされている。これまで、中国の少数民族の糖尿病有病率を調べた疫学研究はほとんどなかった。

皮下膿瘍、切開排膿に抗菌薬併用が有効/NEJM

 5cm以下の単純性皮下膿瘍について、切開排膿単独と比較し、切開排膿にクリンダマイシンまたはトリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)を併用することで、短期アウトカムは改善することが示された。米国・シカゴ大学病院のRobert S. Daum氏らが、成人および小児外来患者を対象とした、多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。ただし著者は、「この治療のベネフィットとこれら抗菌薬の既知の副作用プロファイルを、比較検討する必要がある」とまとめている。合併症のない皮下膿瘍はよくみられるが、市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の時代における適切な治療は明らかになっていない。NEJM誌2017年6月29日号掲載の報告。

前治療歴のあるC型慢性肝炎に対するsofosbuvir、velpatasvir、およびvoxilaprevir療法の検討(解説:中村 郁夫 氏)-697

本論文は、direct-acting antiviral agents(DAA)を含む治療を受けたことのあるC型慢性肝炎の患者を対象として行った2種類の第III相試験(POLARIS-1、POLARIS-4)の結果の報告である。POLARIS-4では、NS5A阻害薬を含まない治療を受けたことのある、遺伝子型1型、2型、3型のHCV患者を対象とし、sofosbuvir(核酸型ポリメラーゼ阻害薬)・velpatasvir(NS5A阻害薬)・voxilaprevir(プロテアーゼ阻害薬)の3剤併用群とsofosbuvir・velpatasvirの2剤併用群に、無作為に1:1に割り付けたうえで、遺伝子型4型の19例を3剤併用群に加えた。その結果、sustained virologic response(SVR)を達成した率は3剤併用群では98%、2剤併用群では90%であった。

DEVOTE 試験の臨床的意義

 2型糖尿病治療、とくにインスリン治療において低血糖管理は重要な問題だ。重症低血糖は心血管イベントリスク増加に関与し、患者さんの心理的負担も大きい。臨床でも、低血糖リスクの低いインスリン製剤を選択することが重要となる。これに関して今後の薬剤選択に影響を与えるデータが先日、ADAで発表された。心血管系リスクの高い2型糖尿病患者を対象にしたDEVOTE試験である。

小児ADHDの合併症有病率と治療成績

 ADHDの合併症は広く研究されているが、いくつもの問題点が解決していない。イタリア・IRCCS-Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario NegriのLaura Reale氏らは、新規に診断された未治療の小児の臨床サンプル(ADHDの有無にかかわらず)における併存精神疾患を調査し、合併症のタイプに基づいて治療有効性を比較するため、多施設共同研究を行った。European child & adolescent psychiatry誌オンライン版2017年5月19日号の報告。

腫瘍溶解ウイルス、ペムブロリズマブとの併用で医師主導治験へ

 オンコリスバイオファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:浦田泰生)は2017年06月27日、国立がん研究センター東病院より腫瘍溶解ウイルス テロメライシン(OBP-301)と他の治療法との併用による効果検討に関する医師主導治験実施申請が、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出された旨を発表した。