日本語でわかる最新の海外医学論文|page:650

日本初、ワルファリンでの出血傾向を迅速に抑える保険適用製剤

 ワルファリン服用者の急性重篤出血時や、重大な出血が予想される手術・処置の際に、出血傾向を迅速に抑制する日本初の保険適用製剤として、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体(商品名:ケイセントラ静注用)が9月19日に発売された。発売に先立ち、15日に開催されたCSLベーリング株式会社による記者発表において、矢坂 正弘氏(国立病院機構九州医療センター脳血管センター 部長)が、本剤の開発経緯や臨床成績、位置付けについて講演した。その内容をお届けする。

durvalumabとオシメルチニブは新たな標準治療となりうるか:PACIFIC/FLAURA試験

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)では、抗PD-L1抗体durvalumabの第III相PACIFIC試験ならびに第3世代EGFR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相FLAURA試験という、肺がん領域の2つの大きな臨床試験結果が発表された。発表後、PACIFIC試験の主任研究者であるスペイン・Hospital Universitario de OctubreのLuis Paz-Ares氏、FLAURA試験の主任研究者である米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのSuresh Ramalingam氏がプレスに対して試験結果について解説した。本稿では、開発企業であるアストラゼネカ株式会社メディカル本部オンコロジー領域部部門長の橋上 聖氏および同社Global Medicines Development、Head of Oncology、Senior Vice PresidentのKlaus Edvadsen氏へのインタビュー内容を交え、今回の結果からみえてきた点や今後の展望について紹介する。

過食症の抑うつ症状、有効な介入は

 抑うつ症状は、神経性過食症(BN)の重要なリスクファクターであり、過食や排出行動に影響を及ぼす。精神療法は、短期および長期間のBN症状軽減に有効であるが、BNの抑うつ症状の軽減にも有効であるかは不明である。オーストラリア・カトリック大学のJake Linardon氏らは、短期および長期間のBN患者の抑うつ症状に対する精神療法の有効性を調査した。The International journal of eating disorders誌オンライン版2017年8月14日号の報告。

チオトロピウムの肺機能低下抑制、軽~中等症でも/NEJM

 軽症~中等症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対するチオトロピウム(商品名:スピリーバ)は肺機能の低下を抑制することが、中国・国立呼吸器疾患センターのYumin Zhou氏らが841例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。軽症~中等症COPD患者は、症状がみられることが少なく薬物療法が行われることはほとんどない。研究グループは、そうした患者へのチオトロピウム投与は、肺機能を改善し、肺機能低下を抑制するのではないかと仮説を立て検証試験を行った。NEJM誌2017年9月7日号掲載の報告。

HIV-1感染患者への初回治療、bictegravirレジメンが有用/Lancet

 未治療HIV-1感染患者に対する、新規の強力なインテグラーゼ阻害薬(INSTI)bictegravirを含むエムトリシタビンとテノホビル・アラフェナミドとの配合薬(B/F/TAF)の、48週後のウイルス学的著効率は92%で、ドルテグラビルとアバカビルおよびラミブジンの配合薬(DTG/ABC/3TC、商品名:トリーメク配合錠)に対する非劣性、および安全性、消化管系の忍容性が良好であることが示された。米国・Southwest CARE CenterのJoel Gallant氏らが、631例を対象に行った実薬対照無作為化非劣性試験の結果、明らかにし、Lancet誌オンライン版2017年8月31日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「B/F/TAF投与は、事前のHLA-B*5701検査が不要で、HIVとB型肝炎の複合感染患者に対するガイドラインの推奨治療である。臨床における迅速または初回治療に向いたレジメンと思われる」とまとめている。

利尿ペプチドNT-proBNPガイドによる心不全診療は通常診療に勝るか?(解説:今井 靖 氏)-732

本邦において心不全患者が増加の途にあるが、その診療は病歴、身体所見および胸部X線写真などの臨床所見を基に行うが、最近ではBNPまたはNT-proBNPといった利尿ペプチドを診療ガイドに使用することが多い。それら利尿ペプチドが心不全診断や予後予測に有用であることには多くのエビデンスがあるが、しかしながら、そのようなバイオマーカーガイドによる心不全診療の有効性については小規模集団での検討はあるものの結果は一定せず、それを検証する意義は大きいと考えられる。

PCI後ACSの抗血小板薬、de-escalationしても非劣性/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた急性冠症候群(ACS)患者において、抗血小板治療を血小板機能検査(PFT)のガイド下でプラスグレル(商品名:エフィエント)からクロピドグレルへと早期に変更(de-escalation)しても、1年時点のネット臨床的ベネフィットは、プラスグレルを継続する標準治療に対して非劣性であることが示された。ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのDirk Sibbing氏らが、欧州の33施設で行った無作為化非盲検試験「TROPICAL-ACS試験」の結果、報告した。現行のガイドラインでは、PCIを受けたACS患者に対しては12ヵ月間、プラスグレルまたはチカグレロル(商品名:ブリリンタ)による抗血小板療法が推奨されている。これらの抗血小板薬はクロピドグレルよりも作用が強力で、速やかに最大の抗虚血ベネフィットをもたらすが、長期にわたる治療で出血イベントを過剰に引き起こすことが指摘されていた。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。

エボロクマブ、LDL-C下げるほど心血管リスク減/Lancet

 安定期アテローム動脈硬化性心血管疾患患者へのPCSK9阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)治療では、LDLコレステロール(LDL-C)値の低下が大きいほど主要心血管アウトカムが改善し、超低LDL-C値でも安全性に懸念はないことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のRobert P. Giugliano氏らが行ったFOURIER試験の2次解析で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年8月25日号に掲載された。LDL-Cはアテローム動脈硬化性心血管疾患のリスク因子として確立されているが、どこまで低くすべきか、どこまで安全に低くできるかの議論が続いている。

眼瞼下垂、睡眠時無呼吸との関連は?

 眼瞼弛緩症候群と睡眠時無呼吸症候群(OSA)の関連は数多く報告されているが、眼瞼弛緩症候群の診断基準は主観的で曖昧である。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のTimothy P. Fox氏らが、睡眠クリニックで終夜睡眠ポリグラフ検査を行った患者201例を対象に調査した結果、眼瞼弛緩スコアとOSAの存在または重症度の関連は認められなかったと報告した。著者は、「サブグループ解析の結果から、先行研究は交絡因子や眼瞼弛緩の確認手技において限界があったことが示唆される」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年9月7日号掲載の報告。

がん診断後の禁煙、生存率への効果は?

 がん患者が禁煙することで死亡率が低下するかはわかっていない。今回、英国・オックスフォード大学のConstantinos Koshiaris氏らが、喫煙関連がんの患者において禁煙と予後の関連を検討した結果、肺がんと上部気道消化管がんでは禁煙した患者は喫煙し続けた患者より死亡リスクが低いことが示された。British journal of cancer誌2017年9月12日号に掲載。

抗うつ薬ランキング、脳卒中後うつ病へ最良の選択肢は

 中国医薬大学のYefei Sun氏らは、脳卒中後うつ病(PSD)に対する抗うつ薬治療の有効性および忍容性(全原因による中止リスク)について、各抗うつ薬の順位比較を行った。BMJ open誌2017年8月3日号の報告。  本検討は、無作為化比較試験のMultiple-treatmentsメタ解析で実施された。対象は、脳卒中後のうつ病患者。PSDの急性期治療において、10種類の抗うつ薬およびプラセボ投与を行った。主要アウトカムは、全うつ病スコアの平均変化として定義される全体的な有効性とした。副次的アウトカムは、全原因による中止リスクとして定義された忍容性とした。これらの推定値は、標準化平均差またはOR(95%CI)とした。

新規抗体薬、コントロール不良喘息の増悪抑制/NEJM

 長時間作用性β刺激薬(LABA)と中~高用量の吸入ステロイドによる治療歴のある喘息患者の治療において、tezepelumabはベースラインの血中好酸球数とは無関係に、臨床的に重要な喘息の増悪を抑制することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJonathan Corren氏らが行ったPATHWAY試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年9月7日号に掲載された。胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、炎症性の刺激因子に反応して産生される上皮細胞由来のサイトカインで、2型免疫の調節において中心的な役割を担う。喘息患者は健常者に比べ、気道のTSLP発現が高度で、TSLP値は2型ヘルパーT細胞(Th2)サイトカインやケモカインの発現、および喘息の疾患重症度と相関を示す。tezepelumab(AMG 157/MEDI9929)は、TSLPに特異的に結合するヒトIgG2モノクローナル抗体で、proof-of-concept試験では軽症アトピー型喘息患者の早期型および晩期型喘息反応を防止し、吸入アレルゲン負荷後の2型炎症反応のバイオマーカーを抑制したという。

AF患者の経口抗凝固療法、教育的介入で増加/Lancet

 心房細動患者への経口抗凝固療法に関して、多角・多面的な教育介入により同療法を受ける患者の割合が有意に増加したことが、ルーマニア・キャロルダビラ医科大学のDragos Vinereanu氏らが5ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、ルーマニア)を対象に行った国際クラスター無作為化試験「IMPACT-AF試験」の結果、示された。心房細動患者は脳卒中を発症するリスクが高いが、経口抗凝固療法で予防は可能であり、現行ガイドラインでも推奨されている。しかし、適応患者への同療法が十分に行われていない状況が報告されており、とくに中所得国において過少で、任意抽出集団を対象に調べた投与患者の割合は、東ヨーロッパ・南米・インドでは40%未満、中国では11%にとどまるという。研究グループはこれらの国々における教育介入のインパクトを評価した。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。

統合失調症の再発率比較、併用療法 vs. 単独療法 vs. LAI

 統合失調症に対する抗精神病薬の併用療法(CA)は、有効性に関するエビデンスが限られているにもかかわらず、行われている。米国・フロリダ国際大学のAdriana Foster氏らは、CA療法から単独療法に切り替えた際の効果を調査するため、PROACTIVE(Preventing Relapse in Schizophrenia: Oral Antipsychotics Compared with Injectables: Evaluating Efficacy)研究データの探索的分析を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌2017年10月号の報告。

検証 NSCLCにおけるニボルマブの適正投与期間(CheckMate-153)/ESMO2017

 PD-1/PD-L1阻害薬の適正な治療期間は明らかになっておらず、今後の重要な問題である。スペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)において、米国Sarah Cannon Research Institute/Tennessee OncologyのDavid Spigel氏が、PD-1/PD-L1阻害薬の治療期間を評価する初めての無作為化試験であるCheckMate-153試験の結果を発表した。

微量リチウム、認知症予防の可能性

 治療用量のリチウムが学習や記憶を改善し、認知症の発症リスクを低下させる可能性があることが、動物やヒトを対象とした研究結果より示唆されている。さらなる予備的研究では、ミクロレベルを含む治療用量以下のリチウムでも、ヒトの認知機能に影響を及ぼす可能性があることが示唆されている。デンマーク・コペンハーゲン大学のLars Vedel Kessing氏らは、飲料水中のマイクロレベルの長期リチウム曝露が、一般集団の認知症発症率に変動を及ぼすかを調査した。JAMA psychiatry誌オンライン版2017年8月23日号の報告。

低酸素血症でない心筋梗塞疑い例に酸素療法は無効/NEJM

 低酸素血症のない急性心筋梗塞が疑われる患者に酸素療法を行っても、1年全死因死亡率は低下せず効果は確認されなかった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のRobin Hofmann氏らが、スウェーデンの全国レジストリを用いた多施設非盲検無作為化比較試験「DETO2X-AMI試験」の結果、明らかにした。これまで1世紀以上にわたり、酸素療法は急性心筋梗塞疑い患者の治療に用いられ、臨床ガイドラインでも推奨されている。酸素療法は梗塞サイズを縮小するとされていたからだが、ST上昇型心筋梗塞患者を対象にしたAVOID試験で、酸素療法群のほうが梗塞サイズが大きいことが報告され、さらに最新のコクランレビューで心筋梗塞患者へのルーチンの酸素療法は支持するエビデンスはないことが示され、低酸素血症のない急性心筋梗塞疑い患者に対する酸素療法の臨床的効果はきわめて不透明であった。NEJM誌オンライン版2017年8月28日号掲載の報告。

複合血管スクリーニングで死亡リスク低下/Lancet

 腹部大動脈瘤(AAA)、末梢動脈疾患および高血圧に関する複合血管スクリーニングは、5年全死因死亡率を有意に低下させることが、デンマーク・オーデンセ大学病院のJes S. Lindholt氏らによる、複合血管スクリーニングの有効性とその後の介入を検証した無作為化比較試験「VIVA試験(Vibrog Vascular trial)」で明らかになった。これまで地域住民を対象とした集団スクリーニングに関する文献で、このような死亡リスクの低下が確認されたことはない。そのため著者は「主に薬物療法の開始と関連している可能性がある」と指摘したうえで、「健康政策立案者は、現在スクリーニングを実施していない、あるいはAAAのみを対象としたスクリーニングを実施しているのなら、複合血管スクリーニングの実施を考慮すべきである」とまとめている。AAAは、集団スクリーニングの対象となる唯一の心血管疾患であるが、AAAのみのスクリーニングは広範なリスク因子の管理には適していないとされている。Lancet誌オンライン版2017年8月28日号掲載の報告。

とくに女性は要注意!コーヒーの飲み過ぎでうつ病に

 コーヒーやダイエット飲料の消費と非栄養甘味料の使用は、世界中に蔓延している。カナダ・ダルハウジー大学のZhijie M. Yu氏らは、カナダ大西洋州におけるコーヒーの消費や非栄養甘味料の使用とうつ病との関連を調査するため、横断面分析を行った。Scientific reports誌2017年7月24日号の報告。