日本語でわかる最新の海外医学論文|page:591

日本未承認の抗がん剤は65剤、月1千万円超の薬剤も:国立がん研究センター

 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉)先進医療・費用対効果評価室(室長:藤原 康弘)は2018年4月23日、2015年4月から公開している「国内で薬事法上未承認・適応外となる医薬品・適応のリスト」の最新集計結果(2018年4月4日現在)を公開した。

思い込みを正すことは難しい:MRIとペースメーカーの場合(解説:香坂俊氏)-849

あるとき誰かが思った。「MRIは強力な磁場を発生させるから、電子機器であるペースメーカーやICDには当然よくないだろう」。MRIでは磁場を発生させて水素分子の「回転」を計測する。しかし、体内に金属性のペースメーカーがあると、強力な磁場を周囲で発生させて先端のリード部分が熱を持ってしまう。すると「心筋への電気伝導に問題がおきるのではないか?」という危惧は当然出ることになる。また、ペースメーカーやICDのジェネレーターは、実は磁石を上に置くとスイッチオフ(※)できるようになっているので、「ジェネレーター部分のプログラムに異常が発生するのではないか?」という心配もある。

身体能力低下の悪循環を断つ診療

 2018年4月19~21日の3日間、第104回 日本消化器病学会総会(会長 小池 和彦氏[東京大学医学部消化器内科 教授])が、「深化する多様性~消化器病学の未来を描く~」をテーマに、都内の京王プラザホテルにおいて開催された。期間中、消化器領域の最新の知見が、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップなどで講演された。

思春期の少年少女における自殺念慮の予測

 近年、思春期や若者の自殺率が高まっており、これらの年齢層は、リスクの高い集団であると認識されている。スペイン・ロビラ・イ・ビルジリ大学のFabia Morales-Vives氏らは、自殺念慮が将来の自殺行動の可能性を示す最初の兆候であることを考慮し、思春期の自殺念慮を予測するうえで、精神的な成熟、人格、うつ病、生活満足度の相対的な重要性について検討を行った。The Spanish journal of psychology誌2018年4月10日号の報告。

COPDの3剤併用療法、2剤併用と比較/NEJM

 COPDに対する3剤併用療法(吸入ステロイド+LAMA+LABA)は、2剤併用療法(吸入ステロイド-LABA、またはLAMA-LABA)よりも有益なのか。米国・グラクソ・スミスクラインのDavid A. Lipson氏らによる第III相無作為化二重盲検並行群間試験「IMPACT試験」の結果、3剤併用療法(フルチカゾン+ウメクリジニウム+ビランテロール)は、2剤併用療法(フルチカゾン-ビランテロール、またはウメクリジニウム-ビランテロール)よりも、中等度~重度のCOPD増悪を有意に抑制したことが示された。また、COPDによる入院も低減したという。NEJM誌オンライン版2018年4月18日号掲載の報告。

ACS症例におけるDAPTの期間は6ヵ月と12ヵ月のいずれが妥当か?(解説:上田恭敬氏)-848

急性冠症候群症例(不安定狭心症、ST非上昇型急性心筋梗塞、ST上昇型急性心筋梗塞)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間を6ヵ月とする群と12ヵ月以上とする群に無作為に割り付ける、韓国における多施設無作為化比較試験であるSMART-DATE試験の結果が報告された。

術後せん妄を経験した大腿骨頚部骨折患者の認知症発症リスク

 術後せん妄が、股関節部の骨折患者の認知症発症率にどの程度影響を及ぼすかは不明であり、せん妄や認知症の検出方法については検証が必要とされている。スウェーデン・ウメオ大学のB. Olofsson氏らは、大腿骨頚部骨折手術後3年以内の認知症発症について、潜在的な予測因子として術後せん妄に焦点を当て、調査を行った。International journal of geriatric psychiatry誌2018年4月号の報告。

2型DMの死亡率、SGLT2 vs.GLP-1 vs.DPP-4/JAMA

 2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬使用、プラセボ、未治療と比べて、死亡率が有意に低いことが示された。また、DPP-4阻害薬の使用は、プラセボ、未治療よりも、死亡率は低下しないことも示された。英国・Imperial College Healthcare NHS Foundation TrustのSean L. Zheng氏らによるネットワークメタ解析の結果で、JAMA誌2018年4月17日号で発表された。2型糖尿病治療について、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬を比較した臨床的な有効性は明らかになっていなかった。

やはり、スタチンはACSの早期の投与が勧められる(解説:平山篤志氏)-846

非ST上昇型急性冠症候群に対して、アトルバスタチン80mgを投与することにより心血管イベントを有意に低減するMIRACL試験の結果は、スタチンの有用性を示すものとして大きなインパクトを与えた。その後の急性冠症候群(ACS)を対象としたスタチンの効果においても、ACSのより早期に投与することの有用性を示したものであった。ただ、PCI前のスタチン投与の有用性を示したARMYDA-ACSも1群85例とごく少数例の検討であり、ACSの有用性を示しても、どの時期に投与を開始すべきかについては、明らかでなかった。

高価な新薬が安い従来薬に敗れた日:高尿酸血症治療薬フェブキソスタットの屈辱(解説:桑島巌氏)-850

心血管リスクが高い例では痛風を合併することが多く、以前は尿酸生成抑制薬アロプリノール(商品名:ザイロリック、サロベール、アロシトールなど)が尿酸低下効果も確実でありよく処方され、現在ではすでに後発品も登場している。

COPD新ガイドライン、第1選択薬など5年ぶり見直し

 2018年4月、大阪で開催された第58回日本呼吸器学会において、同月20日に発刊された『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]』の改訂ポイントについて、久留米大学 呼吸器内科 川山 智隆氏が紹介した。前回の2013年から5年ぶりとなる今回の改訂では、日本人と欧米人の相違が指摘されている点を考慮し、近年の本邦での報告を重視している。

シラカバ花粉関連食品がアトピー性皮膚炎の湿疹増悪に影響か

 ドイツ・ハノーバー医科大学のAnja Wassmann-Otto氏らによる、二重盲検食物負荷試験(DBPCFC)の後ろ向き研究によって、アトピー性皮膚炎(AD)でカバノキ科(シラカバ)の花粉感作に関連する患者では、シラカバ花粉関連食品の摂取が湿疹増悪の誘因と考えるべきであることが示された。これまでの研究で、同様の所見は示されていたが、議論の余地が残されていた。なお今回の結果について著者は、「遅発性湿疹反応を予測する十分なマーカーがまだ不足しているので、ADを有する患者のシラカバ花粉関連食品に対する診断において、DBPCFCに代わる手法はない」と述べている。Allergy誌オンライン版2018年4月13日号掲載の報告。

ギラン・バレー症候群の治療に新たな光-千葉大の研究-

 ギラン・バレー症候群は、手足のしびれ・麻痺を急速に生じる末梢神経の病気で、先進国で最も多い急性四肢麻痺の原因だ。日本でも年間約1,400人が発症する。しかし、25年以上にわたり、有効性を示すギラン・バレー症候群の新たな治療法の報告はなく、難病とされてきた。  今回、千葉大学医学部附属病院 神経内科教授の桑原 聡氏らの研究グループは、ギラン・バレー症候群の患者への臨床試験を行い、薬剤「エクリズマブ」の有効性を世界で初めて示した(Lancet Neurology誌オンライン版2018年4月20日号に掲載)。ギラン・バレー症候群の治療については、1992年に免疫グロブリン療法の有効性がオランダから報告されて以来の進展で、日本から新規治療の可能性を示すことができたのは、今回が初。

日本の初年度レジデント、長時間労働とうつ病との関連

 日本のレジデントは、メンタルヘルスの問題を抱えている人が少なくない。これまでの研究では、長時間労働がうつ病などのストレス反応の原因である可能性が報告されている。また、労働時間が80時間/週以上と80時間/週未満のレジデントを比較した研究も報告されている。しかし、多くのレジデントは、臨床研修、トレーニング、自己学習などのため、実質的には100時間/週以上の超長時間労働に至っている。このような超長時間労働に関する報告は、これまでほとんど行われていなかった。筑波大学の小川 良子氏らは、初年度レジデントの労働環境とストレスの程度を評価し、とくに超長時間労働群における長時間労働とうつ病との関連を調査した。BMC medical education誌2018年3月27日号の報告。

アブレーションはお嫌いですか?(解説:香坂俊氏)-847

あまり知られていないことなのだが、心房細動(AF)のリズムコントロールが「長期的な予後を改善した」という研究結果は「存在しない」。以前であればこうしたことは問題でなく、まぁ理に叶っていて、かつ安全性が担保されていれば(つまり、makes senseでsafety guaranteedなら)そんな治療をやってみてもいいんじゃないかという、かなりおおらかな雰囲気の中医療は行われていた。

持続型気管支喘息におけるSMART療法について(解説:小林英夫 氏)-845

本論文のSMART(single maintenance and reliever therapy)とは、吸入ステロイド薬+長時間作用性β2刺激薬の合剤を、定期治療にも喘息発作時の一時的対応のいずれにも用いる治療戦略の意で、すでに知られた略語である。なお、SMARTをSymbicort maintenance and reliever therapyの略とする記載もある。これはシムビコートに含まれるホルモテロールが、LABAではあるが即効性と用量依存性気管支拡張作用を有することから提唱されたもので、本邦では1日最大12吸入が保険適応を得ている。さて、喘息発作時の対応として短時間作用性β2刺激薬(SABA)を追加吸入することが標準治療となって久しい。SMARTの長所は、喘息発作時に日常管理薬1剤で対応可能なため、SABAを追加する対応と比してより簡便という点が挙げられる。簡便ではあっても効果はどうなのかという点を本論文は検証しており、SMART療法群で喘息増悪リスクが低かったと報告している。

糖尿病網膜症の日本人患者への強化スタチン療法:EMPATHY試験

 冠動脈疾患の既往歴のない、糖尿病網膜症合併高コレステロール血症患者に対するスタチン単独によるLDL-C低下療法は、通常治療と強化治療とで心血管イベントまたは心血管関連死に有意差は認められなかった。慶應義塾大学の伊藤 裕氏らが、EMPATHY試験の結果を報告した。著者は、「今回の結果は当初の予想より両群におけるLDL-Cの差が少なかった(36ヵ月時で27.7mg/dL)ため」との見解を示したうえで、「高リスク患者に対するtreat-to-target治療におけるLDL-C<70mg/dL達成のベネフィットについては、さらなる研究が必要である」とまとめている。Diabetes Care誌オンライン版2018年4月6日号掲載の報告。