日本語でわかる最新の海外医学論文|page:302

小児の乳製品摂取量と片頭痛との関連

 片頭痛は、病因が明らかになっておらず、理解不十分な病態生理学的経路を伴う疾患である。乳製品の摂取量と小児の慢性的な症状および片頭痛との関係についてのデータを充足するため、イラン・テヘラン医科大学のShadi Ariyanfar氏らは本研究を実施した。Iranian Journal of Child Neurology誌2022年冬号の報告。  3次医療圏の頭痛クリニックにおける人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は7~14歳の小児290例。片頭痛の診断は、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の基準を用いて神経内科医が行った。人口統計学的および人体測定学的特性を収集した。食事摂取量の調査には、検証済みの半構造化された食事摂取頻度調査票(food frequency questionnaire:FFQ)を用いた。  主な結果は以下のとおり。

うつ病の早期寛解の予測因子

 抗うつ薬による治療反応は、患者ごとに大きく異なり、治療前に予測することは困難である。NTT西日本九州健康管理センタの阿竹 聖和氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)およびミルタザピンの治療反応と相関するサイトカイン、これらサイトカインが各抗うつ薬治療による寛解の予測因子となりうるかについて、調査を行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2022年3月9日号の報告。  抗うつ薬治療前の患者95例を対象に、酵素結合免疫吸着測定法を用いて、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の分析を行った。うつ症状の評価は、ハミルトンうつ病評価尺度を用いて4週間調査した。

ファイザー製ワクチン3回目、第III相試験で有効率95%/NEJM

 BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の2回目接種から中央値で10.8ヵ月後に行われた3回目接種は、プラセボ接種(BNT162b2ワクチン2回接種)と比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効率が95.3%であった。ブラジル・オズワルドクルス財団のEdson D. Moreira氏らが、米国、南アフリカ共和国、ブラジルの123施設で実施した無作為化プラセボ対照第III相試験「C4591031試験」の結果を報告した。積極的なBNT162b2ワクチンの接種は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によるCOVID-19パンデミック下での重要な予防手段となりうる。ワクチンの2回目接種から6ヵ月後には液性免疫が低下するという報告を踏まえ、16歳以上への3回目(ブースター)接種の安全性と有効性に関するデータが必要とされていた。Lancet誌オンライン版2022年3月23日号掲載の報告。

HER2+乳がん2次治療、HR0.28でT-DXdがPFS延長(DESTINY-Breast03)/NEJM

 トラスツズマブおよびタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移のある乳がん患者において、抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)はトラスツズマブ エムタンシン(同:カドサイラ)と比較し、病勢進行または死亡のリスクを有意に低下させることが認められた。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏らが、世界15ヵ国169施設で実施された無作為化非盲検第III相試験「DESTINY-Breast03試験」の中間解析結果を報告した。本試験での発現率はこれまでの臨床試験に比べ数値的に低かったもののトラスツズマブ デルクステカンの投与は間質性肺疾患の発現と関連しており、著者は「臨床使用においては慎重なモニタリングが不可欠」と注意を促したうえで、「トラスツズマブ デルクステカンは、トラスツズマブとタキサン系薬剤、ならびにペルツズマブによる治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する有効な新しい治療薬である」とまとめている。NEJM誌2022年3月24日号掲載の報告。

米国でのオミクロン、デルタ、アルファ株におけるCOVID-19の臨床的重症度とmRNAワクチンの有効性の違い(解説:寺田教彦氏)

2019年末より新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症は世界的に拡大し、2022年3月現在でも、流行は続いている。この間に、新型コロナウイルスの特徴も判明し、ワクチン開発、治療方法の整備も進んだが、新型コロナウイルスも変異を繰り返し、流行の終息はまだ見えていない。本研究は、2021年3月11日から2022年1月14日までに米国21病院が参加した前向き研究で、mRNA COVID-19ワクチンのアルファ変異株、デルタ変異株、オミクロン変異株に対するCOVID-19関連入院の予防効果、COVID-19関連入院患者における変異株ごとの重症化率、死亡率について検討され、BMJ誌2022年3月9日号で報告された。

紹介状に不満がある医師は約7割!その紹介の実態は?/1,000人アンケート

 医療連携の一環として活用される紹介状。正式名称は「診療情報提供書」である。かかりつけ医が高度医療の必要があると判断して患者を紹介したり、その逆で患者の病状が安定したからとかかりつけ医などに戻ってもらう際に使用したりする。だが、この紹介状が名ばかりで実際の情報提供になっていないことがあるらしい。そこで今回、ケアネットでは会員医師1,000人を対象に『紹介状で困ったこと・良かったこと』に関するアンケートを実施した。

ダイエットの成功率、方法、成功のコツは?/アイスタット

 現在のように飽食の時代では「ダイエット」は老若男女に共通する課題であり、コロナ禍の今は「外出ができない」「運動が難しい」などの制約から、その意識はさらに高まっている。こうした環境下で人々のダイエットの意識はどのようなものがあるであろう。  株式会社アイスタットは、3月21日にアンケートを実施した。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員30~59歳の300人が対象。

セルペルカチニブがRET遺伝子異常甲状腺がんの新たな治療選択肢に/リリー

 2022年2月、RET遺伝子異常を有する甲状腺がんに対しRET阻害薬セルペルカチニブの適応が承認された。甲状腺がんにおける新たな治療選択肢セルペルカチニブの役割について、日本医科大学 内分泌外科学分野の杉谷 巌氏が紹介した。  甲状腺がんの多くは予後良好だが、低分化がんや髄様がんの一部は良好ではない。また近年、甲状腺がんの約90%を占め、従来は予後良好とされていた乳頭がんの一部に予後の悪い高リスク群が存在することが明らかになった。

統合失調症と双極性障害患者における脳容積の違い

 統合失調症と双極性障害は、重複するポリジーン構造や臨床的類似性が認められるものの、臨床的には非類似の特性を有する別疾患である。両疾患において、皮質下容積の特定の違い、皮質下の違いによる臨床的特徴への影響については、不明なままである。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症患者、双極性障害患者、健康対照者における皮質下容積の違いについて検討を行った。また、統合失調症と双極性障害の患者における特定の皮質下容積に対する臨床的特徴への影響についても、併せて調査した。Journal of Psychiatry & Neuroscience誌2022年3月1日号の報告。  単一施設の単一スキャナを用いて、対象患者413例(統合失調症:157例、双極性障害:51例、健康対照:205例)より、3T MRIにおけるT1強調画像を収集した。T1強調画像の処理、皮質下脳容積をセグメント化するため、FreeSurfer ver. 6.0を用いた。7つの皮質下領域(視床、尾状核、被殻、淡蒼球、海馬、扁桃体、側坐核)の違いについて、群間比較を行った。また、統合失調症と双極性障害の患者における皮質下容積と臨床的特徴との相関についても調査した。

COVID-19関連の超過死亡、報告されている死亡の3倍/Lancet

 2020~21年の2年間における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による全体的な死亡への影響は、COVID-19のみに起因する死亡よりもはるかに大きく、全年齢層における世界的な超過死亡の割合は10万人当たり平均120人であり、300人を超えた国は21ヵ国に及ぶことが、米国・ワシントン大学のHaidong Wang氏らCOVID-19 Excess Mortality Collaboratorsの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年3月10日号に掲載された。  研究グループは、2020年1月1日~2021年12月31日の期間の、191の国と領土、および252の地域におけるCOVID-19の世界的流行による超過死亡の推定を目的に、COVID-19関連死亡の報告書を系統的に解析した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの助成を受けた)。  この調査では、上記期間とその最大11年前までの期間における週ごとまたは月ごとのあらゆる原因による死亡(総死亡)の報告書が、世界74の国と領土、および266の地域(低・中所得国の31の地域を含む)から収集された。また、インドの12州から超過死亡データが得られた。

新たなインクレチン関連薬(GIP/GLP-1受容体作動薬)がもたらす効果(解説:安孫子亜津子氏)

わが国の2型糖尿病は欧米に比較してインスリン分泌能低下がメインの病態である患者が多いことが知られている。以前はSU薬中心であった2型糖尿病の治療が、2009年にDPP-4阻害薬が上梓されてからは、かなり多くの患者で使用され、SU薬の使用量が大きく減少した。さらにGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬に比較して、より血糖低下効果が大きく、食欲抑制効果なども併せ持っていることから、その使用患者は増加してきており、とくに週1回注射のGLP-1受容体作動薬の登場後は、幅広い患者で使われるようになってきている。このようにインクレチン関連薬の有用性が認知されている中、新たなインクレチン関連薬としてGIP/GLP-1受容体作動薬「tirzepatide」が登場し、現在次々と臨床試験の結果が報告されてきている。

BRCA変異陽性高リスク早期乳がん患者への術後オラパリブ、OSも改善(OlympiA)

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性(gBRCAm)かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対する、オラパリブ(商品名:リムパーザ)の術後投与が、全生存期間(OS)を有意に延長した。本試験(第III相OlympiA試験)の主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)であり、主要解析結果は、2021年の米国臨床腫瘍学会年次総会で初めて発表され、NEJM誌に同時掲載されている。今回、2022年3月16日に行われた欧州臨床腫瘍学会のバーチャルプレナリーで、OSの最新の結果が発表された。

抗TNFα抗体製剤治療中のIBD患者、2回目の新型コロナワクチン接種後の免疫応答が低下

 抗TNFα抗体製剤は、炎症性腸疾患(IBD)などの免疫介在性炎症性疾患の治療に頻繁に用いられる生物学的製剤の1つだ。これまで抗TNFα抗体製剤は、肺炎球菌やインフルエンザワクチン接種後の免疫応答を減弱させ、重篤な呼吸器感染症リスクを増加させることが知られていた。しかし、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ワクチンに対するデータは不足していた。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのSimeng Lin氏らは、インフリキシマブ(抗TNFα抗体製剤)またはベドリズマブ(腸管選択的抗α4β7インテグリン抗体製剤)で治療中のIBD患者において、2回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体濃度やブレークスルー感染の頻度を比較した。Nature Communications誌2022年3月16日号の報告。

ペムブロリズマブの非小細胞肺がんアジュバントがPD-L1発現問わずDFS延長/Merck

 Merck社は、2022年3月17日、第III相KEYNOTE-091試験(EORTC-1416-LCG/ETOP-8-15-PEARLS)の結果を発表した。  PD-L1発現の有無にかかわらず、外科的切除後のStage IB期(≧4 cm)〜IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブの術後補助療法が、主要評価項目の1つである無病生存期間(DFS)を有意に延長した(HR:0.76、95% CI:0.63〜0.91、p=0.0014)。DFS中央値はペムブロリズマブ53.6ヵ月で、プラセボ42.0ヵ月であった。このデータは、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のバーチャルプレナリーで発表されている。

インターネット・ゲーム依存に対する治療の有効性比較~メタ解析

 インターネット・ゲーム依存は、小児や若年成人に負の影響を及ぼす可能性のある精神疾患の1つである。台湾・中央研究院のChuan-Hsin Chang氏らは、インターネット・ゲーム依存に対する薬物療法および心理社会的介入の推定効果を包括的に比較するため、ランダム化比較試験や最新メタ解析を用いて、メタ回帰分析を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2022年2月24日号の報告。  インターネット依存およびインターネット・ゲーム依存に対する介入を検討した研究(2000~17年)をPubMed、MEDLINE、Cochrane Library、Airiti Libraryより検索した。選択された29論文より124研究が抽出された。対象は、小児、若年成人のインターネット依存およびインターネット・ゲーム依存患者5,601例。

COVID-19患者の脱毛症、特徴が明らかに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が報告されている脱毛症患者について、米国・マイアミ大学のBetty Nguyen氏らが系統的レビューとメタ解析を実施。男性型脱毛症は、重症新型コロナウイルス感染症のリスク因子である可能性が認められ、一方で休止期脱毛症は新型コロナウイルス感染症の後遺症としての出現が認められること、また円形脱毛症は概して、円形脱毛症既往患者に再発として認められることを報告した。新型コロナウイルス感染症は男性型脱毛症、休止期脱毛症、円形脱毛症と関連することが示されているが、これまで包括的なデータ分析は行われていなかった。JAAD International誌オンライン版2022年2月22日号掲載の報告。

COVID-19ワクチンの免疫性神経疾患リスクを検証/BMJ

 4種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種後には、免疫性神経疾患(Bell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎)の安全性シグナルは認められないが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染したワクチン未接種者ではBell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群のリスクが増大していることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月16日号で報告された。

人口の何%が感染?コロナの“いま”に関する11の知識(2022年3月版)/厚労省

 厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2022年3月版)」を3月11日に公開した。これは、日本の新型コロナウイルス感染症の感染者数・重症化率・病原性、感染性、検査・治療、変異株について、現在の状況とこれまでに得られた科学的知見を11の知識としてとりまとめたもの。主な更新内容は以下のとおり。 Q 日本では、どれくらいの人が新型コロナウイルス感染症と診断されていますか。 2022年3月1日0時時点で499万4,387人が診断され、全人口の約4.0%に相当する。 Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人や死亡する人はどれくらいですか。 2021年7~10月に診断された人における重症化率は0.98%(50代以下0.56%、60代以上5.0%)、死亡率は0.31%(50代以下0.08%、60代以上2.5%)だった。

急性期双極性うつ病に対する補助的抗うつ薬治療~メタ解析

 双極性障害のうつ病相は、重篤な機能障害や疾患負荷の原因となる。双極性うつ病治療における抗うつ薬の有効性および安全性は、長年にわたり議論の対象となっている。中国・上海交通大学医学院のYuliang Hu氏らは、急性期双極性うつ病に対する、気分安定薬または抗精神病薬の単独療法と抗うつ薬の併用療法において、有効性、躁転リスク、忍容性を比較した研究についてのメタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2022年2月22日号の報告。  18歳以上の急性期双極性うつ病患者を対象に、補助的抗うつ薬治療を用いた場合とそうでなかった場合における有効性および有害事象を比較した、非盲検および二重盲検のランダム化比較試験を複数のデータベースより検索した。バイアスリスクとアウトカムの評価には、コクランバイアスリスクツールを用いた。

新型コロナ、ハムスターからのヒト-ヒト感染を確認/Lancet

 ペットのハムスターはSARS-CoV-2に自然感染し、ハムスター間で伝播してヒトへの感染につながる可能性がある。中国・香港大学のHui-Ling Yen氏らは、ペットショップ店員のSARS-CoV-2感染事例について調査し、遺伝学的および疫学的な結果から、ハムスターからヒトへの感染が1回以上あったことが強く示唆され、その後のヒトへの感染につながったことを明らかにした。ヒトからペット動物を含む他の哺乳類へのSARS-CoV-2感染は報告されているが、養殖ミンクを除き、これら感染動物からヒトへの感染が持続的なヒト-ヒト感染に至るという証拠はこれまでなかった。著者は、「SARS-CoV-2デルタ変異株に感染したハムスターの輸入が局地的な流行の原因である可能性が高い。今回の調査結果は、ペット動物の取引に対する認識、監視、ならびに適切な検疫と管理政策の必要性を強調している」とまとめている。Lancet誌2022年3月12日号掲載の報告。