日本語でわかる最新の海外医学論文|page:169

統合失調症患者のアルコール使用と自殺関連アウトカム~メタ解析

 自殺は統合失調症患者における不自然死の主な原因である。アルコール使用は統合失調症患者の併存疾患として一般的に認められ、自殺に対する修正可能なリスク因子である。英国・マンチェスター大学のLee D. Mulligan氏らは、統合失調症患者におけるアルコール使用と自殺関連アウトカムとの関係を定量的に調査するため、プロスペクティブ研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症患者においてアルコール使用は、自殺関連アウトカムと大きく関連していることが示された。Psychological Medicine誌オンライン版2023年10月11日号の報告。

再発性UTIに高周波電気療法が有効性を示す

 米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPhilippe Zimmern氏らの研究で、再発性尿路感染症(UTI)に対する治療法の有効性が示された。この治療法は、高周波電気療法(electrofulguration)と呼ばれるもので、炎症を伴う感染した膀胱組織に電気刺激を加えて破壊する。研究では、再発性UTIに苦しんでいる多くの女性でこの治療法の効果が確認された。詳細は、「The Journal of Urology」10月号に掲載された。  一部の高齢女性は膀胱炎などのUTIの再発を繰り返し、そのたびに抗菌薬の処方を受けている。しかし、抗菌薬を継続的に、あるいは繰り返し使用すると耐性菌が増加し、UTIの治療がますます難しくなることがある。こうした状況が、敗血症として知られる危険な血液感染を招き、膀胱の外科的な切除に至る場合もある。

がん検診で見つかった異常、フォローアップ率向上の鍵を握るのはプライマリケア医

 乳がん、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんの検診で異常が見つかり、経過観察(フォローアップ)が必要になった患者に対してプライマリケア医が介入することで、患者が必要なフォローアップを推奨通りのタイミングで受ける可能性の高まることが、新たな臨床試験で示された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)一般内科のSteven Atlas氏らが、米国立がん研究所(NCI)と米国がん協会(ACS)の支援を受けて実施したこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」10月10日号に発表された。

植物性食品が豊富な食料支援が若年者の肥満解消・予防に寄与

 植物性食品を豊富に含む家族向けの食料支援サービスは、その家庭の子どもの肥満予防に有用な方策となる可能性が、「Preventing Chronic Disease」に6月22日掲載された研究から示唆された。  米ボストン小児病院のAllison J. Wu氏らは、2021年1月から2022年2月の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下において、米マサチューセッツ総合病院のリビア・フードパントリー(Revere Food Pantry;食料配給所)からの、植物性食品を中心とする家庭向けの食料支援が、その家庭の子どものBMIの変化に与える影響について検討した。対象とされた家庭には、新鮮な野菜と果物、ナッツ類、全粒穀物を含む食料品を、家族全員が1日3回摂取できるように毎週配給した。食料支援を受けた93世帯の子ども107人のうち、2~18歳の若年者計35人を対象に分析した。分析には線形回帰を使用した。

セルペルカチニブによるRET陽性NSCLC1次治療、PFSを有意に延長/NEJM

 進行RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対し、セルペルカチニブはプラチナベースの化学療法(ペムブロリズマブの併用を問わず)と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、中国・同済大学のCaicun Zhou氏らが行った第III相無作為化試験で示された。セルペルカチニブは中枢移行性を有する強力な選択的RET阻害薬で、進行RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に対する有効性が、第I・II相の非無作為化試験で示されていた。NEJM誌オンライン版2023年10月21日号掲載の報告。

RET変異甲状腺髄様がん、セルペルカチニブvs.マルチキナーゼ阻害薬/NEJM

 RET変異甲状腺髄様がん治療において、セルペルカチニブはカボザンチニブまたはバンデタニブに比べて、無増悪生存期間(PFS)および治療成功生存期間(FFS)の延長をもたらすことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJulien Hadoux氏らが行った第III相無作為化試験の結果で示された。セルペルカチニブは、選択性が高く強力なRET阻害薬で、第I・II相試験で進行RET変異甲状腺髄様がんに対する有効性が示されていたが、マルチキナーゼ阻害薬と比較した場合の有効性については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年10月21日号掲載の報告。

心原性ショック治療の難しさ:リスク評価と個別治療の重要性(解説:香坂俊氏)

1999年のSHOCK試験まではよかった。この試験では、心原性ショックを合併した急性心筋梗塞症例でも、72時間以内にPCI/CABGを実施したほうが、長期的な予後が改善することが初めて証明された。しかし、心原性ショックのマネージメントについては、その後20年間、長い長い停滞期を迎えることとなる:・2012年 IABP-SHOCK2:IABPの使用で予後改善せず・2017年 CULPRIT-SHOCK:多枝病変であっても責任病変のみのPCIで十分・今回(2023年) ECLS-SHOCK:PCPSの使用で予後が改善せず

オンコマインDx、カプマチニブのMETエクソン14スキッピング非小細胞肺がんに対するコンパニオン診断として追加申請/サーモフィッシャー

 サーモフィッシャーは、オンコマインTM Dx Target Test マルチ CDxシステム(以下、オンコマインDx)について、カプマチニブ塩酸塩水和物(以下、カプマチニブ)のMETエクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するコンパニオン診断として、2023年11月1日付で厚生労働省に医療機器製造販売承認事項一部変更申請を行ったと発表。  カプマチニブに対するコンパニオン診断システムとしての適応追加の承認が得られれば、オンコマインDxは、非小細胞肺がんの7ドライバー遺伝子(BRAF、EGFR、HER2、ALK、ROS1、RET、MET)、甲状腺がんの1ドライバー遺伝子(RET)、甲状腺髄様がんの1ドライバー遺伝子(RET)を網羅するコンパニオン診断システムとなる。

抗精神病薬の推奨用量のコンセンサス、最も高い製剤は~ICSAD-2

 専門家のコンセンサスに基づいた臨床的に同等の推定用量や推奨用量は、臨床診療および研究において、精神疾患に対する薬物治療をサポートする貴重な情報となりうる。カナダ・ダルハウジー大学のMatthew Kt McAdam氏らは、精神疾患に対する新規薬剤と過去に報告されているコンセンサスの低い薬剤について、用量の同等性と推奨用量の確立および更新を目的に、第2回となる抗精神病薬投与に関する国際的なコンセンサス確立のための研究「Second International Consensus Study of Antipsychotic Dosing:ICSAD-2」を行った。Journal of Psychopharmacology誌2023年10月号の報告。

ざ瘡に期待できる栄養補助食品は?

 ざ瘡(にきび)治療の補助としてビタミン剤やそのほかの栄養補助食品に関心を示す患者は多い。しかし、それらの有効性や安全性は明らかではなく、推奨する十分な根拠は乏しい。そこで、米国・Brigham and Women's HospitalのAli Shields氏らの研究グループは、ざ瘡治療における栄養補助食品のエビデンスを評価することを目的にシステマティックレビューを行った。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年10月25日号の報告。  研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Scienceの各データベースを開設から2023年1月30日まで検索した。ざ瘡患者を対象に栄養補助食品(ビタミンやミネラル、植物抽出物、プレバイオティクス、プロバイオティクスなど)の摂取を評価した無作為化比較試験を解析し、臨床医が報告したアウトカム(全体評価や病変数など)、患者が報告したアウトカム(QOLなど)、有害事象を抽出した。試験のバイアスリスクはCochrane risk of bias toolを用いて、論文の質をGood、Fair、Poorに分類した。

一人暮らしでペットを飼っている人は、うつ病リスクが高い?

 ペットを飼っている独居者には、うつ症状のある人が多いことを示すデータが報告された。ペットのいない独居者よりも、そのような人の割合が高い可能性があるという。国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部の三宅遥氏らの研究結果であり、詳細は「BMC Public Health」に9月11日掲載された。  うつ病は各国で増加しており、世界的な公衆衛生上の問題となっている。抗うつ薬で寛解に至るのは患者の3分の1程度にとどまるため、うつ病の発症を予防する因子の特定は喫緊の課題である。これまでに行われた複数の研究からは、独居がうつ病のリスク因子の一つであることが示唆されている。一方で、家族の一員としても捉えられることもあるペットを飼育することが、独居によるうつ病リスクを押し下げるかどうかについて、詳細な検討はされていない。三宅氏らは、一人暮らしの人はうつ病リスクが高いとしても、ペットを飼育している場合は、その関連が減弱されるのではないかとの仮説を立て、同居家族やペットの有無別に、うつ症状のある人の割合を比較検討した。

肝臓と腎臓の慢性疾患の併存で心臓病リスクが上昇する

 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(IHD)のリスク抑制には、肝臓と腎臓の病気の予防が肝腎であることを示唆する研究結果が報告された。代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)と慢性腎臓病(CKD)が併存している人は、既知のリスク因子の影響を調整してもIHD発症リスクが有意に高いという。札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座の宮森大輔氏、田中希尚氏、古橋眞人氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に7月8日掲載された。

再発高リスク肝細胞がん術後補助療法、アテゾリズマブ+ベバシズマブでRFS改善(IMbrave050)/Lancet

 根治目的の外科的切除または焼灼療法後に再発リスクが依然として高い肝細胞がん患者への術後補助療法として、アテゾリズマブ+ベバシズマブの併用療法はアクティブサーベイランス(経過観察)と比較して無再発生存期間(RFS)を改善したことが、中国・南京中医薬大学のShukui Qin氏ら「IMbrave050試験」研究グループにより報告された。これまで再発リスクの高い肝細胞がん患者への術後補助療法は確立されていなかった。Lancet誌オンライン版2023年10月20日号掲載の報告。  IMbrave050試験は第III相国際非盲検無作為化試験で、世界保健機関(WHO)が定める4地域(欧州、アメリカ大陸、東南アジア、西太平洋地域)の26ヵ国における134の病院および医療センターから、外科的切除や焼灼療法を受けた高リスクの肝細胞がん成人患者を集めて行われた。

STEMI、中医薬tongxinluoの上乗せで臨床転帰改善/JAMA

 中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのYuejin Yang氏らは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)におけるガイドライン準拠治療への上乗せ補助療法として、中国伝統医薬(中医薬)のTongxinluo(複数の植物・昆虫の粉末・抽出物からなる)は30日時点および1年時点の両方の臨床アウトカムを有意に改善したことを、大規模無作為化二重盲検プラセボ対照試験「China Tongxinluo Study for Myocardial Protection in Patients With Acute Myocardial Infarction(CTS-AMI)試験」の結果で報告した。Tongxinluoは有効成分と正確な作用機序は不明なままだが、潜在的に心臓を保護する作用があることが示唆されている。中国では1996年に最初に狭心症と虚血性脳卒中について承認されており、心筋梗塞についてはin vitro試験、動物実験および小規模のヒト試験で有望であることが示されていた。しかし、これまで大規模無作為化試験では厳密には評価されていなかった。JAMA誌2023年10月24・31日合併号掲載の報告。

ナーシングホーム入所者に対するユニバーサル除菌は感染症による入院を予防できるか?(解説:小金丸博氏)

ナーシングホームに入居する高齢者では、感染症による入院リスクや薬剤耐性菌(MRSA、ESBL産生菌など)の保菌率が高いことが懸念されている。今回、ナーシングホーム入所者に対して除菌を行うことで感染症による入院を減らすことができるかを検討したランダム化比較試験の結果が、NEJM誌オンライン版2023年10月10日号に報告された。除菌を行った群では感染症による入院が減少し(ベースライン期間と介入期間のリスク比:0.83、95%信頼区間:0.79~0.88)、日常ケア群とのリスク比の差は16.6%だった。ランダムに抽出した入所者に対して行った多剤耐性菌の保菌率は除菌を行った群で減少を認め、日常ケア群と比較した相対リスクは0.70(95%信頼区間:0.58~0.84)だった。感染症による入院を1件防ぐのに必要な治療数(NNT)は9.7件であり、ナーシングホーム入所者に対するユニバーサル除菌は有効性の高い予防法である可能性が示唆された。

デュピルマブによる皮膚T細胞性リンパ腫が疑われた患者の臨床・病理学的特徴

 日常診療でのアトピー性皮膚炎に対するデュピルマブの使用が増加して以降、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)やリンパ球浸潤が生じた症例が報告されているという。そこで、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのCeleste M. Boesjes氏らは、デュピルマブ治療中に臨床的にCTCLが疑われたアトピー性皮膚炎患者の臨床的および病理学的特徴の検討を目的として、後ろ向きケースシリーズ研究を実施した。その結果、デュピルマブによる治療を受けた患者は、特有の病理学的特徴を持ちながら、CTCLに類似した可逆的な良性のリンパ球集簇(lymphoid reaction:LR)が生じる可能性があることが示された。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年10月18日号掲載の報告。

日本人乳がん患者におけるHER2低発現の割合・特徴(RetroBC-HER2L)/日本癌治療学会

 HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)の乳がん患者に対する治療薬の臨床的ベネフィットが示され、その割合や治療パターン、転帰などについて理解を深めることが求められる。HER2陰性転移乳がんにおけるHER2低発現患者の割合を10ヵ国13施設で評価したRetroBC-HER2L試験の日本人解析結果を、昭和大学病院の林 直輝氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。日本からは3施設が参加している。

75歳以上/PS2以上の局所進行NSCLCにもCRT後のデュルバルマブ地固めは有用か?/ESMO2023

 化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、切除不能な局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する標準治療である。しかし、75歳以上またはperformance status(PS)2以上の切除不能な局所進行NSCLC患者における臨床的意義については明らかになっていない。そこで、この集団におけるCRT後のデュルバルマブ地固め療法の有用性を検討したNEJ039A試験が実施され、その結果を静岡県立静岡がんセンターの高 遼氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。 試験デザイン:国内第II相単群試験 対象:StageIIIの切除不能NSCLC患者のうち、PS 0/1かつ75歳以上の患者73例、PS 2以上かつ75歳未満の患者13例(計86例) 試験群:CRT(30分割で合計60Gyを照射。最初の20回は、放射線照射の1時間前に低用量カルボプラチン[30mg/m2]を毎回投与)→デュルバルマブ(10mg/kgを2週ごと、1年間)

チルゼパチド追加の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」改訂版/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)は、11月2日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム 改訂版」を公開した。このアルゴリズムは、2022年9月に2型糖尿病治療の適正化を目的に初版が公開された。今回の改訂版では、チルゼパチドが追加された。