日本語でわかる最新の海外医学論文|page:10

高リスク頭頸部がん、CRT+ニボルマブの術後補助療法が20年振りの新たな標準治療に(NIVOPOSTOP)/ASCO2025

 高リスクの局所進行(LA)頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)に対する術後の標準治療は、長らく補助療法としての化学放射線療法(CRT)であった。しかし、これらの治療にもかかわらず40%以上の患者で再発が認められ、より効果的な治療法が必要とされている。NIVOPOSTOP試験は、術後CRTにニボルマブを追加した群とCRT単独群を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションにおいて、Le Centre hospitalier universitaire vaudois(スイス)のJean Bourhis氏が本試験の結果を発表した。

HRR関連遺伝子に病的バリアントを有するmCSPCへのニラパリブ+AAP、rPFS改善(AMPLITUDE)/ASCO2025

 相同組換え修復(HRR)関連遺伝子に病的バリアントを有する転移去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者において、PARP阻害薬ニラパリブ+AAP(アビラテロン+prednisone)併用療法は、プラセボ+AAP療法と比較して、画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善した。英国・ロンドン大学のGerhardt Attard氏が、ヨーロッパ・北米など32ヵ国で実施された第III相AMPLITUDE試験の中間解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

COPD初の生物学的製剤デュピルマブへの期待/サノフィ

 サノフィは、2025年3月27日にデュピルマブ(商品名:デュピクセント)について、製造販売承認事項一部変更承認を取得し、「慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な患者に限る)」の適応が追加となった。この適応追加により、デュピルマブは慢性閉塞性肺疾患(COPD)に適応を有する初の生物学的製剤となった。  COPD治療の中心は、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)や長時間作用性β2刺激薬(LABA)といった気管支拡張薬である。LAMA+LABAで効果不十分かつ血中好酸球数高値の患者や、喘息病態を合併する患者には、吸入ステロイド薬(ICS)を追加した3剤併用療法(トリプル療法)が用いられることもあるが、それでも症状の残存や増悪を繰り返す患者が存在し、新たな治療選択肢が求められていた。

うつ病合併片頭痛に対するフレマネズマブの有効性〜UNITE試験

 片頭痛とうつ病は併発することが多いものの、両疾患を合併した患者における片頭痛予防に関する有効性を評価したエビデンスは限られている。米国・Albert Einstein College of MedicineのRichard B. Lipton氏らは、うつ病を合併した成人片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、二重盲検プラセボ対照並行群間ランダム化試験であるUNITE試験を実施した。JAMA Neurology誌オンライン版2025年5月5日号の報告。  UNITE試験は、4週間のスクリーニング期間、12週間の二重盲検期間および12週間の非盲検継続試験により構成され、2020年7月9日〜2022年8月31日に12ヵ国、55施設で実施した。対象患者は、スクリーニング前12ヵ月以上にわたりDSM-V基準に基づくうつ病歴があり、スクリーニング時に活動性の抑うつ症状を呈した反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)の成人患者。フレマネズマブ225mgを月1回投与したフレマネズマブ群とプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられた。継続試験に参加した患者には、フレマネズマブ675mgを四半期ごとに投与した。主要アウトカムは、12週間の二重盲検期間中における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化量とした。

HER2+乳がん術前療法、THP vs.TCHP(neoCARHP)/ASCO2025

 HER2+の早期乳がんの術前療法として、タキサン系薬+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP)と、カルボプラチンを追加したタキサン系薬+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(TCHP)の有効性と安全性を比較した第III相neoCARHP試験の結果、THPはTCHPと比較して病理学的完全奏効(pCR)率が非劣性かつ忍容性は良好であり、de-escalationの術前療法は有望な治療戦略となりうることを、中国・Guangdong Provincial People’s HospitalのKun Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

眠気の正体とは?昼間の眠気は異常?/日本抗加齢医学会

 突然襲いかかる眠気。実はこの正体、いまだに明らかになっていないらしい―。睡眠学の世界的権威である柳沢 正史氏(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 WPI-IIIS)が、日本抗加齢医学会主催のメディアセミナーにて「睡眠の謎に挑む~基礎研究から睡眠ウェルネスへ~」と題し、現時点でわかっている眠気の正体、われわれが誤解している睡眠の実態などについて解説した。

スポーツを現地観戦する高齢者は幸福感が高い/千葉大

 世界でも高い水準で高齢化が進んでいる日本においては、高齢者がいかに幸福度を維持しながら老後を過ごしていくかが課題の一つとなっている。過去には、スポーツによる身体活動だけでなく、スポーツ観戦といった受動的な参加によっても主観的幸福感が向上することが報告されてきた。しかし、スポーツ観戦においては、現地、テレビ、インターネットなどでそれぞれ幸福感との関係が異なる可能性も示唆されており、既存の研究の中では十分な検討がなされていない。そのような背景を踏まえ、著者らはスポーツ観戦をする高齢者は、観戦しない高齢者よりも幸福感が高いという仮説を立て、現地、テレビ・インターネットでのスポーツ観戦と幸福感との関連を大規模疫学研究のデータを用いて検討することとした。

既治療CLDN18.2陽性胃がん、CAR-T療法satri-celがPFS改善(CT041-ST-01)/Lancet

 既治療のCLDN18.2陽性進行胃または食道胃接合部がん患者において、医師が選択した治療と比較してsatricabtagene autoleucel(satri-cel、自家CLDN18.2特異的キメラ抗原受容体[CAR]T細胞療法)による治療は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)について有意差はないものの臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・Peking University Cancer HospitalのChangsong Qi氏らが実施した「CT041-ST-01試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月31日号に掲載された。  CT041-ST-01試験は、既治療のCLDN18.2陽性進行胃・食道胃接合部がんにおけるsatri-cel治療の有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化実薬対照比較第II相試験であり、2022年3月~2024年7月に中国の24施設で参加者のスクリーニングを行った(CARsgen Therapeuticsの助成を受けた)。

エビナクマブに続けるか?抗ANGPTL4抗体薬の可能性(解説:興梠貴英氏)-1971

ANGPTL(angiopoietin-like)タンパク質は1から8までのファミリーをなしており、その中で3、4、8はリポ蛋白リパーゼ活性を阻害することで中性脂肪(TG)の血清濃度を上げる作用がある。したがって、ANGPTL3、4、8を阻害することでTGを低下させ、ひいては動脈硬化性疾患の減少につながることが期待されている。すでにANGPTL3に対するモノクローナル抗体医薬であるエビナクマブは2021年にFDAおよびEMAにより承認され、本邦においても2024年1月18日に承認されている。抗ANGPTL4抗体薬についても開発が進められていたが、REGN1001という抗体薬は前臨床のマウス投与実験において副作用が多発したため、開発中止となった。

III期dMMR大腸がん、術後補助療法にアテゾリズマブ上乗せでDFS改善(ATOMIC)/ASCO2025

 III期大腸がんの標準的な補助化学療法は、フッ化ピリミジンまたはオキサリプラチン併用療法である。ATOMIC試験は、StageIIIでミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する患者において、補助療法として5-フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン(mFOLFOX6)に抗PD-L1抗体アテゾリズマブを追加投与することで、患者予後を改善できるかを評価するために実施された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションにおいて、米国・メイヨークリニックのFrank A. Sinicrope氏が本試験の2回目の中間解析結果を発表した。

進行腎細胞がん1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ、9年長期追跡結果(CheckMate 214)/ASCO2025

 CheckMate 214試験において、進行淡明細胞型腎細胞がん患者の1次治療として、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法はスニチニブ単剤療法と比較して有意な生存ベネフィットを示したことが報告されている。今回、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのRobert J. Motzer氏が追跡期間中央値9.3年の最終解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表。ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は全試験対象集団において生存の改善および持続的な奏効を示し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。

思春期うつ病に最も効果的な抗うつ薬は?

 中国・Capital Medical UniversityのTianwei Wu氏らは、10代の若者におけるうつ病治療に対する各種抗うつ薬の有効性を評価し、思春期うつ病に対する治療の有効性および忍容性を評価するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2025年5月10日号の報告。  対象は、各種診断基準(DSM-5、CCMD-3、DSM-4、ICD10/11)でうつ病と診断された6〜18歳の青年。2024年10月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)を主要データベース(PubMed、Cochrane Library、Web of Science)よりシステマティックに検索した。検索に使用したキーワードは、うつ病、うつ病性障害、感情障害、青年期、若年成人、未成年者、fluoxetine、セルトラリン、パロキセチン、agomelatine、vilazodone、エスシタロプラム、ベンラファキシンとした。バイアスリスクは、Cochraneバイアスリスクツールを用いて評価した。

糖尿病患者の認知症リスク低減、GLP-1薬とSGLT2阻害薬に違いは?

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)およびSGLT2阻害薬と2型糖尿病患者のアルツハイマー病およびアルツハイマー病関連認知症(ADRD)のリスクを評価した結果、両剤はともに他の血糖降下薬と比較してADRDリスクの低下と関連しており、GLP-1薬とSGLT2阻害薬の間には有意差は認められなかったことを、米国・University of Florida College of PharmacyのHuilin Tang氏らが明らかにした。JAMA Neurology誌2025年4月7日号掲載の報告。  GLP-1薬およびSGLT2阻害薬とADRDリスクとの関連性はまだ確認されていない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1薬およびSGLT2阻害薬に関連するADRDリスクを評価するために、2014年1月~2023年6月のOneFlorida+ Clinical Research Consortiumの電子健康記録データを使用して、無作為化比較試験を模倣するターゲットトライアルエミュレーションによる検証を実施した。対象は50歳以上の2型糖尿病患者で、ADRDの診断歴または認知症治療歴がない者とした。ADRDは臨床診断コードを用いて特定した。

既治療のEGFR exon20挿入変異NSCLCへのzipalertinib(REZILIENT1)/ASCO2025

 EGFR exon20挿入変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、2024年にアミバンタマブが使用可能となった。しかし、アミバンタマブで病勢進行が認められた場合や有害事象などによって中止となった場合、アミバンタマブが使用できない場合の治療選択肢は確立していない。そこで、新規EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のzipalertinibが開発されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Helena Alexandra Yu氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、EGFR exon20挿入変異を有する既治療のNSCLC患者を対象とした国際共同第I/II相試験「REZILIENT1試験」の第IIb相の結果を報告した。本試験において、zipalertinibはプラチナ製剤を含む化学療法±アミバンタマブによる治療歴のあるNSCLC患者においても有効であることが示唆された。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月1日号に同時掲載された。

CDK4/6+AI治療後に進行したHR+/HER2-転移乳がん、ipatasertib+フルベストラントがPFS改善(CCTG/BCT MA.40/FINER)/ASCO2025

 CDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬(AI)による1次治療後に病勢進行したホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)転移乳がん患者において、経口AKT阻害薬ipatasertib+フルベストラント併用療法は、プラセボ+フルベストラントと比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長した。カナダ・BC Cancer AgencyのStephen K. L. Chia氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの41施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(CCTG/BCT MA.40/FINER試験)の結果を発表した。

コロナワクチン、デマ対策より「接種開始時期」が死亡者数に大きく影響か/東大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいて、世界中でさまざまな誤情報が拡散した。ワクチンの有効性や安全性に関する内容も多く、これらの誤情報がワクチン忌避につながったことが多くの先行研究で報告されている。東京大学国際高等研究所新世代感染症センターの古瀬 祐気氏と東北大学大学院医学系研究科の田淵 貴大氏の研究グループは、ワクチンに関する誤情報が、日本における新型コロナワクチン接種率およびCOVID-19による死亡者数に及ぼした影響について、数理モデルを用いた反実仮想シミュレーションによって解析した。その結果、誤情報対策による接種率の変動よりも、ワクチン導入のタイミングが、死亡者数抑制により大きな影響を与えた可能性が示された。本結果はVaccine誌2025年6月20日号に掲載。

FUS-ALSの治療、jacifusenが有望/Lancet

 融合肉腫(fused in sarcoma:FUS)の病原性の変異体に起因する筋萎縮性側索硬化症(FUS -ALS)において、FUS pre-mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であるjacifusenは、安全で有効性が期待できる治療薬となる可能性があることが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのNeil A. Shneider氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月22日号で報告された。  研究グループは、FUS-ALSの治療におけるjacifusenの安全性、薬物動態、バイオマーカー、臨床データ、病理所見などの評価を目的に、医師主導型の多施設共同非盲検症例集積研究を行った(ALS Associationなどの助 融合肉腫(fused in sarcoma:FUS)の病原性の変異体に起因する筋萎縮性側索硬化症(FUS -ALS)において、FUS pre-mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であるjacifusenは、安全で有効性が期待できる治療薬となる可能性があることが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのNeil A. Shneider氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月22日号で報告された。

軽症~中等症COVID-19、40種の薬物療法を比較/BMJ

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する40種の薬物療法のうち、ニルマトレルビル/リトナビルとレムデシビルは入院を減少させる可能性が高く、コルチコステロイド全身投与とモルヌピラビルは、この2剤ほどではないが同様の効果を有する可能性があり、アジスロマイシンなどは、症状の解消までの時間を短縮する可能性が高いことが、カナダ・McMaster UniversityのSara Ibrahim氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年5月29日号に掲載された。

胃がん周術期、FLOTにデュルバルマブ上乗せでEFS改善(MATTERHORN)/ASCO2025

 欧米において、化学療法FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)は切除可能な胃がんにおける術前術後の標準治療だが、再発率は依然として高い水準にある。胃がんにおける免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、切除不能例において化学療法との併用で承認されているが、術前術後療法では承認されていない。  MATTERHORN試験は切除可能な胃がん患者を対象に、術前術後療法としてFLOTにICIであるデュルバルマブ上乗せの有用性をみた試験である。

統合失調症とうつ病における幻聴の違いは

 統合失調症および統合失調症様疾患では、4人に 3人以上の患者が幻聴を経験しているのに対し、うつ病では、6%の患者に幻聴が認められると報告されている。この2つの疾患における幻聴の鑑別は、診断および予後予測において重要である。インド・Dr D.Y. Patil Medical CollegeのTahoora Ali氏らは、統合失調症とうつ病における幻聴の特徴を比較した。Industrial Psychiatry Journal誌2025年1~4月号の報告。  対象は、3次医療の精神科センターの入院患者より抽出された統合失調症およびうつ病患者110例。社会人口統計学的情報、臨床的特徴に関連する情報、幻聴評価尺度の特徴を含む本検討のために設計されたプロフォーマを用いて、評価を行った。