日本語でわかる最新の海外医学論文|page:858

妊婦の抗てんかん薬服用、自然流産と関連なし/BMJ

 妊娠中に抗てんかん薬治療を受けることと自然流産のリスク増大との間に関連はみられず、抗てんかん薬使用と死産との関連も分析データがわずかではあったが確認できなかったことが、デンマーク・オーフス大学のBodil Hammer Bech氏によるレジストリベースの研究の結果、報告された。妊娠中の抗てんかん薬服用については、先天奇形との関連が認められることが報告されている。しかし、同服用と自然流産および死産のリスクとの関連についてはほとんど報告されていなかった。BMJ誌オンライン版2014年8月21日号掲載の報告より。

降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA

 心血管疾患高リスクの高血圧患者の血圧管理について、家庭血圧(自己モニタリング)と降圧薬の自己調整投与を組み合わせた管理は、外来受診時に血圧を測定し医師が投薬を調整する通常ケアによる管理と比較した結果、12ヵ月時点の収縮期血圧は前者のほうが低下したことが示された。英国・オックスフォード大学のRichard J. McManus氏らが行った無作為化試験TASMIN-SRの結果、報告された。これまでに同自己管理手法の有用性は報告されていたが、高リスク患者を対象としたデータは報告されていなかった。JAMA誌2014年8月27日号掲載の報告より。

統合失調症患者の感情は損なわれていない

 これまで、統合失調症では感情プロセスが障害されていることが示されていた。しかし、それら障害が認知障害によるものかについては不明であった。米国・Nathan Kline InstituteのFabien Tremeau氏らは、統合失調症患者では損なわれているとされる感情の刺激について健常対照との比較を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年8月23日号の掲載報告。

皮膚の構造や組成も人種間で異なる

 英国・マンチェスター大学のAbigail K. Langton氏らは、皮膚の構造および組成の鍵となる決定要素について検討を行った。その結果、個々人の地理的系譜の違いにより根本的な皮膚の構造および皮膚組成に違いがあることが明らかになった。これまでの研究では、地理的系譜の検討は主として皮膚の色素沈着に焦点が当てられ、皮膚の全般的な形態構造や真皮と真皮表皮接合部(DEJ)の組成についての報告はほとんどなかったという。British Journal of Dermatology誌2014年8月号(オンライン版2014年6月18日号)の掲載報告。

高所得国は心血管リスク高いが発症少ない/NEJM

 心血管リスクは、低所得国が最も低く高所得国が最も高いにもかかわらず、実際の心血管イベント発生率や致死率は、高所得国が最低で低所得国が最高であることが明らかになった。背景として、高所得国では予防的薬物治療や血行再建術の実施率が高いことがあることも判明したという。カナダ・ハミルトン総合病院のSalim Yusuf氏らが行った17ヵ国、約16万人を対象とした検討の結果、判明した。NEJM誌2014年8月28日号掲載の報告より。

メタ解析、引用されても活かされず/BMJ

 メタ解析の結果が、その後の研究デザインに活かされているケースは比較的少ないことが明らかにされた。後続試験の7割以上がメタ解析について引用しているものの、試験デザインは引用のない試験と同様だったという。スイス・ジュネーブ大学病院のCeline Habre氏らが、プロポフォール注射の疼痛予防に関する無作為化試験について、2000年に発表されたメタ解析の前後の試験を対象に行った、システマティックレビューの結果、明らかにした。BMJ誌2014年8月26日号掲載の報告より。

高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-238

高齢者では若年成人と比較して、インフルエンザワクチン接種後に誘導される抗体価が低いと報告されている。そこで米国では、2009年に通常の4倍量の抗原を含む高用量インフルエンザワクチンが、65歳以上の高齢者を対象に認可された。高用量ワクチン接種により高い抗体価が得られることは報告されていたが、インフルエンザ様疾患の発症を減らすことができるかどうかはわかっていなかった。

SSRI依存による悪影響を検証

 セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)関連依存症の発生が増大しているが、その発生は低率だとみなされており、また多種薬剤依存症患者における実質的な影響は明らかになっていない。緊急救命部門に搬送された多種薬剤依存症患者を対象とした検討から、SRIの曝露が、セロトニン症候群および人工呼吸器装着のリスク増大と有意に関連していることが明らかにされた。フランス国立保健医学研究所(INSERM)のSebastien Beaune氏らが報告した。Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology誌オンライン版2014年8月22日号の掲載報告。

抗PD-1抗体は卵巣がんの新たな治療となるか

 卵巣がんは婦人科がん死亡の第1位であり、罹患率は8,000人/年、死亡者4,500人/年と年々増加している。2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、京都大学医学部附属病院 産科婦人科の濱西 潤三氏は「抗PD-1抗体(ニボルマブ)を用いた卵巣がんに対する第II相医師主導治験」 と題し、自施設での臨床試験の結果を紹介した。

高血圧治療は個々のリスク因子合併を考慮した“トータルバスキュラーマネージメント”が重要(解説:桑島 巌 氏)-237

日本動脈硬化学会によるガイドラインでは、高脂血症の薬物治療開始基準を一律に決定するのではなく、性、年齢、血圧、糖尿病の有無など血管系リスク層別化を考慮した治療目標を設定すべきことが示されている。これは、これまでのメタ解析で、血管合併症のリスクの高い症例ほど薬物治療による絶対的リスク減少が大きいことが明らかになっているからである。

大腸がん死亡率、切除腺腫のリスクで差/NEJM

 大腸腺腫切除後の大腸がん長期死亡率について、一般集団と比較して、切除した腺腫が低リスクであった患者では低下がみられた一方、高リスクであった患者は高かったことが明らかにされた。ノルウェー・オスロ大学のMagnus Lphiberg氏らが1,273例を中央値7.7年間追跡し報告した。腺腫切除後には大腸内視鏡によるサーベイランスが広く推奨されているが、同患者における大腸がん死亡についてはこれまでほとんど報告されていなかった。NEJM誌2014年8月28日号掲載の報告より。

ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM

 新規開発中のLCZ696は、ACE阻害薬エナラプリル(商品名:レニベースほか)よりも、駆出率低下の心不全を有する患者の死亡および入院リスクの抑制に優れることが示された。英国・グラスゴー大学のJohn J.V. McMurray氏らPARADIGM-HF研究グループが二重盲検無作為化試験の結果、報告した。LCZ696は、新規クラスのアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI:ネプリライシン阻害薬sacubitril[AHU377]とARBバルサルタンからなる)で、高血圧症および駆出率保持の心不全を有する患者を対象とした小規模試験において、ARB単剤よりも血行動態および神経ホルモンに関する効果が大きかったことが示されていた。NEJM誌オンライン版2014年8月30日号掲載の報告より。

慢性心不全治療のパラダイムシフト:ACE阻害薬はもはや標準薬ではない!(解説:平山 篤志 氏)-236

慢性心不全患者では、代償機転としてレニン・アンジオテンシン(RA)系が活性化され血管収縮による後負荷や水分貯留による前負荷が増加している。一方で、Na利尿ペプチド、アドレノメジュリンなどのペプチドがネプリライシンにより分解され、その血管拡張作用が減弱し、後負荷増加となる。このような代償機転の持続が慢性心不全の悪化につながることから、RA系阻害に加え、ネプリライシン阻害が心不全の予後改善につながると期待された。

アルツハイマーの早期発見が可能となるか

 アルツハイマー病(AD)は最も一般的な神経変性疾患で、認知症の主因である。灰白質病変に加えて白質の変化が、疾患発生における重要な病理学的特徴として認識されている。ADの病因として白質異常の重要性に対する認識は高まっているものの、白質変性の原因は依然として不明であった。米国コロンビア大学のLyndsey E Collins-Praino氏らは、AD剖検例の白質中可溶性Aβ濃度をコントロールと比較し、ADの病因としての白質変性の原因を検討した。その結果、AD患者では白質中の可溶性Aβ-42濃度およびAβ-40濃度がコントロールと比べ高値であり、白質Aβペプチドが灰白質の原線維アミロイド病変とは独立して蓄積することを報告した。この所見から著者は、「灰白質萎縮に先立つ白質変性がADの早期のマーカーとなる可能性がある。また、白質減少を引き起こすメカニズムとリスクファクターを把握できれば、ハイリスク例の特定と疾患形成過程における早期介入に役立つであろう」とまとめている。Acta Neuropathologica Communications誌オンライン版2014年8月17日号の掲載報告。