日本語でわかる最新の海外医学論文|page:712

電子処方箋によって処方薬受け取り率が向上?

 処方薬の過小使用は臨床転帰不良と関連しており、米国では過小使用の多くは1次ノンアドヒアランス、すなわち、患者が処方薬を受け取っていないことが原因であるという。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のAdewole S. Adamson氏らは、医療の協調性を高めエラーを減少させると評価されている電子処方箋に着目し、1次ノンアドヒアランスへの影響について、後ろ向き研究で調べた。

医師の退職時期は? 早期退職の理由は?

 医師の退職計画と時期は、患者・病院・医療システムにとって重要である。無計画な早期の退職や遅い退職は、患者の安全性と人員配置の両方で悲惨な結果を招く。カナダ・トロント大学のMichelle Pannor Silver氏らは、医師の退職時期やプロセスにおける以下の4つの問い、(1)医師はいつ退職するのか?(2)なぜ早期退職するのか?(3)なぜ退職を遅らすのか?(4)どのような戦略が医師の定着や退職計画を促進するのか?について、既報の系統的レビューによって調査した。Human resources for health誌2016年11月号に掲載。

腎移植後のステロイド早期離脱は可能か/Lancet

 腎移植後のステロイド投与からの早期離脱のための、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(Rabbit-ATG、商品名:サイモグロブリン)またはバシリキシマブ(商品名:シムレクト)による抗体療法の、有効性と安全性に関する検討結果が報告された。免疫学的リスクが低い患者を対象に、移植後1年間の抗体療法後のステロイド早期中断を評価した結果、急性拒絶反応の予防効果はRabbit-ATGとバシリキシマブで同等であり、抗体療法後のステロイド早期中断は免疫抑制効果を低下せず、移植後糖尿病の発症に関する優位性が示された。ドイツ・アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクのOliver Thomusch氏らが、615例を対象に行った非盲検多施設共同無作為化対照試験の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2016年11月18日号掲載の報告。

新しい戦略に基づく認知症新薬開発ものがたり(解説:岡村 毅 氏)-621

臨床神経学の新しい時代の幕開けを告げる論文かもしれない。もっとも筆者は精神科医であり、神経学者からみれば素人みたいなものだ。東大にいると優秀な神経学者と親しく交流する機会が多く、彼らの頭脳明晰さには舌を巻く。きちんと解説できるだろうか…。一方で、万人に対してわかりやすく書くことは私の得意とする部分だと思い引き受けた。読み返すとやや劇画調だがご容赦いただきたい。

双極性障害、摂食障害合併はとくに注意が必要

 肥満は精神障害ではないが、DSM-5では、肥満と精神症候群との強い関連性を認めている。双極スペクトラム障害(BSD)やむちゃ食い障害(Binge Eating Disorder:BED)は、肥満患者において頻繁にみられる精神障害である。イタリア・University Magna Graecia of CatanzaroのCristina Segura-Garcia氏らは、肥満患者における、これら併存疾患に伴う精神病理学的相違と特有の接触行動を調査した。Journal of affective disorders誌2017年1月号の報告。

腹部大動脈瘤、手術の閾値の差が死亡率の差に関連するのか/NEJM

 イングランドでは、未破裂腹部大動脈瘤の手術施行率が米国の約半分で、大動脈瘤径が米国より5mm以上大きくなってから手術が行われ、瘤破裂率は2倍以上、瘤関連死亡率は3倍以上であることが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のAlan Karthikesalingam氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年11月24日号に掲載された。欧州血管外科学会議(ESVS)のガイドラインは、動脈瘤径が男性で55mm、女性では50mmを超えたら介入を考慮すべきとしているが、介入の至適な閾値が不確実であるため、実臨床ではかなりのばらつきがみられ、55mm未満での手術施行率は国によって6.4~29.0%の幅があるという。

緩和ケアの患者・介護者それぞれへの効果は?/JAMA

 末期患者への緩和ケアは、患者QOLや症状負担を改善する可能性があるが、介護者の転帰への効果は明確ではないことが、米国・ピッツバーグ大学のDio Kavalieratos氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22・29日号に掲載された。重篤な病態の患者のQOL改善は国際的な優先事項とされ、緩和ケアの焦点は、QOLの改善と、患者および家族の苦痛の軽減に置かれている。米国では、65%以上の病院が緩和ケアの入院プログラムを持ち、地域および外来ベースの緩和ケア提供モデルも増加しているが、実際の効果はよく知られていないという。

血栓除去術の鎮静管理は、全麻に比べ早期の神経学的改善をもたらさない(解説:中川原 譲二 氏)-620

Heidelberg大学病院神経科のSchonenberger氏らは、血栓除去術が行われた前方循環の急性虚血性脳卒中患者において、鎮静管理群と全身麻酔管理群を無作為に比較したところ、鎮静管理は24時間後の神経学的改善をもたらさなかったことを示した。この研究結果から、鎮静管理の利点を支持しないと結論した(JAMA誌オンライン版2016年10月26日号掲載の報告)。

なぜ必要? 4番目のIFNフリーC肝治療薬の価値とは

 インターフェロン(IFN)フリーのジェノタイプ1型C型肝炎治療薬として、これまでにダクラタスビル/アスナプレビル(商品名:ダクルインザ/スンベプラ)、ソホスブビル/レジパスビル(同:ハーボニー)、オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル(同:ヴィキラックス)の3つが発売されている。そこに、今年3月の申請から半年後の9月に承認されたエルバスビル/グラゾプレビル(同:エレルサ/グラジナ)が、11月18日に発売された。治療効果の高い薬剤があるなかで、新薬が発売される価値はどこにあるのか。11月29日、MSD株式会社主催の発売メディアセミナーにて、熊田 博光氏(虎の門病院分院長)がその価値について、今後の治療戦略とともに紹介した。

小児/青年ICU患者の急性腎障害、重症度と死亡リスク/NEJM

 小児集中治療室に入院中の重症小児・若年成人において、急性腎障害(AKI)の発症頻度は高く、死亡率増加など予後不良と関連している。米国・シンシナティ小児病院のAhmad Kaddourah氏らによる、国際共同前向き疫学研究(Assessment of Worldwide Acute Kidney Injury, Renal Angina, and Epidemiology:AWARE)の結果、明らかになった。結果を踏まえて著者は、「ICU入室時には急性腎障害の系統的な検査が必要である」と強調している。小児および若年成人におけるAKIの疫学的特徴は、これまで単施設および後ろ向き研究で示されてきたが、AKIの定義や重症度などが異なり一貫した結果は得られていなかった。NEJM誌オンライン版2016年11月18日号掲載の報告。

薬物有害事象による救急受診、原因薬剤は?/JAMA

 米国において2013~14年の薬物有害事象による救急外来受診率は、年間1,000例当たり4件で、原因薬剤として多かったのは抗凝固薬、抗菌薬、糖尿病治療薬、オピオイド鎮痛薬であった。米国疾病予防管理センターのNadine Shehab氏らの分析の結果、明らかになった。米国では、2010年の「患者保護および医療費負担適正化法(Patient Protection and Affordable Care Act :PPACA)」、いわゆるオバマケアの導入により、国家的な患者安全への取り組みとして薬物有害事象への注意喚起が行われている。結果を受けて著者は、「今回の詳細な最新データは今後の取り組みに役立つ」とまとめている。JAMA誌2016年11月22・29日号掲載の報告。

意外に多い重病小児急性腎障害の発症―尿量チェックが大事―(解説:浦 信行 氏)-619

従来より、種々の疾患で重病の状態にある患者は急性腎障害(AKI)を合併しやすく、これが生命予後を脅かすとの指摘がなされている。重病小児におけるAKIの生命予後に関する研究は2つあり、生命予後予測に関して一定の有用性が示されていたが、単一施設後ろ向き観察研究のみに限られていた。本研究は国際的な大規模前向き疫学研究であり、集中治療室(ICU)での治療を要する重病小児~若年成人の4分の1以上の26.9%がAKIを発症し、11.6%の重症のAKIでは死亡リスクの増加を招くことがNEJM誌に報告された。

アルツハイマーやうつ病の予防、コーヒーに期待してよいのか

 観察研究によると、コーヒーは2型糖尿病、うつ病、アルツハイマー病と逆相関するが、虚血性心疾患とは逆相関しないとされている。米国2015年食事ガイドラインにおいて、コーヒーは保護効果がある可能性が記載されている。短期的試験では、コーヒーは、多くの血糖特性に対し中和的な影響を及ぼすが、脂質やアディポネクチンを上昇させるといわれている。中国・香港大学のMan Ki Kwok氏らは、大規模かつ広範な遺伝子型の症例対照研究および横断研究に適応された2つのサンプルのメンデル無作為群間比較を用いて、遺伝的に予測されるコーヒー消費による2型糖尿病、うつ病、アルツハイマー病、虚血性心疾患とその危険因子を比較した。Scientific reports誌2016年11月15日号の報告。