日本語でわかる最新の海外医学論文|page:28

AIサポートにより前眼部疾患の診断精度が向上か

 AI活用が医療現場にもたらす効果についての研究が活発化している。そのような中、白内障や角膜疾患の診断用に設計されたディープラーニングモデル「CorneAI」のサポートにより、角膜炎などの前眼部疾患に対する眼科医の診断精度が向上したという研究結果が報告された。CorneAI自体の診断精度は86%だったが、そのサポートにより、眼科医の精度がCorneAIのベースを超えて向上したという。福島県立医科大学附属病院眼科学講座の前原紘基氏、筑波大学附属病院眼科の上野勇太氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月11日掲載された。  人工知能(AI)は画像診断(CT、MRI、病理画像など)と親和性が高く、研究開発が活発化している分野の一つだ。眼の画像診断は、様々な前眼部疾患の診断と管理に重要な役割を果たしている。研究グループは、前眼部のカラー写真5,270枚を教師データとして、AIベースの分類ツールであるCorneAIを開発した。教師データには、細隙灯顕微鏡で撮影された、正常、感染性浸潤、非感染性浸潤、瘢痕、沈着/ジストロフィー、水疱性角膜症、水晶体混濁、腫瘍性病変、緑内障発作の9つのカテゴリーの画像が含まれた。

PCI後DAPT例の維持療法、クロピドグレルvs.アスピリン/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に標準的な期間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を完了した、虚血性イベントの再発リスクが高い患者の維持療法において、アスピリン単剤療法と比較してクロピドグレル単剤療法は、3年時の主要有害心・脳血管イベント(MACCE)が少なく、なかでも心筋梗塞のリスクが有意に減少し、出血の発生率は両群で差がなく、上部消化管イベントのリスクはクロピドグレル群で低いことが、韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのKi Hong Choi氏らSMART-CHOICE 3 investigatorsが実施した「SMART-CHOICE 3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年3月30日号で報告された。

3枝病変へのFFRガイド下PCIは有効か/Lancet

 左冠動脈主幹部以外の冠動脈3枝病変を有する患者の治療では、冠動脈バイパス術(CABG)と比較してゾタロリムス溶出ステントを用いた冠血流予備量比(FFR)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、5年間の追跡調査において、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカムの発生に関して有意差はみられないが、心筋梗塞と再血行再建術の頻度は高いことが、米国・スタンフォード大学のWilliam F. Fearon氏らが実施した「FAME 3試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2025年3月30日号に掲載された。

HR+早期乳がんにおける年齢と内分泌療法の中断期間、再発リスクの関係/JCO

 ホルモン受容体陽性(HR+)早期乳がんにおいて、内分泌療法(ET)のアドヒアランス欠如は、若年患者の生存率の低さの潜在的な原因の1つと考えられるが、ETのアドヒアランス改善が生存にもたらすベネフィットは明確ではない。フランス・パリ・シテ大学のElise Dumas氏らによるフランスの全国コホート研究の結果、とくに34歳以下の患者において厳格なET継続戦略によって得られる生存ベネフィットが示され、ETのアドヒアランス改善のための個別化戦略の必要性が示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年3月5日号への報告。

ポリープの家族歴、頻度・人数が多いほど大腸がんリスク増加

 近年の研究により、家族内での大腸ポリープ診断の頻度が大腸がんリスクと関連していることが示されている。ドイツ・ハイデルベルク大学のYuqing Hu氏らは親族におけるポリープ診断の頻度と、大腸がんの全体的なリスクおよび早期発症リスクとの関連性を評価するための大規模研究を行った。本試験の結果はGastroenterology誌オンライン版2025年1月10日号に掲載された。  研究者らは、スウェーデンの大規模な家族性がんデータセット(1964~2018年)の1,167万6,043例を対象とし、親族における大腸ポリープ診断の頻度と大腸がんリスクの関連を調査した。親族のポリープ診断歴を「1回のみ」と「複数回」に分けて解析を行った。大腸がんと診断、移住、死亡、または2018年末のいずれか早い時点まで追跡した。

うつ病やPTSDに対するブレクスピプラゾール+抗うつ薬併用療法〜前臨床試験のシステマティックレビュー

 ブレクスピプラゾールは、抗うつ薬と併用することで、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、セロトニン、ドパミン神経伝達物質に対し相補的な作用を示し、さらに強力な効果を得られる可能性が示唆されている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのMalaak Brubaker氏らは、ブレクスピプラゾールと抗うつ薬の併用療法に関する前臨床試験からどのような情報が得られているかを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年2月28日号の報告。

水中エアロビクスは減量とウエスト周囲径の減少に効果あり

 水中エアロビクス(有酸素運動)により、過体重や肥満の人の体重が2.7kg程度減り、ウエスト周囲径も2.75cm細くなったとする研究結果が報告された。論文の上席著者である国立釜慶大学校(韓国)のJongchul Park氏は、「10週間以上の水中エアロビクスによる介入により、試験参加者の体重とウエスト周囲径が大幅に減少した」と述べている。この研究の詳細は、「BMJ Open」に3月11日掲載された。  Park氏らは、論文データベースを用いて、過体重または肥満の人を対象に水中エアロビクスが人間の身体計測値(体重、ウエスト周囲径など)と体組成に与える影響を、他の介入や何もしない場合と比較したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施し、10件を選出(対象者の総計286人)。これらのRCTのデータを抽出した後、メタアナリシスを行い、過体重や肥満の人における水中エアロビクスの効果を評価した。

睡眠不足の看護師は感染症に罹患しやすい

 夜間勤務(以下、夜勤)の影響で睡眠不足を感じている看護師は、風邪やその他の感染症への罹患リスクの高いことが新たな研究で明らかになった。研究グループは、「シフト勤務が睡眠の質に与える影響が看護師の免疫系に打撃を与え、感染症にかかりやすくさせている可能性がある」と述べている。Haukeland大学病院(ノルウェー)睡眠障害コンピテンスセンターのSiri Waage氏らによるこの研究結果は、「Chronobiology International」に3月9日掲載された。  この研究は、ノルウェーの看護師1,335人(女性90.4%、平均年齢41.9歳)を対象に、睡眠時間、睡眠負債、およびシフト勤務の特徴と自己報告による感染症の罹患頻度との関連を検討したもの。これらの看護師は、過去3カ月間における睡眠時間、睡眠負債、シフト勤務、および感染症(風邪、肺炎/気管支炎、副鼻腔炎、消化器感染症、泌尿器感染症)の罹患頻度について報告していた。

バターを植物油に置き換えると死亡リスク17%減

 バターがあれば何でもおいしくなる、というのは料理人の格言だが、バターは健康には良くないことが新たな研究で示された。バターの摂取量が多い人は少ない人に比べて早期死亡リスクが高いが、オリーブ油のような植物性の油を主に使っている人は早期死亡リスクが低いことが明らかになったという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のYu Zhang氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に3月6日掲載されると同時に、米国心臓協会(AHA)の生活習慣科学セッション(EPI/Lifestyle Scientific Sessions 2025、3月6~9日、米ニューオーリンズ)でも発表された。

大腸がん死亡率への効果、1回の大腸内視鏡検査vs.2年ごとの便潜血検査/Lancet

 大腸がん検診への参加率は、大腸内視鏡検査より免疫学的便潜血検査(FIT)のほうが高く、大腸がん関連死亡率について、本研究で観察された参加率に基づくとFITベースのプログラムは大腸内視鏡検査ベースのプログラムに対し非劣性であることが確認された。スペイン・バルセロナ大学のAntoni Castells氏らCOLONPREV study investigatorsが、スペインの8地域における3次医療機関15施設で実施したプラグマティックな無作為化比較非劣性試験「COLONPREV試験」の結果を報告した。大腸内視鏡検査とFITは、平均的なリスク集団(大腸がんの既往歴または家族歴のない50歳以上の人々)における一般的な大腸がんスクリーニング戦略である。中間解析でも、FIT群は大腸内視鏡検査群よりスクリーニング参加率が高いことが示されていた。Lancet誌オンライン版2025年3月27日号掲載の報告。

死亡リスクの高いPAH患者に対するsotaterceptの有効性/NEJM

 最大耐量の基礎療法を受けている死亡リスクの高い肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において、sotaterceptの上乗せはプラセボと比較し、全死因死亡、肺移植またはPAH悪化による24時間以上の入院の複合リスクを低下させることが、フランス・パリ・サクレー大学のMarc Humbert氏らによる第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ZENITH試験」の結果で示された。sotaterceptは、世界保健機関(WHO)機能分類クラスIIまたはIIIのPAH患者の運動耐容能を改善し、臨床的悪化までの時間を遅らせるが、進行したPAHで死亡リスクの高い患者に対するsotaterceptの追加投与の有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年3月31日号掲載の報告。

子供も食事の早食いは肥満に関係する/大阪大

 「早食い」は太る原因といわれている。この食べる早さと肥満の相関は、子供にも当てはまるのだろうか。この課題に対し、大阪大学有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の高阪 貴之氏らの研究グループは、わが国の小学生1,403人の咀嚼能力および咀嚼習慣と肥満との関連を検討した。その結果、早食いや咀嚼能力の低下は、男子で肥満と関連していた。この結果は、Journal of Dentistry誌2025年3月8日号のオンライン版に掲載された。  研究グループは、大阪市の9~10歳の児童1,403人を対象に、咀嚼習慣を質問紙で評価し、咀嚼能力は色変化するチューインガムを用いて測定した。肥満は、身長と体重に基づく過体重の割合で判定し、多変量ロジスティック回帰分析を行い、咀嚼習慣と咀嚼能力を説明変数とし、性別、DMFT指数、ヘルマン歯発育段階を調整した肥満のオッズ比を算出した。

高感度CRP、心不全の悪化予測に有用か/日本循環器学会

 日本人の高齢化に伴い、国内での心血管疾患(CVD)の発生が増加傾向にある。このCVD発生には全身性の炎症マーカーである高感度C反応性蛋白(hsCRP)の上昇が関連しており、これが将来の心血管イベントの発症予測にも有用とされている。しかし、その関連性は主に西洋人集団で研究されており、日本人でのデータは乏しい状況にある。そこで今回、小室 一成氏(国際医療福祉大学 副学長/東京大学大学院医学系研究科 先端循環器医科学講座 特任教授)が日本人集団における全身性炎症と心血管リスクの関係を評価し、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies1において発表した。

高齢者の治療抵抗性うつ病に対して最も効果的な治療は?〜メタ解析

 高齢者のうつ病は、十分に治療されていないことがある。2011年の高齢者治療抵抗性うつ病(TRD)の治療に関するシステマティックレビューでは、プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)が1件のみ特定された。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAlice Jane Larsen氏らは、高齢者のTRD治療に対する有効性に関するエビデンスを統合し、更新レビューを行うため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Mental Health誌2025年3月3日号の報告。  対象研究は、55歳以上のTRD患者に対する治療を調査したRCT。治療抵抗性の定義は、1回以上の治療失敗とした。2011年1月9日〜2023年12月10日(2024年1月7日に検索を更新)に公表された研究を、電子データベース(PubMed、Cochrane、Web of Science)よりシステマティックに検索した。メタ解析により、寛解率を評価した。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias(RoB)2ツールを用いた。エビデンスの評価には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)基準を用いた。

乳がんサバイバーは多くの非がん疾患リスクが上昇/筑波大

 日本の乳がんサバイバーと年齢をマッチさせた一般集団における、がん以外の疾患の発症リスクを調査した結果、乳がんサバイバーは心不全、心房細動、骨折、消化管出血、肺炎、尿路感染症、不安・うつの発症リスクが高く、それらの疾患の多くは乳がんの診断から1年以内に発症するリスクが高いことを、筑波大学の河村 千登星氏らが明らかにした。Lancet Regional Health-Western Pacific誌2025年3月号掲載の報告。  近年、乳がんの生存率は向上しており、乳がんサバイバーの数も世界的に増加している。乳がんそのものの治療や経過観察に加え、乳がん以外の全般的な健康状態に対する関心も高まっており、欧米の研究では、乳がんサバイバーは心不全や骨折、不安・うつなどを発症するリスクが高いことが報告されている。しかし、日本を含むアジアからの研究は少なく、消化管出血や感染症などの頻度が比較的高くて生命に関連する疾患については世界的にも研究されていない。そこで研究グループは、日本の乳がんサバイバーと一般集団を比較して、がん以外の12種類の代表的な疾患の発症リスクを調査した。

鼻の軟骨で膝の損傷を修復できる可能性

 ランニングやスキーなどスポーツをしているときの転倒により生じた膝の損傷は、選手が一線から退かざるを得なくするだけでなく、将来的に関節炎のリスクを高める可能性がある。しかし新たな研究で、そのような転倒で損傷することはほとんどない鼻が、膝修復の鍵になる可能性を示唆する研究結果が報告された。研究グループは、鼻の中で左右の気道を隔てる壁となっている鼻中隔軟骨から作られた人工軟骨を、最も複雑な膝の損傷の修復にも使用できるとしている。バーゼル大学(スイス)生物医学部長のIvan Martin氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に3月5日掲載された。

精液の質が良い人は寿命が長い?

 動いている精子の総数が多い人は、少ない人に比べて生殖能力が高いだけでなく、寿命も長い可能性のあることが、新たな研究で示唆された。50年にわたり7万8,000人以上の男性を追跡調査した結果、総運動精子数(1TMSC)が多い男性は、少ない男性に比べて3年近く長生きする可能性が示唆されたという。コペンハーゲン大学病院(リグスホスピタレット、デンマーク)のLaerke Priskorn氏らによるこの研究は、「Human Reproduction」に3月5日掲載された。  世界保健機関(WHO)の基準に基づくと、サンプル中の精子の少なくとも42%が効果的に泳ぐことができる場合、精子の運動性は正常だと判断される。研究グループは、精子濃度が1mL当たり500万個未満の場合は、男性不妊症と関連付けられていると説明している。

鉄欠乏心不全、カルボキシマルトース第二鉄vs.プラセボ/JAMA

 鉄欠乏性貧血を伴う心不全患者において、カルボキシマルトース第二鉄はプラセボと比較して、心不全による初回入院または心血管死までの期間を有意に短縮せず、心不全による入院総数も低減しなかった。ドイツ・Deutsches Herzzentrum der ChariteのStefan D. Anker氏らが行った多施設共同無作為化試験「FAIR-HF2 DZHK05試験」で、試験全コホートまたはトランスフェリン飽和度(TSAT)<20%の患者集団いずれにおいても同様の結果が示された。JAMA誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。

PADを有する2型DM、セマグルチドは歩行距離を改善/Lancet

 症候性末梢動脈疾患(PAD)を有する2型糖尿病(DM)患者において、セマグルチドはプラセボと比較して歩行距離の改善が大きかったことが示された。米国・コロラド大学のMarc P. Bonaca氏らSTRIDE Trial Investigatorsが、第IIIb相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「STRIDE試験」の結果を報告した。PADは世界中で2億3,000万人超が罹患しており、有病率は高齢化により上昇していて、2型DMを含む心代謝性疾患の負担を増している。PAD患者に最も早期に発現し、最も多くみられ、最も支障を来す症状は機能低下と身体的障害であるが、機能や健康関連QOLを改善する治療法はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2025年3月29日号掲載の報告。

未治療多発性骨髄腫の新しい治療選択肢:パラダイムシフトは起こるか

 2025年3月27日、サノフィは未治療の多発性骨髄腫の治療薬として、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンによるVRd療法にイサツキシマブ(商品名:サークリサ(R))を追加する4剤併用療法の適応追加承認を取得したCD38受容体を標的としたイサツキシマブに関するメディアセミナーを開催した。  今回のセミナーでは、イサツキシマブの適応拡大の意義や新たな治療戦略について、芹澤 憲太郎氏(近畿大学 医学部 血液・膠原病内科)と鈴木 憲史氏(日本赤十字社医療センター アミロイドーシスセンター)が解説した。