日本語でわかる最新の海外医学論文|page:228

コロナ5類移行後の院内感染対策の現状は?/医師1,000人アンケート

 5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが「5類感染症」に移行となったが、医療機関ではその前後の過渡期に、これまで継続してきたさまざまな院内感染対策の緩和について議論されていた。5類に移行して約1ヵ月経過し、新規コロナ感染者は全国的に増加傾向にあり、院内感染対策をどこまで緩和するか、今なお難しい判断が迫られている。  病床の有無やコロナ診療状況など条件の異なる医療機関において、院内感染対策の現状や、抱えている課題を把握するため、病院を20床以上、診療所を20床未満と定義し、病院522人、診療所502人の会員医師1,024人を対象に『病院・診療所別 新型コロナ5類移行後の院内感染対策アンケート』を5月30日に実施した。

心臓移植後の生存率、心停止ドナー心は脳死ドナー心に非劣性/NEJM

 心停止後に体外非虚血性灌流を用いて蘇生させた心臓の移植は、脳死後冷保存された心臓を用いた標準移植と比較して、移植後6ヵ月時のリスク補正後生存率に関して非劣性であることが示された。米国・デューク大学医療センターのJacob N. Schroder氏らが多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。心停止ドナーから得られた心臓の移植の有効性と安全性を、脳死ドナーから得られた心臓の移植と比較したデータには限りがあった。NEJM誌2023年6月8日号掲載の報告。

mCRPCの1次治療、エンザルタミド+talazoparibでrPFS改善/Lancet

 転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の1次治療において、PARP阻害薬talazoparibとアンドロゲン受容体阻害薬エンザルタミドとの併用療法は、標準治療のエンザルタミド単独療法と比較し、臨床的に意味のある統計学的に有意な画像上の無増悪生存期間(rPFS)の改善をもたらしたことが示された。米国・ユタ大学のNeeraj Agarwal氏らが、26ヵ国(北米、欧州、イスラエル、南米、南アフリカ、アジア太平洋地域)の223施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TALAPRO-2試験」の結果を報告した。PARPとアンドロゲン受容体活性の両方を阻害することは、相同組換え修復(HRR)に関与するDNA損傷修復遺伝子変異の有無にかかわらず、抗腫瘍効果が得られる可能性があった。Lancet誌オンライン版2023年6月4日号掲載の報告。

日本人の炭水化物摂取量と死亡リスクは男女で逆の関係に~J-MICC研究

 これまで、炭水化物や脂質の摂取量と死亡リスクの関連を検討した研究において、一貫した結果が得られていない。そこで、田村 高志氏(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学分野 講師)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)に参加した8万1,333人を対象として、炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した。その結果、男性では炭水化物の摂取量が少ないと死亡リスクが高くなり、女性では炭水化物の摂取量が多いと死亡リスクが高くなる傾向がみられた。本研究結果は、The Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月2日号に掲載された。

個別化がんワクチン+ペムブロリズマブ併用の結果に新たな期待/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)とMerck(米国とカナダ以外ではMSD)は、2023年6月5日付のプレスリリースで、切除された高リスク悪性黒色腫患者に対する個別化がんワクチンmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用療法について、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させたと発表。本結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告された。  なお、本試験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)については、2022年12月、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用治療で、ペムブロリズマブ単独と比較し再発または死亡のリスクが44%減少した、と発表されている。

HR+/HER2-転移乳がんへのSG、より長い追跡期間でも有用性持続(TROPiCS-02)/ASCO2023

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、sacituzumab govitecan(SG)を医師選択治療(TPC)と比較した第III相TROPiCS-02試験において、SGが無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、HER2低発現例においても改善がみられたことがすでに報告されている。今回、探索的解析として、より長い追跡期間(12.75ヵ月)におけるPFSとOS、さらにHER2低発現におけるPFSとOSの解析結果を、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

日本人慢性片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性と安全性

 慢性片頭痛(CM)患者に対し、抗CGRPモノクローナル抗体製剤フレマネズマブによる治療は有効であり、効果発現が早く、忍容性が良好であることが臨床試験で示されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、日本人CM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、2つの臨床試験(Japanese and Korean CM Phase 2b/3、HALO CM Phase 3)のサブグループ解析を実施した。著者らは、「サブグループ解析の限界にもかかわらず一貫した結果が得られており、日本人CM患者に対するフレマネズマブの有効性および忍容性が裏付けられた」と報告している。Journal of Pain Research誌2023年4月20日号の報告。

認知度の低い重症筋無力症の啓発にむけて/アルジェニクスジャパン

 6月は「重症筋無力症」の啓発月間とされている。この疾患の社会的認知度を高めるために、アルジェニクスジャパンは、6月7日にメディア向けセミナーを都内で開催した。  セミナーでは、専門医による疾患解説のほか、医療者、患者、患者会、タレントの渡辺 満里奈氏によるトークセッションや同社が疾患啓発に制作したマンガ動画などが紹介された。同社は、全身型重症筋無力症治療薬の抗FcRn抗体フラグメント製剤エフガルチギモド アルファ(商品名:ウィフガート)を製造販売している。 

膵臓がん、FOLFIRINOXの術前補助療法の有効性を検証(NORPACT-1)/ASCO2023

 切除可能な膵臓がんに対するFOLFIRINOXの術前補助療法の有効性に疑問を投げかけられた。Labori KJ.氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表したNORPACT-1の試験の結果である。  切除可能膵臓がんの標準治療は、完全切除とその後の補助化学療法である。化学療法としてはFOLFIRINOXが多く使われる。一方、切除可能膵臓がんでは、術前補助化学療法のメリットも報告されている。Labori氏らは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの12の施設で、多施設無作為化第II相試験を行い、切除可能膵臓がんにおける、FOLFIRINOXの術前補助療法と標準治療である術後補助療法を比較している。

複数流産歴のある遺伝性血栓症女性への低分子ヘパリン、出生率を改善せず/Lancet

 2回以上の流産歴があり、遺伝性血栓性素因による特発性血栓症の確定診断を受けた女性に対し、低分子ヘパリン(LMWH)投与は生児出生率の増加に結び付かないことが示された。英国・ウォーリック大学のSiobhan Quenby氏らが、欧米5ヵ国の病院で行った国際非盲検無作為化対照試験「ALIFE2試験」の結果を報告した。抗凝固療法は、不育症および遺伝性血栓性素因を有する女性の流産回数と有害妊娠アウトカムを減らす可能性が示唆されており、研究グループは、同女性集団におけるLMWH vs.標準治療を評価した。結果を踏まえて著者は、「不育症および遺伝性血栓性素因を有する女性にLMWHの使用は推奨しない。また、不育症の女性に遺伝性血栓性素因のスクリーニングを行わないことを推奨する」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年6月1日号掲載の報告。

早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJM

 早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者に対し、axicabtagene ciloleucel(アキシカブタゲン シロルユーセル、axi-cel)療法による2次治療は、標準治療と比べて全生存期間(OS)を有意に延長したことが確認された。米国・テキサス大学M. D.アンダーソンがんセンターのJason R. Westin氏らが、359例を対象に行った第III相無作為化比較試験「ZUMA-7試験」の長期追跡評価(期間中央値47.2ヵ月時点)の結果を報告した。axi-celは、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法製品で、ZUMA-7試験の主要アウトカムの解析において、無イベント生存(EFS)を有意に延長したことが示されており、長期アウトカムのデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月5日号掲載の報告。

DMR(変性性僧帽弁閉鎖不全症)に対するMitraClipのリアルワールドデータ(解説:上妻謙氏)

重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する経カテーテル僧帽弁クリップ術(MitraClip)は、低侵襲で僧帽弁の逆流を制御する心不全治療として定着してきた。本論文はSTS/ACC TVTレジストリーという世界を代表する米国の国家データベースの結果をまとめたリアルワールドデータである。MRは,弁尖または腱索、乳頭筋の器質的異常によって生じる1次性MR(器質性MR)と、左室や左房の拡大または機能不全に伴って生じる2次性MR(機能性MR)に大別される。1次性MRのうち弁尖や腱索、乳頭筋などの変性によるDegenerative MRの症例の成績をまとめている。2014年1月から2022年6月まで6万883例にMitraClip術が施行された。このうち1万9,088例が今回の解析対象となった。

高齢NSCLCのICI治療に化学療法の併用は必要か?(NEJ057)/ASCO2023

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と化学療法の併用の有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、日本国内の58施設における75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)が実施された。その結果、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)の発現率を増加させた。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、植松 真生氏(がん・感染症センター 都立駒込病院)が発表した。

併存症のある患者での注意点~高齢者糖尿病診療ガイドライン2023/糖尿病学会

 5月11日~13日に城山ホテル鹿児島をメイン会場に第66回 日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。  高齢者の糖尿病患者では、糖尿病とは別に併存症があるケースが多い。では、糖尿病以外の疾病もある高齢者の糖尿病患者の診療はどうあるべきであろう。  本稿では、「シンポジウム10 より良い高齢糖尿病ケアを目指して」より「高齢者糖尿病の合併症と併存症」(杉本 研氏 [川崎医科大学総合老年医学])の口演をお届けする。  2023年5月に『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2023』(以下「ガイドライン」と略す)が上梓され、今回の口演は、このガイドラインの内容を踏まえて構成されている。

転移乳がんへのADC後のADC投与、交差耐性の可能性/ASCO2023

 米国では転移を有するHR+/HER2-およびトリプルネガティブ(TN)乳がんにsacituzumab govitecan(SG)が、またHER2低発現乳がんにトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が承認され、複数の抗体薬物複合体(ADC)が適応となる患者が増えている。しかし、ADCは抗体標的やペイロードにより交差耐性の可能性があるため、最適な投与順序は不明である。今回、転移を有するHER2-乳がんに対して調査したところ、2剤目のADCに対して交差耐性を示す患者がいる一方、1剤目と抗体標的が異なる場合など、2剤目でも持続的な奏効を示す患者もいることがわかった。米国・Massachusetts General Hospital Cancer CenterのRachel Occhiogrosso Abelman氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告した。

自殺念慮の検出に有用な兆候は

 自殺の兆候を有するうつ病患者は、プライマリケアの臨床現場で見逃されることが少なくない。久留米大学の藤枝 恵氏らは、初診から6ヵ月間の中年期プライマリケア患者における自殺念慮を伴ううつ病の予測因子を調査した。その結果、起床時の疲労感、睡眠状態不良、職場の人間関係の問題は、プライマリケアにおける自殺念慮を伴ううつ病の予測因子である可能性が示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年4月17日号の報告。

急性期脳梗塞へのtirofiban、アスピリンより優れた改善/NEJM

 大・中脳血管の閉塞を伴わない急性期脳梗塞患者の治療において、糖蛋白IIb/IIIa受容体阻害薬tirofibanは低用量アスピリンと比較して、非常に優れたアウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア0または1)が達成される可能性が高く、安全性には大きな差はないことが、中国・陸軍軍医大学のWenjie Zi氏らが実施した「RESCUE BT2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年6月1日号に掲載された。  RESCUE BT2試験は、中国の117施設で実施された二重盲検ダブルダミー無作為化試験であり、2020年10月~2022年6月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(中国国家自然科学基金の助成を受けた)。

加糖飲料の多飲は2型DM患者の死亡・心血管病リスクを増加させるとの警鐘に耳を傾けよう!―(解説:島田俊夫氏)

一般集団においての加糖飲料の過剰摂取が、がん、心血管病リスクおよび死亡を高めるとの報告も数多くみられる。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のLe Ma氏らが、2つの大規模前向きコホート試験、Nurses’ Health Study (女性看護師が対象:年齢30~55歳)とHealth Professionals Follow-up Study(男性医療従事者が対象:年齢40~75歳)の参加者中、ベースラインおよび追跡期間中に2型DMと診断された男女1万5,486例を対象に、飲料別摂取と死亡およびCVD(Coronary Vascular Disease:心血管病)アウトカムの関連を調査し、飲料摂取量については食品摂取頻度質問票を使って評価し、2~4年ごとに更新された情報を加味して解析を行った。

20年間で同じ統合失調症患者に対する薬物治療はどう変化したか

 最近の薬理学的疫学データによると、第2世代抗精神病薬(SGA)単剤療法で治療されている患者の割合が増加していると報告されているが、同じ患者を長期間にわたって分析した研究は、これまでほとんどなかった。獨協医科大学の古郡 規雄氏らは、同じ統合失調症患者に対する薬物療法が20年間でどう変化したかを検討するため、20年間のデータが入手可能な患者を対象とし、レトロスペクティブに評価を行った。その結果、同じ統合失調症患者であっても、20年間でゆっくりではあるが確実に第1世代抗精神病薬(FGA)からSGAへ切り替わっていることが明らかとなった。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月17日号の報告。

LDL-Cが高い人ほど心筋梗塞の予後良好!? 

 低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)高値であると、冠動脈疾患(CVD)の発症や死亡のリスクが高いことが知られている。しかし、急性冠症候群患者のLDL-C低値が死亡リスクを上昇させることを示唆する観察研究の結果が複数報告されており、「LDL-Cパラドックス」と呼ばれている。そこで、スウェーデン・ウプサラ大学のJessica Schubert氏らの研究グループは、初発の心筋梗塞で入院した患者のうち、スタチン未使用であった6万3,168例を対象としたデータベース研究を実施した。その結果、LDL-C高値の患者は死亡リスクが低く、非心血管疾患による入院リスクも低かった。本研究結果は、Journal of Internal Medicine誌オンライン版2023年5月31日号に掲載された。