日本語でわかる最新の海外医学論文|page:202

膀胱がんリスク、仕事での立位/歩行は座位より5割減~日本人集団

 身体活動と膀胱がんリスクとの関連については、アジア人集団では一貫していない。今回、大阪大学のHang An氏らが日本人の大規模コホートで検討したところ、とくに男性において、レクリエーションスポーツへの参加や仕事での立位/歩行の身体活動が膀胱がんリスクと逆相関していたことが示された。Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年10月6日号に掲載。  本研究は集団ベースの前向きコホート研究で、がん/心血管疾患の既往のない40~79歳の日本人5万374人について自己記入式質問票で身体活動に関する情報を取得し解析した。Cox比例ハザードモデルを用いて、潜在的交絡因子を調整後の膀胱がん発症のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。

eplontersen、遺伝性ATTRvアミロイドーシスに有効/JAMA

 ポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型(ATTRv)アミロイドーシス患者の治療において、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるeplontersenはプラセボと比較して、血清トランスサイレチン濃度を有意に低下させ、ニューロパチーによる機能障害を軽減し、良好なQOLをもたらすことが、ポルトガル・Centro Hospitalar Universitario de Santo AntonioのTeresa Coelho氏らが実施した「NEURO-TTRansform試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月28日号で報告された。   NEURO-TTRansform試験は、過去の臨床試験のプラセボ群(historical placebo)との比較を行う非盲検単群第III相試験であり、2019年12月~2021年6月に日本を含む15ヵ国40施設で患者のスクリーニングを実施した(米国・Ionis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

慎重に評価する必要がある論文。さらなるフォローアップが望まれる(解説:野間重孝氏、下地顕一郎氏)

本研究(ILUMIEN IV試験)はOCTガイドとアンギオガイドのPCIを比較、2年間追跡したものである。これまでIVUSで証明されてきた優位性をOCT単独で検証した大規模なRCTであり、18ヵ国80施設が参加、2,487症例が組み入れられた。  結果は、OCTガイド群でminimum stent areaが大きく、ステント血栓症が少なかったものの、TVFでは差がみられなかった、というものである。

HIVの流行終結を目指す取り組みとは

 HIV感染症は、医療の進歩により、もはや死に至る病気ではなくなった。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、2030年までにHIV流行を終結する目標を発表しており、HIV流行終結に向けた対策は世界的に推進されている。一方、日本においては、HIV/エイズの適切な予防・検査・治療の推進に加え、誤解の解消と正しい情報の提供が喫緊の課題とされている。2023年10月5日、「2030年までのHIV流行の終結に向けた道筋とは」をテーマとした、ギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーが開催された。

日本における軽度認知障害とアルツハイマー病の疾病負荷

 軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病の予防や管理対策の開発には正確な疫学データが必要とされるが、日本ではこのようなデータが不足している。九州大学の福田 治久氏らは、日本における新規発症のMCIまたはアルツハイマー病患者の疾病負荷と進行について調査を行い、急速に高齢化が進む国においてMCIやアルツハイマー病は優先度の高い疾患であり、本結果は日本におけるこれらの疾病負荷や進行について重要な初の考察を提供するものである、とまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年9月9日号の報告。

月1回のノンアル飲料提供で飲酒量は減らせるか?/筑波大

 本邦では、男性40g/日以上、女性20g/日以上の純アルコール摂取量を生活習慣病のリスクを上昇させる飲酒量と定義している。しかし、この飲酒量で飲酒する人の割合を2019年と2010年で比較すると、男性では変化がなく、女性では有意に増加したと報告されている。そのため、さらなる対策が求められている。そこで、吉本 尚氏(筑波大学医学医療系 准教授)らの研究グループは、アルコール依存症の患者を除いた週4回以上の飲酒をする20歳以上の成人を対象として、ノンアルコール飲料の提供によりアルコール摂取量を減らすことが可能か検討した。その結果、ノンアルコール飲料の提供によりアルコール摂取量が減少し、提供期間終了後8週間においてもその効果が持続した。本研究結果は、BMC Medicine誌2023年10月2日号に掲載された。

エフガルチギモド、一次性免疫性血小板減少症に有効/Lancet

 一次性免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)は後天性の自己免疫疾患で、血小板抗原を標的とする自己抗体がその一部を媒介しており、ほかの疾患との明確な関連のない孤立性血小板減少症(血小板数<100×10 9/L)を特徴とする。患者は、出血イベント(まれに生命を脅かす)や疲労を呈し、QOLの低下を招く場合もある。米国・ジョージタウン大学のCatherine M. Broome氏らは「ADVANCE IV試験」において、ファーストインクラスの抗胎児性Fc受容体(FcRn)抗体フラグメント製剤エフガルチギモドが、プラセボと比較して、本症の慢性期の患者における血小板数の持続的臨床効果について有意に優れ、忍容性も良好で有害事象の多くは軽度~中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年9月28日号に掲載された。

睡眠時無呼吸へのCPAP、MACEイベントの2次予防に有効か/JAMA

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と心血管疾患の双方を有する患者の治療において、持続陽圧呼吸療法(CPAP)はこれを行わない場合と比較して、主要有害心脳血管イベント(MACCE)の2次予防に全般的には有効ではないものの、CPAPのアドヒアランスが良好な患者ではMACCEのリスクを低減することが、スペイン・リェイダ大学のManuel Sanchez-de-la-Torre氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年10月3日号で報告された。  研究グループは、OSAに対するCPAPによる治療がMACCEのリスクに及ぼす影響を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(スペイン・カルロス三世保健研究所などの助成を受けた)。

アセトアミノフェンの禁忌解除で添付文書改訂、処方拡大へ/厚労省

 アセトアミノフェン含有製剤の添付文書について、2023年10月12日、厚生労働省が改訂を指示し、「重篤な腎障害のある患者」「重篤な心機能不全のある患者」「消化性潰瘍のある患者」「重篤な血液の異常のある患者」及び「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者」の5集団に対する禁忌解除を行った。添付文書における禁忌への記載が、成書やガイドラインで推奨される適切な薬物治療の妨げになっていたことから、今年3月に日本運動器疼痛学会が禁忌解除の要望を厚生労働省に提出していた。

双極性障害のリスク基準を満たす患者の長期的な発症率

 双極性障害の発症を予測することができれば、予防的治療が容易になる可能性がある。リスク評価尺度の中でもBipolar At-Risk(BAR)は、臨床コホートにおいて最初の1年間での双極性障害発症を予測するうえで有用であることが示唆されているが、BARが長期的な発症と関連しているかは、明らかになっていない。オーストラリア・メルボルン大学のAswin Ratheesh氏らは、10~13年間のフォローアップ期間を通じて、BARと双極性障害発症との関連を評価した。その結果、メンタルヘルスに問題を抱えている人のうち、BAR基準を満たす人は、そうでない人と比較し、10年以上にわたり双極性障害の発症リスクが有意に高いことが確認された。JAMA Network Open誌2023年9月5日号の報告。

高血圧治療補助アプリで8mmHgも降圧、治療効果のある患者とは

 CureApp HT高血圧治療補助アプリ(以下、治療アプリ)が保険収載、処方が開始してから1年が経過した。現在までの治療効果について、株式会社CureAppが「スマート降圧療法RWD発表記者会見」において、全国の医療機関で処方された治療アプリに入力された血圧データの解析結果を説明した。  本データ解析によると、全体集団における12週後の収縮期血圧の変化は起床時では8.8mmHg、就寝前では8.5mmHgの低下がみられた。これについて同社取締役の谷川 朋幸氏は「治験で検証されていなかった65歳以上の患者を含む、幅広い患者集団において薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによるスマート降圧療法の効果が示された」とコメント。また、薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによる実臨床での降圧データの公開は世界初である。

減量目的のGLP-1作動薬、膵炎・腸閉塞・胃不全麻痺のリスク増加か/JAMA

 GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として用いられるが、体重減少の目的にも用いられている。糖尿病患者において消化器有害事象のリスクが増加していることが報告されており、2023年9月22日に米国食品医薬品局(FDA)よりセマグルチドについて、腸閉塞の注意喚起が追加された。しかし、GLP-1受容体作動薬の体重減少効果を検討した臨床試験はサンプル数が少なく、追跡期間が短いため、これらの有害事象を収集する試験デザインにはなっていない。

eGFR低下とアルブミン尿、腎不全や心血管疾患と関連/JAMA

 CKD Prognosis Consortiumの114コホートからの個人データを対象としたメタ解析において、血清クレアチニン(Cr)値に基づく推定糸球体濾過量(eGFRcr)あるいは血清Cr値と血清シスタチンC値に基づくeGFR(eGFRcr-cys)の低下、および尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)の上昇は、腎不全や心血管疾患、入院等を含む10の有害アウトカムの発生率上昇と関連していることが示された。米国・ニューヨーク大学のMorgan E. Grams氏らCKD Prognosis Consortiumの執筆グループが報告した。米国では成人の約14%が慢性腎臓病(CKD)(eGFR低下またはアルブミン尿)に罹患しているという。しかしながらeGFRの低さやアルブミン尿の重症度と有害アウトカムとの関連性については不明であった。JAMA誌2023年10月3日号掲載の報告。

治療抵抗性うつ病、esketamine点鼻薬vs.クエチアピン/NEJM

 治療抵抗性うつ病に対し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)との併用において、esketamine点鼻薬はクエチアピン徐放剤と比較して8週時の寛解率が有意に高かった。ドイツ・Goethe University FrankfurtのAndreas Reif氏らが、24ヵ国171施設で実施された第IIIb相無作為化非盲検評価者盲検実薬対照試験「ESCAPE-TRD試験」の結果を報告した。治療抵抗性うつ病(一般的に、現在のうつ病エピソード中に2つ以上の連続した治療で有効性が得られないことと定義される)は、寛解率が低く再発率が高い。治療抵抗性うつ病患者において、SSRIまたはSNRIとの併用投与下で、クエチアピン増強療法と比較したesketamine点鼻薬の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌2023年10月5日号掲載の報告。

腫瘍径の小さいER+/HER2-乳がんへの術後ホルモン療法は必要か

 マンモグラフィ検査の普及により、腫瘍径の小さな乳がんの検出が増加した。エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)のT1a/bN0M0乳がんにおける術後内分泌療法(ET)の必要性は明らかでない。広島大学の笹田 伸介氏らは同患者における術後ETの有効性を評価、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月9日号に報告した。  本研究では、2008年1月~2012年12月にJCOG乳がん研究グループ42施設で手術を受けたER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者のデータを後ろ向きに収集した。術前補助全身療法を受けた患者とBRCA陽性患者は除外された。主要評価項目は遠隔転移の累積発生率で、両側検定が用いられた。

クロザピン治療中の治療抵抗性統合失調症の喫煙患者、再発リスクにバルプロ酸併用が影響

 喫煙習慣とバルプロ酸(VPA)併用がクロザピンによる維持療法の臨床アウトカムに及ぼす影響を調査した研究は、これまでなかった。岡山県精神科医療センターの塚原 優氏らは、クロザピンを投与している治療抵抗性統合失調症患者の退院1年後の再発に対する喫煙習慣とVPA併用の影響を調査するため、本研究を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年9月8日号の報告。  日本国内の2つの3次精神科病院において入院中にクロザピン投与を開始し、2012年4月~2022年1月に退院した治療抵抗性統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。再発の定義は、退院1年間の精神疾患増悪による再入院とした。喫煙習慣とVPA併用が再発に及ぼす影響の分析には、多変量Cox比例ハザード回帰分析を用いた。喫煙習慣とVPA併用との間の潜在的な相互作用を調査するため、サブグループ解析を行った。

NSAIDなどを服用している高齢者、運転に注意

 認知機能が正常な高齢者の服用薬と、長期にわたる運転パフォーマンスとの関連を調査した前向きコホート研究の結果、抗うつ薬や睡眠導入薬、NSAIDsなどを服用していた高齢者は、非服用者と比べて時間の経過とともに運転パフォーマンスが有意に低下していたことを、米国・ワシントン大学のDavid B. Carr氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月29日号掲載の報告。  米国運輸省と米国道路交通安全局は、90種類以上の薬剤が高齢ドライバーの自動車事故と関連していることを報告している。しかし、自動車事故リスクの上昇が薬剤の副作用によるものなのか、治療中の疾患によるものなのか、ほかの薬剤や併存疾患によるものなのかを判断することは難しい。そこで研究グループは、認知機能が正常な高齢者において、特定の薬剤が路上試験における運転パフォーマンスと関連しているかどうかを前向きに調査した。

急性脳卒中への遠隔虚血コンディショニングは有効か?/JAMA

 急性脳卒中患者において、四肢虚血と再灌流の一過性サイクルによる遠隔虚血コンディショニング(RIC)を、病院到着前から病院到着後に継続して行っても、90日時点での機能的アウトカムは改善しなかった。デンマーク・オーフス大学病院のRolf Ankerlund Blauenfeldt氏らが、1,500例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、いつくかの有望な前臨床および臨床データが示されてはいたが、RICが急性脳卒中に対して有効な治療法かどうかは依然として不明であった。JAMA誌2023年10月3日号掲載の報告。

ステロイド漸減中再発のリウマチ性多発筋痛症、サリルマブが有効/NEJM

 グルココルチコイド漸減中にリウマチ性多発筋痛症が再発した患者において、サリルマブ+prednisone漸減投与は、プラセボ+predonison漸減投与に比べ、持続的寛解の達成とグルココルチコイド累積投与量の減少に有意な有効性を示した。米国・コーネル大学のRobert F. Spiera氏らが、合計118例を対象に行った第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Sarilumab in Patients with Polymyalgia Rheumatica (SAPHYR)試験」の結果を報告した。リウマチ性多発筋痛症の患者の半数以上が、グルココルチコイド漸減中に再発する。先行研究では、インターロイキン(IL)-6の阻害がリウマチ性多発筋痛症の治療で臨床的に有用である可能性が示されていた。

未治療の転移のある膵管腺がん患者におけるNALIRIFOX対nab-パクリタキセルおよびゲムシタビン―無作為化非盲検第III相試験(解説:上村直実氏)

膵がんは消化器領域で最も予後が悪く、罹患者数と死亡者数が増加している唯一の悪性腫瘍である。治癒可能なStage0/Iの初期段階で早期発見されるのは全体の2〜3%にすぎず、大半は外科的切除不能の進行がんで診断される。さらに、手術可能な段階で発見され治癒切除術が施行された場合であっても、再発が多く術後の5年生存率は20%程度であり、遠隔転移を認める場合はわずか2%以下とされている。したがって、現時点では、根治可能な初期がんの早期発見と切除不能膵がんに対する有効な化学療法の開発が喫緊の課題となっている。