日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1157

キャリアスクリーニングの本来意義を問う

ゴーシェ病(GD)は常染色体劣性遺伝疾患でアシュケナジ系ユダヤ人で比較的頻度が高く、1995年以降、イスラエルおよび全世界のアシュケナジ系ユダヤ人を対象にキャリアスクリーニングが行われているが、現在論争の的になっている。キャリアによく見られる1型GDは、大抵は無症候性であり効果的な治療法も存在するからだ。しかし、イスラエルのヘブライ大学ハダーサメディカルスクールのShachar Zuckerman氏らは「キャリアスクリーニングの目的は、重症で治療不能の遺伝病を未然に防ぐことにある。影響を受けた小児出生の前にリスクにさらされているカップルを確認すること、そしてそのようなカップルに子供に影響が及ぶことを教示しオプションを提示することも目的の1つである」と述べる。JAMA誌9月19日号より。

研修医の75%が学術誌論文の統計解析について全く理解できていない

医師は医学文献を正しく理解するのに必要な統計的知識をどれぐらい持ち得ているのだろうか。内科研修医を対象とする統計方法および調査結果を正しく解釈できるか否かに関するサーベイが、エール大学医学部内科学Donna M. Windish氏らによって行われた。JAMA誌9月5日号の報告から。

向精神薬「リタリン」、うつ病の適応を取り下げる方針

 9月18日に東京都が不適正処方の疑いで新宿区のクリニックを医療法に基づき、立ち入り検査をしてマスコミ報道で話題となった向精神薬「リタリン」(一般名:塩酸メチルフェニデート)について、製造販売元のノバルティスファーマ社(東京都港区)は、適応症から難治性・遷延性うつ病を除外する方針を固めた。リタリンは1958年にうつ病治療薬として販売され、現在は「難治性うつ病」「遷延性うつ病」、日中突然眠くなる睡眠障害「ナルコレプシー」の効能が承認されている。

薬物溶出ステントの安全性はベアメタルステントと同等か:メタ解析

(超)遠隔期のステント内血栓が問題となっている薬物溶出ステント(DES)だが、死亡率はベアメタルステント(BMS)と同等とするメタ解析がLancet誌9月15日号に掲載された。ドイツUniversity of BernのChristoph Stettler氏らが、ネットワークメタ解析と呼ばれる手法を用いて解析した結果だ。

STAT4と関節リウマチや全身性エリテマトーデスのリスク

 関節リウマチは重要な遺伝的要因をもつ慢性炎症性疾患である。疾患に対する感受性は、染色体2q上の領域と関連付けられてきた。特に、Jakキナーゼアとともにサイトカインシグナルの伝達経路となるSTAT 分子は7種類あることがわかっており、Th1反応を起こすIL-12に反応するSTAT4 の役割の解明に注目が集まっている。 アメリカ国立衛生研究所関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所のElaine F. Remmers氏らは、すでに関節リウマチと関連づけられている染色体2q領域中の13の候補遺伝子の内外にある一塩基多型(SNP)を調べた。NEJM誌9月6日号の報告から。

エポエチンαの有効性と安全性に関する知見

重症患者によくみられる貧血に対して施行される赤血球輸血療法は、予後不良と関連している。そこでHoward L. Corwin氏らエポ治験グループは、「遺伝子組換え型ヒトエリスロポエチン(エポエチンα)の投与が赤血球輸血の必要性を減少させる」との仮説を立て、前向き臨床試験を行った。NEJM誌9月6日号の報告より。

血漿ホモシステイン濃度低下は慢性腎臓病と末期腎不全の死亡率低下に有効か

血漿ホモシステイン濃度の上昇が死亡率と血管疾患の危険因子であることは慢性腎臓病患者の観察研究で明らかになっている。ホモシステイン濃度を下げる葉酸とビタミンB群の投与が、慢性腎臓病と末期腎不全患者の予後を改善するか否かをテーマに無作為化対照試験が実施され、その結果がJAMA誌9月12日号に掲載された。

医学教育研究における提供資金量と論文引用回数は相関する

医学教育研究の方法論上の弱点は資金の不足にあるとよく言われるが、資金と研究の質との相関は証明されていない。教育研究の質を測定する指標の開発とともに、研究資金と研究の質の関係を評価することを目的とした、学術誌に掲載された論文の質と提供された資金量についての調査が行われた。JAMA誌9月5日号より。

グリタゾン系薬剤は糖尿病合併心不全患者の予後増悪?:体系的レビュー

慢性心不全患者ではHbA1c低値が予後増悪の予知因子と報告されているが、予後を増悪させているのはチアゾリジン誘導体(グリタゾン系薬剤)で、メトホルミンではそのようなおそれが少ないことが示唆された。Institute of Health Economics(カナダ)のDean T. Eurich氏らがBMJ誌8月30日付けHPにて早期公開論文として報告した(その後本誌では9月8日号にて掲載)。

血糖値自己測定を活かすには医療従事者の協力が必要

BMJ誌では7月にDiGEMスタディを掲載し、2型糖尿病患者による血糖値自己測定の有用性に疑問を呈したが、今回はその背景にある患者心理を調査した Aston University(英国)のElizabeth Peel氏らによる研究結果で、8月30日付けHPにて早期公開された(その後本誌では9月8日号にて掲載)。患者は自己測定の結果をどう利用するかを十分に教育されていないようである。

うつ病は健康状態を悪化する一番の要因:WHO報告

うつ病は世界中で重要な公衆衛生問題であり主要な病因の1つとなっている。また他の慢性疾患との共存で健康状態を悪化させることは、少数ではあるが先行研究として伝えられてきた。 Lancet誌9月8日号に掲載された本報告は、世界保健機構(WHO)のSaba Moussavi氏らによる世界健康調査(World Health Survey:WHS)からの、うつ病の健康状態への影響を分析した結果。

高リスク糖尿病患者に対する積極的降圧療法の有用性が示される:ADVANCE試験

心血管系高リスクあるいは既往を認める糖尿病患者では、血圧に関わりなくACE阻害薬+利尿薬を用いた降圧により血管系イベントが減少することが、 Lancet誌9月8日号に掲載されたADVANCE試験の結果より明らかになった。本研究は論文掲載に先立ち、欧州心臓病学会(ESC)において報告されている。