日本語でわかる最新の海外医学論文|page:999

うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」

 近年、うつ病に対するn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)の影響に関するさまざまな報告が行われている。しかし、n-3系脂肪酸の中でもEPA(イコサペント酸エチル)またはDHA(ドコサヘキサエン酸エチル)がどのような影響を及ぼすかは不明なままである。イランのMozaffari-Khosravi氏らは、軽度から中等度のうつ病患者に対する補助薬物療法としてn-3系脂肪酸の投与が有用であるかを検討するため、EPAとDHAの有用性を比較する単施設ランダム化プラセボ対照並行群間比較試験を実施した。Eur Neuropsychopharmacol誌オンライン版2012年8月18日号の報告。

肺移植、喫煙ドナー肺はレシピエントの予後を改善するか?

 喫煙ドナー肺の移植を受けた患者の移植後3年間の生存率は、非喫煙ドナー肺の移植を受けた患者に比べ不良だが、非喫煙ドナー肺の提供を待ち続けるよりは良好なことが、英国・バーミンガム大学病院のRobert S Bonser氏らの検討で示された。肺移植の臓器選択基準では、当初、ガス交換機能がほぼ完全な若いドナー肺のみが適応とされたが、移植治療の進歩に伴い基準が見直され、喫煙歴のあるドナー肺の移植も行われている。喫煙ドナー肺はレシピエントの生存に有害な影響を及ぼすことが懸念されるが、喫煙ドナーを除外するとドナー数が減り、移植を待つ患者の生命を脅かす可能性があるため、喫煙ドナー肺のリスクの正確な評価が求められている。Lancet誌2012年8月25日号(オンライン版5月29日号)掲載の報告。

t-PA療法後の早期アスピリン静注追加は急性虚血性脳卒中の予後を改善するか?

 アルテプラーゼ(商品名:グルトパ、アクチバシン)静注療法を施行された急性虚血性脳卒中患者に対し、再閉塞予防の目的で早期にアスピリン静注を行うアプローチは有効ではないことが、オランダ・アムステルダム大学のSanne M Zinkstok氏らが行ったARTIS試験で示された。欧米ではt-PAであるアルテプラーゼによる血栓溶解療法は、急性虚血性脳卒中に対する唯一の承認された治療法である。アルテプラーゼによる再疎通の達成後に、患者の14~34%が血小板の活性化によると考えられる再閉塞を来すが、早期に抗血小板療法を行えば再閉塞のリスクが低減し、予後も改善する可能性があるという。Lancet誌2012年8月25日号(オンライン版2012年6月28日号)掲載の報告。

難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」

 強迫性障害(OCD)は強迫観念や強迫行為を主訴とする原因不明の精神疾患であり、有病率は約2%といわれている。治療においてはSSRIを用いた薬物療法が有効であるが、治療抵抗性を示す症例も存在する。Sayyah氏らは、このような治療抵抗性OCDに対する治療選択肢としてアリピプラゾールの追加投与が有効であるかを、二重盲検ランダム化臨床試験にて検討した。Depress Anxiety誌オンライン版2012年8月29日号の報告。

細胞診で確定されない甲状腺結節、遺伝子発現分類法が評価を改善

 診断的手術によってその大半が良性と判明するものの通常の細胞診では確定されない良性の甲状腺結節について、167個の遺伝子の表現型を尺度とした新しい診断法である遺伝子発現分類法を術前検査に用いることで、診断的手術をより多く回避するよう示唆されることが、米国・ハーバードメディカルスクール/ブリガム&ウィメンズ病院のErik K. Alexander氏らによる大規模前向き検証試験の結果、明らかにされた。穿刺吸引によって評価される甲状腺結節の約15~30%は、良性なのか悪性なのかが判然とせず診断的手術となることが多い。遺伝子発現分類法は、術前リスク評価を改善することが有望視されていた。NEJM誌2012年8月23日号(オンライン版2012年6月25日号)掲載報告より。

肥満者の2型糖尿病発症予防には肥満外科手術が有効

 2型糖尿病の発症予防について、肥満者においては肥満外科手術が通常ケアと比べて顕著に有効とみなされることが、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLena M.S. Carlsson氏らが「Swedish Obese Subjects(SOS)study」の長期追跡データを解析し報告した。減量は2型糖尿病に対し防御的に作用するが、行動変容だけで減量を維持し続けることは難しい。肥満外科手術は、2型糖尿病発症リスクが最も高い重度肥満者において、減量を維持可能な現在唯一の治療法で、多くの試験で糖尿病を軽減することが報告されている。しかし長期追跡と対照群を必要ため、予防効果について報告した試験はほとんどなかったという。NEJM誌2012年8月23日号掲載報告より。

急性期の新たな治療選択となりうるか?非定型抗精神病薬ルラシドン

 現在、国内でも開発が進められている非定型抗精神病薬 ルラシドン。本剤の統合失調症の急性増悪期に対する有効性および安全性を評価した試験結果がPsychopharmacology (Berl)誌オンライン版2012年8月19日号で発表された。大日本住友製薬 小笠氏らは「ルラシドンは統合失調症の急性増悪期に有効であり、体重や脂質代謝への影響も少ない」と報告した。

診療科の垣根を越えNon Cancer Pain治療の啓発

 医師を対象とした慢性疼痛学習プログラムJ-PAT(Japan Pain Assessment and Treatment/企画・運営:ヤンセンファーマ)が、8月25〜26日開催された。このプログラムは医師の慢性疼痛に対する薬物療法の理解を深め、患者さんの治療満足度向上を目的に全国主要7都市で行われており、今回は大阪国際会議場を会場として実施された。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(13)〕 心房細動診療のピットフォール―心房細動で出血死させないために。CKDに配慮したリスク評価を!

 非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う心原性塞栓による脳梗塞は、中大脳動脈などの主要動脈の急性閉塞による発症が多いため、アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞に比べて梗塞範囲が大きく、救命された場合でも後遺症による著しいADLの低下を招きやすい。周術期の肺血栓塞栓症同様に、予防が重要である。

クラリスロマイシン製剤、ヘリコバクター・ピロリ感染症に係る適応症追加を申請

 大正製薬株式会社とアボット ジャパン株式会社は8月31日、両社がそれぞれ日本において製造・販売している「クラリス錠200」と「クラリシッド錠200mg」(クラリスロマイシン製剤)について、プロトンポンプ阻害薬(4成分・5ブランド)及びアモキシシリン水和物(一般名、3ブランド)を用いた3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ感染症に係る、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の適応症を追加する申請を、9社共同で厚生労働省に行ったと発表した。

エビリファイ、うつ病・うつ状態の補助療法の効能申請

 大塚製薬株式会社は3日、抗精神病薬「エビリファイ」 (一般名:アリピプラゾール)に関し、大うつ病性障害患者を対象にアリピプラゾール補助療法の臨床試験を日本で実施し、有効性及び安全性が確認されたことから、日本で初めてうつ病・うつ状態の補助療法に対する効能追加の承認申請を行ったと発表した。

アスリートが経験する脳震盪はうつ病リスクを増加させる

アスリートの多くが経験する脳震盪。脳震盪は、頭部に激しい衝撃を受けた直後に起こる一過性の脳障害で、めまいや頭痛、意識喪失などが短期的に発現する。中等度以上の脳震盪では、脳が損傷を受ける可能性も高く、障害が残ったり、死亡に至るケースもある。Kerr氏らは、脳震盪が将来のうつ病発症の独立した危険因子であることを、Am J Sports Med誌オンライン版2012年8月24日号で報告した。

『ボストン便り』(第41回)「世界の主流としての当事者参画」

 星槎大学共生科学部教授 ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー 細田 満和子(ほそだ みわこ) 2012年8月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 紹介:ボストンはアメリカ東北部マサチューセッツ州の州都で、建国の地としての伝統を感じさせるとともに、革新的でラディカルな側面を持ち合わせている独特な街です。また、近郊も含めると単科・総合大学が100校くらいあり、世界中から研究者が集まってきています。そんなボストンから、保健医療や生活に関する話題をお届けします。 (ブログはこちら→http://blog.goo.ne.jp/miwakohosoda/)

総頸動脈内膜中膜複合体厚、従来の心筋梗塞・脳卒中予測モデルを改善せず

 総頸動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)を予測モデルに加えても、従来のフラミンガムリスクスコアの予測モデルに比べ、初回心筋梗塞または脳卒中の10年発症予測能は改善しないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのHester M. Den Ruijter氏らが、14件のコホート試験について行ったメタ解析の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。CIMTが心血管イベントの絶対リスクを予測するリスクスコアを改善することに関しては、研究結果に一貫性がなかった。

STEMIへのPCI、バイオリムス溶出性ステントで主要有害心血管イベントリスクが半減

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、バイオリムス溶出性ステントを用いた場合、べアメタルステントを用いた場合と比べて、標的血管に関連する再梗塞などの有害心血管イベント発生率がおよそ半減することが明らかにされた。スイス・ベルン大学病院のLorenz Raber氏らが、約1,200例の患者について行った前向き無作為化比較試験「COMFORTABLE AMI(Comparison of Biolimus Eluted From an Erodible Stent Coating With Bare Metal Stents in Acute ST-Elevation Myocardial Infarction)」の結果、報告したもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(12)〕 起死回生となるかフルベストラント

 転移性乳がんに対するフルベストラントはこれまで一つもポジティブデータは存在しなかった。フルベストラントは現在の乳がんホルモン治療薬の標準治療であるタモキシフェンと違って、エストロゲンアゴニスト作用のない、pure anti-estrogen薬剤として有用性が期待された薬剤であったが、これまで行われてきた第3相比較試験ではことごとく失敗に終わってきた。

年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大

 認知症は転倒原因のひとつである。しかし、認知症高齢者における転倒リスクの研究はまだ十分になされていない。浜松医科大学 鈴木氏らは介護老人保健施設に入所している認知症高齢者における転倒の発現率、リスクファクターの検証を試みた。Am J Alzheimers Dis Other Demen誌9月号(オンライン版8月7日号)の報告。