日本語でわかる最新の海外医学論文|page:559

薬代をフードスタンプみたいにしたら継続服用するようになるかな?(解説:後藤信哉氏)-999

米国は医薬分業が徹底していた。日本では皆保険制度の成立時には院内調剤のほうが多かった。米国の医療保険は「医療」コストを保証しても「薬剤」コストは別立てのことが多い。日本は院内調剤の伝統から薬剤費も健康保険の対象になっている。米国の保険は費用後払いなので、受診すれば最初に安くない受診コストを100%患者が負担する。その後、処方箋を持って薬局に行って、またまた安くない処方薬を購入する。日本では医師の処方どおり長期服薬している人が普通だが、病気のうえにクリニックに受診して、さらに薬局に行き、いずれも出費となると薬局受診を脱落する人が多い可能性がある。低所得の人にフードスタンプが配られたことがあった。公の寄与は汚職温床になるのは万国共通である。フードスタンプの対象となったウォルマートは大きく成長した。

ビーリンサイトは急性リンパ性白血病の再発・難治例に有効か

 世界初の二重特異性T細胞誘導抗体による免疫療法が、移植を待ち望んでいる急性リンパ性白血病患者に救いの手を差し伸べる。12月10日、「急性リンパ性白血病の治療戦略と新たな免疫療法の役割」と題して、小林 幸夫氏(国際医療福祉大学三田病院悪性リンパ腫・血液腫瘍センター副センター長)、堀部 敬三氏(名古屋医療センター臨床研究センター長小児科部長)による講演が開催された(主催:アステラス・アムジェン・バイオファーマ)。

高齢者糖尿病の食事療法、フレイルを防ぐには?

 2019年1月11~13日の3日間、第22回日本病態栄養学会年次学術集会が開催された。1日目のシンポジウム1では、演者の一人である幣 憲一郎氏(京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部 副部長)が「高齢糖尿病患者におけるサルコペニア・フレイル対策の現状と課題」について講演を行った。  日本人の平均寿命は延び続け、糖尿病患者の平均寿命もこの10年間で男女ともに約3.5歳延びている。30年前の調査と比べても、男性で8.3歳、女性で10.2歳も延びているが、現代人は単なる寿命の延命ではなく、自力で快適な生活ができる“健康寿命の延伸”を望んでいる。しかし、糖尿病患者は高齢化に伴い合併症問題が深刻化し、「その1つがサルコペニア・フレイル」と同氏は考える。

境界性パーソナリティ障害の長期臨床経過に関するメタ解析

 スペイン・バルセロナ大学のIrene Alvarez-Tomas氏らは、成人臨床患者における境界性パーソナリティ障害(BPD)の長期臨床経過に関するプロスペクティブ研究の初めてのメタ解析を実施した。European Psychiatry誌オンライン版2018年12月23日号の報告。  1990~2017年の報告をMedline、PsycINFO、PsycArticles、PubMed、Scopusよりシステマティックに検索した。包括基準は、検証済みの半構造化面接によってBPDと診断された成人患者が対象、アウトカムのプロスペクティブ評価が2つ以上、フォローアップ期間が5年以上とした。エビデンスの質は、SAQOR(Systematic Assessment of Quality in Observational Research)を用いて評価した。BPD診断から寛解、自殺完遂、うつ症状、機能の4つのアウトカムについて、混合効果法を用いてメタ解析を行った。自然経過および初回治療に関する潜在的な調整因子を検討した。

食道がんのハイブリッド低侵襲食道切除術、重大な合併症を低減/NEJM

 食道がんに対するハイブリッド低侵襲食道切除術は、開胸食道切除術に比べ術中・術後の重大な合併症の発生率が低く、3年時の全生存率および無病生存率は低下しないことが、フランス・Claude Huriez University HospitalのChristophe Mariette氏の検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年1月10日号に掲載された。ハイブリッド低侵襲食道切除術は、腹腔鏡を用いる経腹的アプローチと開胸食道切除術を組み合わせた手術法で、肺合併症が少なく、手技の再現が容易などの利点があるとされる。開胸食道切除術では、半数以上の患者で肺合併症を主とする術後合併症が認められるが、合併症に関してハイブリッド低侵襲食道切除術との比較はこれまで行われていなかった。

高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン、8年ぶりに改訂

 2018年12月28日、日本痛風・核酸代謝学会は『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(GL) 第3版』を発刊した。改訂は2010年以来8年ぶりとなる。近年、尿酸値の上昇は、痛風だけではなく、脳・心血管疾患や腎障害にも影響を及ぼすとの報告が増えているため、これらのイベント予防も目的として作成されている。

心不全に対するヒス束ペーシング vs.両心室ペーシング【Dr.河田pick up】

 ヒス束ペーシングは心臓の再同期療法(CRT)の新しい手段として注目され、実臨床でも利用されている。本研究では、ヒス束ペーシングと従来行われてきた両心室ペーシングによるCRTを急性期のクロスオーバー試験で比較し、急性期の心室興奮と血行動態を計測した。Ahran D. Arnold氏らLondonのグループによるJournal of American College of Cardiology誌オンライン版12月18日号掲載の報告。

日本におけるスボレキサントの市販後調査結果

 MSD株式会社の浅井 有子氏らは、スボレキサント錠剤の日本における市販後調査結果の報告を行った。Drugs in R&D誌オンライン版2018年12月14日号の報告。  対象は、日本におけるスボレキサント初回投与の不眠症患者。観察期間は、投与開始後6ヵ月以内とした。医薬品の有効性および安全性に関する情報を収集した。評価期間は、2015年7月21日~2017年8月12日までとした。目標患者数は、3,428例であった。

加齢黄斑変性、死亡リスクとの関連は?

 加齢黄斑変性(AMD)は、網膜下の血管新生を未治療のまま放置すると、不可逆的な視覚障害や失明に至る。中国・中山大学のZhuoting Zhu氏らは、AMDと生存との関連を知ることは、AMDの発現機序の理解に役立つとして解析を行った。その結果、後期AMDは全死因死亡、ならびに心血管疾患とがん以外の原因による死亡の独立した関連因子であることが示されたという。著者は、「この関連は、後期AMDの未測定または評価不十分な交絡因子による可能性もあるが、後期AMDが生物学的老化のマーカーになる可能性を示唆している」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年12月20日号掲載の報告。

アキレス腱断裂、手術・非手術とも再断裂リスクは低い/BMJ

 アキレス腱断裂の手術療法は、非手術療法に比べ、再断裂のリスクが有意に低いもののその差は小さく(リスク差:1.6%)、他の合併症のリスクが高い(リスク差:3.3%)ことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのYassine Ochen氏らの検討で示された。アキレス腱断裂は遭遇する頻度が高く、最近の研究では発生率の増加が報告されている。観察研究を含まない無作為化対照比較試験のみのメタ解析では、手術療法は非手術療法に比べ、再断裂リスクが有意に低い(リスク差:5~7%)が、他の合併症のリスクは16~21%高いとされる。BMJ誌2019年1月7日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

後天性血栓性血小板減少性紫斑病の治療にcaplacizumabが有望/NEJM

 後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)の治療において、caplacizumabはプラセボに比べ、迅速に血小板数を正常化し、再発率を抑制することが、英国・University College London HospitalsのMarie Scully氏らが行ったHERCULES試験で示された。aTTPでは、von Willebrand因子の切断酵素であるADAMTS13の免疫介在性の欠損により、von Willebrand因子マルチマーが血小板や微小血栓に無制限に粘着可能となり、その結果として血小板減少、溶血性貧血、組織虚血が引き起こされる。caplacizumabは、抗von Willebrand因子ヒト化二価単一可変領域免疫グロブリンフラグメントであり、von Willebrand因子マルチマーと血小板の相互作用を阻害するという。NEJM誌オンライン版2018年1月9日号掲載の報告。

最新のがん統計:男性では前立腺がんが上位に

 厚生労働省は、2016年に開始した「全国がん登録」による初めての結果を公表した。それによると、2016年において、新たにがん(上皮内がんを除く)と診断された患者は99万5,132例で、男性が56万6,575例(56.9%)、女性が42万8,499例(43.1%)だった。  部位別のがん罹患数は、男性では胃(16.4%)、前立腺(15.8%)、大腸(15.8%)、肺(14.8%)、肝(5.0%)の順で多く、女性では乳房(22.1%)、大腸(16.0%)、胃(9.8%)、肺(9.7%)、子宮(6.6%)の順で多かった。

統合失調症患者のメタボリックシンドロームに対するオメガ3脂肪酸の影響

 統合失調症患者は、ライフスタイルや抗精神病薬の影響によりメタボリックシンドローム(MetS)を発症するリスクが高いと言われている。中国・上海交通大学のFeikang Xu氏らによるこれまでの研究では、MetSを合併した統合失調症患者では、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現や産生が増加することが示唆されていた。今回著者らは、TNF-αの抑制には、ω3脂肪酸が関連していると言われていることから、MetSを合併した統合失調症患者において、ω3脂肪酸が炎症を緩和し、代謝異常を改善することに役立つかどうかについて検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年12月5日号の報告。

高尿酸血症の治療失敗に肥満が関連か~日本人男性

 高尿酸血症または痛風の日本人男性の治療目標達成率と治療成功に影響する因子について、順天堂大学の片山 暁子氏らが検討した結果、肥満と治療失敗との関連が示唆された。また、血清尿酸(SUA)管理の一部として脂質プロファイルを維持する重要性が強調された。著者らは「肥満と脂質異常症の両方をうまく管理し、健康的なSUA値を得ることで、心血管疾患を予防できるかもしれない」としている。Internal Medicine(Japan)誌オンライン版2019年1月10日号に掲載。

ノンシュガー甘味料の健康への影響~メタ解析/BMJ

 ドイツ・フライブルク大学のIngrid Toews氏らによる無作為化/非無作為化比較試験および観察試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、ノンシュガー甘味料(non-sugar sweeteners:NSS)の摂取群と非摂取群とでほとんどの健康上のアウトカムに差はみられないことが示された。ただし、著者は「NSSの摂取が有益であるという有力な証拠はなく、NSS摂取の潜在的な有害性が排除されたわけではない」とまとめている。これまでの研究では、NSS摂取による健康への影響(体重、糖尿病、がん、口腔衛生など)が示唆されていたが、一貫したエビデンスは得られていなかった。BMJ誌2019年1月2日号掲載の報告。

心筋梗塞患者、薬剤費負担なしの継続支援策は有効か/JAMA

 心筋梗塞(MI)患者において、P2Y12阻害薬の薬剤費の一部自己負担を補う商品券(バウチャー)を提供した場合、商品券を提供しなかった場合と比較して、患者報告によるP2Y12阻害薬服薬継続率の増加は3.3%であり、1年時における主要有害心血管イベント(MACE)について有意な低下は認められなかった。米国・Duke Clinical Research InstituteのTracy Y. Wang氏らが、18歳以上の急性MI患者を対象に、薬剤費自己負担の障壁を取り除くことによるP2Y12阻害薬服薬継続率とMACEリスクを検討した無作為化試験「ARTEMIS(Affordability and Real-World Antiplatelet Treatment Effectiveness After Myocardial Infarction Study)」の結果を報告した。ガイドラインではMI後1年間のP2Y12阻害薬治療が推奨されているが、推奨よりも早く中断する患者が多く、その理由として費用の問題が大きいことが推察されていた。JAMA誌2019年1月1・8日号掲載の報告。

膵がん死を減らせるか? 膵がん切除後の補助療法:mFOLFIRINOXかゲムシタビンか(解説:上村直実氏)-998

消化器領域のがんでは感染症である肝がんと胃がんによる死亡者が激減し、著明な増加を示していた大腸がん死亡者数も肺がんと同様にプラトーに達し減少に転じている。その中で早期発見が困難でかつ発見時には手術不能例が多い膵がんによる死亡者数のみが年間3万人を超えて増加の一途をたどっている。膵がん死を防ぐ方法としては、完治できる外科的手術が理想的であるが、早期に発見された切除可能膵がんでも手術単独の5年生存率はわずか10%とされており、生存率の向上を目的として、術前・術後の補助療法が模索されているが、とくに局所病変が切除可能で転移に乏しい患者に対する術後の補助療法は必須となっている。

認知症による死亡、中年期からの体重減少と関連

 肥満が認知症に対して防御的であるという仮説を検証するために、英国London School of Hygiene and Tropical MedicineのAlexander N. Allen氏らは、中年および高年者の両方で、認知症による死亡と体重およびBMIとの関連を比較した。その結果、認知症による死亡が中年期より高年期のBMIと強い逆相関を示し、また中年期から高年期までのBMIや体重の減少と強い相関を示した。Age and Ageing誌オンライン版2019年1月9日号に掲載。

ベンゾジアゼピンの使用と濫用~米国調査

 ベンゾジアゼピンの使用率、不適正使用の特徴および年齢による変化について、米国・ミシガン大学のDonovan T. Maust氏らが、調査を行った。Psychiatric Services誌オンライン版2018年12月7日号の報告。  2015、16年のNSDUH(National Survey on Drug Use and Health)のデータより、18歳以上の成人8万6,186例およびベンゾジアゼピン使用が報告された1万290例を対象に、横断的分析を行った。過去1年間のベンゾジアゼピン使用と不適正使用(医師が指示しなかった方法)、物質使用障害、精神疾患、人口統計学的特徴を測定した。不適正使用は、若年(18~49歳)と高齢(50歳以上)において比較を行った。

血中hsCRP高値の現・元喫煙者、肺がんリスク高い/BMJ

 血中高感度C反応性蛋白(hsCRP)が高値の元喫煙者および現喫煙者は、肺がんリスクが高いことが示された。一方で、hsCRP値と肺腺がんリスクの関連は認められず、hsCRP値は、原因となるリスク因子ではなく肺がんの診断前マーカーとなりうる可能性が示されたという。国際がん研究機関(IARC、本部:フランス)のDavid C. Muller氏らが、20のコホート試験を基に行った、コホート内ケースコントロール試験の結果で、BMJ誌2019年1月3日号で発表した。先行研究では、CRPは全身性炎症のマーカーで、肺がんリスクと関連することが示されていた。しかし、喫煙状態別(喫煙歴なし、元喫煙、現喫煙)の関連について正確な推定値を示すことが可能な規模の試験はなかった。