日本語でわかる最新の海外医学論文|page:314

ボルチオキセチンの改善効果予測因子~日本での臨床試験データ

 うつ病患者の治療では、抗うつ薬による治療効果が出るまで数週間を要する場合がある。東京医科大学の井上 猛氏らは、治療反応や寛解に対するボルチオキセチンの早期部分寛解の予測値について調査を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年12月18日号の報告。  20~75歳の日本人再発性うつ病患者(Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコア26以上)を対象としたボルチオキセチン(10mgまたは20mg)の8週間ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験の事後分析を行った。主要アウトカムは、ボルチオキセチン治療8週目における治療反応(ベースラインからMADRS合計スコア50%以上減少)および寛解(MADRSスコア10以下に減少)に対する早期部分寛解(ベースラインから2週目までのMADRSスコア20%以上減少)の予測値とした。

5年間のビタミンD補給により自己免疫疾患のリスク低減/BMJ

 5年間のビタミンD補給により、オメガ3脂肪酸の追加の有無を問わず、自己免疫疾患の発生が22%減少し、オメガ3脂肪酸の補給では、ビタミンD追加の有無にかかわらず、統計学的有意差はないものの同疾患が15%減少することが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のJill Hahn氏らが行った「VITAL試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年1月26日号で報告された。  研究グループは、ビタミンDと海産動物由来の長鎖オメガ3脂肪酸は自己免疫疾患のリスクを低減するかを検証する目的で、2×2ファクトリアルデザインを用いた二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。

COVID-19、ICU退室から1年後の身体・精神・認知症状の割合は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、集中治療室(ICU)で治療を受けた生存例では、1年後に約74%で身体症状が認められ、また約26%で精神症状が、約16%で認知症状が発現していたことが、オランダ・ラドバウド大学医療センターのHidde Heesakkers氏らが同国のICUで行った調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2022年1月24日号に掲載された。  本研究は、ICUで治療を受けたCOVID-19生存例における1年後の身体、精神、認知症状の発現の評価を目的とする探索的な前向きコホート研究で、ICU生存例(非COVID-19患者を含む)を対象とした多施設共同試験であるMONITOR-IC試験の一環として実施された。

皮膚疾患患者の睡眠障害

 睡眠不足や睡眠の質の低下は、さまざまな健康への悪影響を引き起こす可能性がある。睡眠障害といくつかの皮膚状態との関連が研究されているが、包括的な皮膚科患者の集団におけるデータは十分ではない。スイス・バーゼル大学のRianna Tamschick氏らは、皮膚科患者の睡眠障害の有病率、原因、影響について検討を行った。Clinics in Dermatology誌2021年11~12月号の報告。  単一施設による横断的研究を実施した。皮膚科患者を対象に、皮膚関連および非皮膚関連の健康、睡眠行動、睡眠障害の原因や影響に関する質問票への回答を求めた。

ブレークスルー感染、女性・30歳以上で起こりやすい?

 ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のJing Sun氏らが新型コロナワクチン接種後のブレークスルー感染発生率と発生率比(IRR)を特定することを目的とし、後ろ向きコホート研究を実施。その結果、患者の免疫状態に関係なく、完全ワクチン接種がブレークスルー感染のリスク低下と関連していることが示唆された。また、ブレークスルー感染が女性や30歳以上で起こりやすい可能性も明らかになった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2021年12月28日号掲載の報告。

身体活動モニターで身体活動量は増える?/BMJ

 身体活動モニター(PAM)による介入が身体活動に及ぼす効果については、エビデンスの確実性は低く、中~高強度の身体活動および座位時間に対する効果は中程度であったが、介入は安全で、身体活動および中~高強度の身体活動を効果的に増加させるという。デンマーク・コペンハーゲン大学のRasmus Tolstrup Larsen氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。最新のPAMは、身体活動について利用者に直接的なフィードバックを提供し、行動変容を促進させるものとして利用できる可能性があるとされる。2007年のシステマティックレビューでは、PAMが身体活動を増加する可能性が報告されたが、組み込まれた研究が少なく、推定効果量は不正確さに影響されており、2007年以降に発表された研究ではPAMの有効性ついて異なる結論が示されていた。今回の結果について著者は、「身体活動および中~高強度の身体活動に対する有効性は十分確立されているが、出版バイアスに起因して過大評価されている可能性がある」としている。BMJ誌2022年1月26日号掲載の報告。

mRNAワクチンの心筋炎リスク、年齢・男女別に2億人を解析/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種後の心筋炎リスクは、男女とも複数の年齢層で上昇し、とくに12~24歳の男性で2回目接種後に高かった。米国疾病予防管理センター(CDC)のMatthew E. Oster氏らが、米国の受動的なワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)を基にした解析結果を報告した。著者は、「心筋炎のリスクは、COVID-19ワクチン接種のメリットに照らして検討する必要がある」とまとめている。JAMA誌2022年1月25日号掲載の報告。

コロナワクチン、5歳未満への緊急使用をFDA申請へ/ファイザー

 米・ファイザーは2月1日付のプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの緊急使用許可を、5歳未満の乳幼児にも拡大するよう求める申請手続きを開始したことを発表した。米国では、オミクロン株まん延下で小児COVID-19症例と入院が急増し、中でも4歳未満の乳幼児の感染例が160万超に上るという。米国では現在5歳以上がワクチン接種の対象だが、FDAが承認すれば、新たに生後6ヵ月~5歳未満への接種が可能になる。

HIMALAYA試験でデュルバルマブ+tremelimumabの肝がん1次治療が有望な成績/AZ

 アストラゼネカは、2022年1月26日、第III相HIMALAYA試験の結果から、切除不能な肝細胞がん(HCC)のうち、全身療法による前治療歴がなく、局所療法の適応とならない患者の1次治療として、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)に免疫反応を誘導(プライミング)するtremelimumab単回投与を追加した併用療法が、ソラフェニブと比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示したことを発表した。

抗CGRP抗体中止後の頭痛や健康関連QOLに対する影響

 抗CGRP(受容体)モノクローナル抗体による片頭痛治療は、患者の健康関連QOLに良い影響を及ぼす。ドイツの治療ガイドラインでは、抗CGRP抗体による治療に奏効後、6~12ヵ月間で治療を中止することが推奨されている。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のMaria Terhart氏らは、抗CGRP抗体治療中止後3ヵ月間における頭痛特有の一般的な健康関連QOLを評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年12月31日号の報告。  8~12ヵ月間の抗CGRP抗体治療後、予定された治療中止をこれから行う片頭痛患者を対象としたプロスペクティブ縦断的コホート研究を実施した。健康関連QOLの評価は、最後の抗CGRP抗体治療実施時(V1)、8週間後(V2)、16週間後(V3)に行った。頭痛特有の健康関連QOLの評価には、頭痛インパクトテスト(Headache Impact Test-6:HIT-6)を用いた。一般的な健康関連QOLの評価には、EuroQol-5-Dimension-5-Level(ED-5D-5L)およびPCS-12、MCS-12で構成されたSF-12を用いて評価した。3つの評価時点でのアンケート合計スコアの比較には、ノンパラメトリック手法を用いた。

統合失調症の再発までの期間と再発歴との関係

 統合失調症は、再発を繰り返すことが多い疾患であり、このことはしばしば患者にとって悪影響を及ぼす。過去の再発歴は、今後の再発を予測する強力な因子であるといわれているが、この関連性は十分に定量化されているわけではない。デンマーク・ルンドベック社のKristian Tore Jorgensen氏らは、統合失調症の再発までの期間と患者の再発歴との関連を定量化するため、スウェーデンの実臨床データを用いて検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年12月21日号の報告。  スウェーデン国立患者レジストリと処方薬レジストリのデータを用いて、2006~15年に初めて登録された統合失調症患者の再発について、再発のプロキシ定義を用いて検討した。主要なプロキシは、7日以上の精神科入院を再発と定義した。その後、各再発リスクについてハザード比(HR)を算出し、Aalen-Johansen推定量を用いて、次の再発までの期間を推定した。

トファシチニブ、心血管リスクの高いRA患者での安全性を検討/NEJM

 心血管リスクの高い関節リウマチ患者において、トファシチニブ5mgまたは10mgの1日2回投与は腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬と比較し、主要有害心血管イベント(MACE)および悪性腫瘍の発現率が高く、非劣性基準を満たさなかった。米国・メイヨー・クリニックのSteven R. Ytterberg氏らが30ヵ国323施設で実施した、無作為化非盲検非劣性第IIIb-IV相安全性評価試験「ORAL Surveillance試験」の結果、明らかとなった。日和見感染症、帯状疱疹および非黒色腫皮膚がんの発現率もトファシチニブ群が高率であることが示された。NEJM誌2022年1月27日号掲載の報告。

mRNAワクチン3回接種、オミクロン株とデルタ株への有効性は?/JAMA

 2021年12月10日~2022年1月1日に新型コロナウイルス感染症様(COVID様)症状を有し検査した人において、mRNAワクチンの3回接種は未接種および2回接種と比較し、オミクロン変異株およびデルタ変異株の両方に対して感染予防効果があることが認められた。米国疾病予防管理センター(CDC)のEmma K. Accorsi氏らが、症例対照研究の結果を報告した。ただし、その効果は、デルタ変異株に比べてオミクロン変異株で低いことが示唆された。JAMA誌オンライン版2022年1月21日号掲載の報告。

デュルバルマブ+化学療法、進行胆道がん1次治療で奏効(TOPAZ-1)/AZ

 アストラゼネカは、2022年1月26日 、第III相TOPAZ-1試験の良好な結果から、進行胆道がん(BTC)の1次治療薬として、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ )と標準化学療法の併用が、化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の延長を示したことを発表。この結果は、2022年1月21日に米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器がんシンポジウムで示された。  TOPAZ-1試験では、デュルバルマブと化学療法の併用療法により、病勢進行または死亡のリスクが25%低下した(HR:0.75、95%CI:0.64〜0.89、両側検p=0.001)。PFS中央値は、デュルバルマブと化学療法の併用療法の7.2ヵ月に対し、化学療法単独は 5.7ヵ月であった。デュルバルマブと化学療法の併用療法の奏効率(ORR)は26.7%であったのに対し、化学療法単独のORRは18.7%であった。

日本におけるベンゾジアゼピン受容体アゴニストの使用状況の変化

 近年、ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(BZRA)の使用については、ガイドラインで慎重に検討すべきであることが示唆されているものの、日本におけるBZRAの使用状況の調査は十分に行われていなかった。九州大学の奥井 佑氏らは、大学病院の電子カルテデータを用いて、BZRAの使用傾向を調査した。Healthcare(Basel, Switzerland)誌2021年12月13日号の報告。  2009年4月~2021年3月のデータを用いて分析した。アウトカムは、次の3つとし、ベンゾジアゼピン系(BZD)および非ベンゾジアゼピン系(Z薬)について同様の分析を行った。[1]睡眠薬または抗不安薬の使用患者におけるBZRAの使用患者の割合[2]使用されたBZRAタイプの平均数[3]BZRAの1日量

死に至る薬剤耐性菌感染症、最も多い疾患と原因菌は/Lancet

 薬剤耐性(AMR)は、世界中で人々の健康を脅かす主要な原因となっている。これまでのAMR研究は、特定の地域における限られた病原体と薬剤の組み合わせについて、感染症の発生率や死亡数、入院期間、医療費に及ぼすAMRの影響の評価を行い、広範な地域や、病原体と薬剤の網羅的な組み合わせに関する包括的な検討は行われていないという。米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏らAntimicrobial Resistance Collaboratorsは、今回、AMR負担に関して現時点で最も包括的な検討を行い、2019年に世界で495万人が細菌のAMRに関連する感染症で死亡し、このうち127万人は薬剤耐性菌感染症が直接の原因で死亡したことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年1月18日号に掲載された。

塩野義の経口コロナ治療薬、速やかなウイルス減少効果を確認~第II/III相試験

 塩野義製薬は1月31日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として開発中の経口薬(S-217622)について、軽症・中等症および無症候のSARS-CoV-2感染者へ投与した際の、ウイルス力価の変化量を検討した第II/III相試験のデータを発表した。それによると、実薬投与群におけるSARS-CoV-2陽性患者の割合が、3回投与後の時点で、プラセボ群と比べ最大80%減少したことを示したという。  S-217622は、塩野義製薬が北海道大学との共同研究により創製した3CLプロテアーゼ阻害薬。

アベマシクリブのHR+/HER2-乳がん術後薬物療法における位置付けは?

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法として、CDK4/6阻害薬アベマシクリブ(商品名:ベージニオ)が2021年12月24日に追加承認を取得した。1月21日「ベージニオに新たな適応症が追加 HR+/HER2-乳癌の術後薬物療法の新しい選択肢とは」と題したメディアセミナー(主催:日本イーライリリー)が開催され、座長として大野 真司氏が登壇、原 文堅氏(ともにがん研究会有明病院)が術後薬物療法におけるアベマシクリブの位置付けについて講演した。  アベマシクリブは2018年9月に、HR+/HER2-の手術不能または再発乳がんに対する治療薬として承認されている。アベマシクリブは骨髄での造血管細胞の成熟に関連するCDK6-サイクリンD3よりも、乳がんの増殖に関連するCDK4-サイクリンD1をより高く阻害するため、パルボシクリブと比較して骨髄抑制が軽く、連日内服が可能という点が特徴となっている。アベマシクリブの用法・用量としては1回150mgの1日2回経口投与であるが、術後薬物療法では投与期間は最大で24ヵ月間、状態に応じて適宜減量することとされた。

年末年始の当直・輪番当番は増えた、減った?/ケアネット

 2022年も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する中で迎えた。とくに初冬より流行し始めたオミクロン株は感染力の強さもあり、わが国全体が不安と戸惑いの中で新しい年を迎えた。そうした環境の中で、果たして年末・年始の当直・輪番当番に大きな動きはあったのであろうか。CareNet.comは1月13日(木)にWEBアンケートで医師会員400名に年末・年始の当直・輪番当番について調査を行った。 ■アンケート概要 実施期日:2022年1月13日(木) 調査方法:インターネット 対象者:医師会員400名(年齢別に20・30代/40代/50代/60代以上に区分) ■「年代が若い」「病床規模が大きい」の項目で当直・輪番当番が「あり」の回答が増加

国内データで見るオミクロン株へのワクチン2回接種の効果

 新型コロナワクチンの3回目のブースター接種が昨年12月から始まっているものの、初回接種(当初規定された2回目接種まで)時のような進捗が見られない。しかし一方で、オミクロン株の急拡大に歯止めが掛からないのが現状だ。多くが初回接種にとどまっている中、まん延するオミクロン株にはどれほどの効果があるのだろうか。長崎大学などの研究チームが、国内4都県5ヵ所の医療機関において、今年1月1日~21日までに新型コロナウイルス感染症が疑われる症状で検査を受けた患者400例超を解析したところ、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種の発症予防効果は51.7%で、昨年の第5波に流行したデルタ型と比べ大幅に低下していたことがわかった。