日本語でわかる最新の海外医学論文|page:195

コロナ2価ワクチンのブースター接種、安全性が示される/BMJ

 50歳以上の成人において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する4回目ブースター接種ワクチンとしてのオミクロン株対応2価mRNAワクチンは、事前規定の27種の有害事象に関するリスク増大との関連は認められなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らによる同国の50歳以上の接種者を対象に行った試験で示された。BMJ誌2023年7月25日号掲載の報告。  研究グループは2021年1月1日~2022年12月10日に、COVID-19ワクチンを3回接種した50歳以上の成人222万5,567人を対象とするコホート試験を行った。

加糖飲料を毎日摂取、肝がんリスク・肝疾患による死亡を増大/JAMA

 閉経後女性において、砂糖入り飲料の1日1杯以上摂取者は1ヵ月3杯以下の摂取者と比べ、肝がん罹患率および慢性肝疾患死亡率が高率であることが示された。一方で人工甘味料入り飲料の摂取量については、両リスク共に増大はみられなかったという。米国・サウスカロライナ大学のLonggang Zhao氏らが、約10万人規模の50~79歳の閉経後女性からなる前向きコホートを追跡し明らかにした。米国では成人の約65%が砂糖入り飲料を毎日摂取しているという。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる研究で今回示された所見を確認し、その関連性について生物学的経路を明らかにする必要がある」と述べている。JAMA誌2023年8月8日号掲載の報告。

鼻をほじる医療者は、コロナ感染リスク増

 医療従事者はCOVID-19の感染リスクが高く、マスク、ガウン、ゴーグル/フェイスシールド、手袋などの個人防護具(PPE)装着をはじめとした感染対策を取るケースが多い。にもかかわらず医療従事者の感染者が多い理由を探るため、PPE装着や飛沫を受けることに関連する可能性のある特定の行動・身体的特徴を調査する研究が行われた。オランダ・アムステルダム大学のA H Ayesha Lavell氏らによる本研究の結果は、PLOS ONE誌オンライン版2023年8月2日号に掲載された。  研究者らは、オランダの2つの大学医療センターに勤務する医療従事者404例を対象としたコホート研究において、特定の行動・身体的特徴が感染リスクと関連しているかどうかを調査した。感染との関連を調査した具体的な行動は以下のものだった。

2型DM患者は超加工食品摂取で食事の質と無関係に死亡リスク増

 2型糖尿病患者では、食事の質とは無関係に、カップ麺やスナック菓子、加工肉などの超加工食品の摂取量の増加は全死因死亡率と心血管疾患(CVD)死亡率の上昇と関連していることが、イタリア・IRCCS NEUROMEDのMarialaura Bonaccio氏らの前向き観察コホート研究の結果、明らかになった。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2023年7月26日号掲載の報告。  研究グループは、ベースライン時に2型糖尿病を発症している1,065例を対象として、11.6年間(中央値)を前向きに追跡した。食物摂取量は、188項目の食事アンケートによって評価された。超加工食品はNova分類に従って定義され、超加工食品と総摂取食物の比として計算された。食事の質は、地中海食スコアによって評価された。Cox比例ハザードモデルを用いて、死亡率の多変量調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。

NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。

若年成人では軽度の腎機能低下も健康リスクになりやすい

 若年成人では、従来は問題視されることが少なかった、軽度の腎機能の低下であっても、その後の健康リスクが上昇することを示すデータが報告された。オタワ病院(カナダ)のManish Sood氏らの研究によるもので、詳細は「The BMJ」に6月23日掲載された。  この研究は、カナダのオンタリオ州の医療管理データを用いた後方視的コホート研究として実施された。解析対象は、2008年1月~2021年3月にeGFRが測定されており、その値が50~120mL/分/1.73m2で、腎疾患の既往のない18~65歳の地域住民870万3,871人(平均年齢41.3±13.6歳、eGFR104.22±16.1mL/分/1.73m2)。

コレステロール値を安定させることが認知症予防に寄与か

 血中の脂質値の変動は、アルツハイマー病(AD)やアルツハイマー病に関連する認知症(ADRD)のリスクを上昇させる可能性のあることが、米メイヨー・クリニックのSuzette Bielinski氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Neurology」に7月5日掲載された。  Bielinski氏らは、追跡開始時点(2006年1月1日)にはADまたはADRDのなかった60歳以上の男女1万1,571人(平均年齢71歳、女性54%)のデータを収集して分析した。対象者には、試験開始前5年間の総コレステロール(TC)値、トリグリセライド(中性脂肪、TG)値、LDLコレステロール(LDL-C)値、HDLコレステロール(HDL-C)値のうち、3種類以上の測定値がそろう人が選ばれた。

統合失調症薬物治療ガイドラインの順守と治療成績との関係~EGUIDEプロジェクト

 臨床医が統合失調症薬物治療ガイドラインの推奨事項を順守することは、患者の良好なアウトカムにとって重要である。しかし、ガイドラインの順守が患者の治療アウトカムと関連しているかどうかは明らかではない。東京慈恵会医科大学の小高 文聰氏らは、統合失調症薬物療法ガイドラインへの適合度を可視化するツールindividual fitness score(IFS)計算式を開発し、統合失調症患者におけるIFS値と精神症状との関連を調査した。その結果、IFS計算式で評価した統合失調症薬物治療ガイドラインの推奨事項を順守する取り組みは、統合失調症患者の臨床アウトカム改善につながる可能性が示唆された。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2023年6月29日号の報告。

双極I型障害のうつ再発予防の抗うつ薬、52週vs.8週/NEJM

 うつ病エピソードの寛解から間もない双極I型障害患者に、エスシタロプラムまたはbupropionの徐放性製剤(bupropion XL)による抗うつ薬の補助的投与を52週間継続しても、8週間の投与と比べて、あらゆる気分エピソードの再発予防について有意な有益性は得られなかった。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLakshmi N. Yatham氏らが、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。双極I型障害患者の急性うつ病の治療には抗うつ薬が用いられるが、寛解後の維持療法としての抗うつ薬の効果については十分に検討されていなかった。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。

成人の胸腺摘出、全死亡・がんリスクが増加/NEJM

 胸腺摘出を受けた患者は摘出を受けなかった対照群よりも、全死因死亡およびがんリスクが高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のKameron A. Kooshesh氏らによる検討で示された。また、術前感染症、がん、自己免疫疾患を有する患者を除外した解析では、胸腺摘出は自己免疫疾患のリスクを増大すると思われる関連性もみられたという。成人における胸腺の機能は明らかになっていないが、さまざまな外科手術でルーチンに摘出が行われている。研究グループは、成人の胸腺は、免疫機能と全般的な健康の維持に必要であるとの仮説を立て、疫学的・臨床的・免疫学的解析評価で検証した。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。

臨床試験の結果が非有意のときは尤度比を活用してみましょう(解説:折笠秀樹氏)

結果の信ぴょう性はよく統計学的有意性で判定します。つまり、結果のP値が0.05(5%)より小さければ統計学的有意と判定します。これはネイマン・ピアソン流の方法です。もう1つの流派にベイズ流というのがあります。ベイズ流ではP値の代わりに、尤度比(ベイズ流ではベイズ因子と呼ぶ)を用います。本論文は、この尤度比を使えば、とりわけ非有意の結果の程度がつかめることを示しました。差がないという仮説(帰無仮説HN)と、差があるという仮説(対立仮説HA)があるとします。

機能性ディスペプシア、食物を見るだけで脳の負担に/川崎医大

 全人口の約10%が、機能性ディスペプシア(FD)や過敏性腸症候群(IBS)の症状に悩まされているとされ、不登校や休職など日常生活に支障を来すケースも多い。また、血液検査や内視鏡検査、CT検査などで異常が見つからず、病気であることが客観的に示されないために、周囲の人に苦しみが理解されにくいといった問題がある。精神的ストレスや脂肪分の多い食事が原因とされるものの、メカニズムの解明は進んでおらず、客観的診断法は確立されていない。そこで、川崎医科大学健康管理学教室の勝又 諒氏らは、FD患者、IBS患者に40枚の食物の画像を見せ、食物の嗜好性や脳血流の変化を調べた。その結果、FD患者は健康成人やIBS患者と比較して、脂肪分の多い食物を好まなかった。また、FD患者は、食物を見たときに左背側前頭前野の活動が亢進していた。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2023年8月12日号で報告された。

アルツハイマー病、早発型と遅発型の臨床的特徴の違い~メタ解析

 認知症で最も一般的な病態であるアルツハイマー病は、発症年齢による比較検討が多くの研究で行われているが、その違いは明らかになっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのPaige Seath氏らは、アルツハイマー病の早発型(65歳未満、early-onset:EO-AD)と遅発型(65歳以上、late-onset:LO-AD)の臨床的特徴を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、EO-AD患者はベースライン時の認知機能、認知機能低下速度、生存期間においてLO-AD患者と異なる特徴を有しているが、それ以外の臨床的特徴は同様であることが示唆された。International Psychogeriatrics誌オンライン版2023年7月11日号の報告。

ネモリズマブ、6~12歳のアトピー性皮膚炎にも有用

 ネモリズマブは、アトピー性皮膚炎(AD)に伴うそう痒を有し、外用薬や経口抗ヒスタミン薬で効果不十分な6~12歳の小児患者にとって、新たな治療選択肢となる可能性が示された。いがらし皮膚科東五反田院長(前NTT東日本関東病院 皮膚科部長)の五十嵐 敦之氏らが、6~12歳の日本人AD患者を対象に行った第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。ヒト化抗IL-31受容体Aモノクローナル抗体ネモリズマブは、13歳以上のAD患者において外用薬との併用でそう痒を軽減し、QOLを改善することが示されていたが、13歳未満のAD患者における有効性および安全性に関するデータは不足していた。British Journal of Dermatology誌オンライン版2023年7月31日号掲載の報告。

1カ月の生活習慣改善で精液の質が向上する

 タバコやお酒を控えたり、熱がこもりにくいタイプの下着を履く、禁欲期間が長くならないようにするといった生活習慣の見直しによって、精液の質が改善する可能性を示す研究結果が報告された。不妊外来を受診した男性に対してこのような指導を行ったところ、約1カ月後に精子の運動能の有意な向上などが確認されたという。千葉大学大学院医学研究院泌尿器科学・亀田IVFクリニック幕張の小宮顕氏らの研究によるもので、詳細は「Heliyon」に4月4日掲載された。  男性不妊の一因として不適切な生活習慣や慢性疾患の影響が関与していることが知られている。また、男性の生殖能力が低いことは、がんなどの疾患罹患や死亡リスクの高さ、あるいは生まれてくる子どもが早産や低出生体重児となるリスクの高さと関連しているとする報告もある。そのため、男性不妊のリスク因子の中で修正可能のものを早期に見いだして介入することが、不妊治療の成功とともに本人と子どもの健康につながる可能性もある。とはいえ、男性の生殖能力に影響を与える修正可能な因子へ介入することの効果は、いまだ明確になっていない。

全ての指を1本ずつ動かせる義手の開発が前進

 腕の切断を余儀なくされた患者にとって、大きな進歩となる研究成果が報告された。米国、スウェーデン、オーストラリア、イタリアのエンジニアと外科医から成る国際共同研究グループが、生体工学の技術を用いて、1本1本の指を動かせる機能性の高い義手(バイオニックハンド)を開発したことを、「Science Translational Medicine」7月12日号に発表した。  失われた手足に代わるものとして最も広く使用されているのが義肢(義手、義足)である。しかし、義肢はコントロールが難しい場合が多く、動きも限定的になることがある。義肢のうち、生物学的な原理(筋肉の発する信号)を電子工学系の技術(センサー)で読み取ることで手の機能を再現しようとするバイオニックハンドでは、切断した腕に残された筋肉を使って義手をコントロールすることが選択肢として考えられる。患者は、残された筋肉を自在に収縮させられるため、収縮により電気信号を発生させることで、手を広げたり握ったりなどの指令を義手に伝えることができるからだ。しかし、肘より上からの切断など切断範囲が広い場合には、それを行うための十分な筋肉を得ることができない。

ボードゲームは小児の数学的スキルを高める

 夜に家族でボードゲームをして過ごす時間は、単に楽しいだけではないようだ。モノポリーやオセロなどのボードゲームは、幼児期の数学的スキルの育成にも役立つ可能性が、新たな研究で示された。チリ・カトリック大学のJaime Balladares氏らによる研究で、詳細は「Early Years」に7月6日掲載された。  ボードゲームの特徴は、コマの数や位置、動かし方などに関してルールが決められており、その動きや位置の変化がゲームの進行や結果に影響を与えることだ。そのため、小児期から成人期まで、目的と年齢層に応じてレベルを調整して、いくつかのプレイパターンを作ることも可能だ。過去の研究では、ボードゲームが小児の読み書きや読解力を向上させる可能性が報告されるなど、教育面で有効なことが示唆されている。しかし、特に、プリスクール(幼稚園前)や保育園・幼稚園でのボードゲームの使用が小児にもたらす効果について定量的に分析した研究結果は報告されていない。

C型肝炎にDAA治療成功も死亡率高い、その理由は/BMJ

 インターフェロンを使用せず直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療に成功したC型肝炎患者では、一般集団と比較して死亡率が高く、この過剰な死亡の主な要因は薬物や肝臓関連死であることが、英国・グラスゴー・カレドニアン大学のVictoria Hamill氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年8月2日号に掲載された。  本研究は、ブリティッシュコロンビア州(カナダ)、スコットランド(英国)、イングランド(英国)の3つの地域のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(研究資金は主に、責任著者のHamish Innes氏[グラスゴー・カレドニアン大学]が英国のMedical Research Foundationから受けたウイルス性肝炎フェローシップの報奨金が充てられた)。

腎細胞がん術後補助療法、エベロリムスは無再発生存期間を改善せず(EVEREST)/Lancet

 腎摘除術後の再発リスクが高い腎細胞がん患者において、術後補助療法としての哺乳類ラパマイシン標的タンパク質エベロリムスはプラセボと比較して、無再発生存期間を改善せず、Grade3/4の有害事象の頻度が高かったことが、米国・オレゴン健康科学大学Knightがん研究所のChristopher W. Ryan氏らが実施した「EVEREST試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年7月28日号で報告された。  EVEREST試験は、米国の398の大学および地域の研究センターで実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2011年4月~2016年9月の期間に患者の無作為化が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。

寄せられた疑問に答える、脂質異常症診療ガイド2023発刊/日本動脈硬化学会

 『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』が6月30日に発刊された。本ガイドは2018年版から5年ぶりの改訂となり、塚本 和久氏(帝京大学大学院医学研究科長、内科学講座 教授)が改訂点や本書の新たな取り組みについて、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで解説した。  本診療ガイドは脂質異常症に特化し、非専門医が困ったときに参考となる情報をコンパクトに記載したものである。日本動脈硬化学会では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』をはじめ、『スタチン不耐に関する診療指針2018』『PCSK9阻害薬の継続使用に関する指針』などのさまざまなガイドラインや指針を発刊しており、本GLはそれらの内容を網羅するかたちで作成されている。そのため、主な改訂点も動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版に準じたものになっている。