日本語でわかる最新の海外医学論文|page:134

男性乳がん患者、乳がん特異的死亡リスクは?

 StageI~IIIのホルモン受容体(HR)陽性の男性乳がん患者における乳がん特異的死亡リスクを調査した結果、そのリスクは少なくとも20年間持続することを、アルゼンチン・Grupo Oncologico Cooperativo del SurのJulieta Leone氏らが明らかにした。JAMA Oncology誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。  研究グループは、米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の集団ベースのデータを用いて、1990~2008年に乳がんと診断された男性を対象とした観察コホート研究を実施した。累積発生関数を用いて、乳がん特異的死亡および乳がん非特異的死亡の累積リスクに関するベースライン時の変数を推定した。Fine-Gray回帰を用いてあらかじめ選択した変数と乳がん特異的死亡との関連を評価した。

喫煙による咽頭がんリスク、非喫煙者の9倍に

 飲酒、喫煙ががん罹患リスクと関連するとの報告は多いが、頭頸部がんと飲酒、喫煙、食習慣との関連をみた研究結果が発表された。米国・ワシントン大学のDaniel P. Lander氏らによる本研究の結果は、JAMA Otolaryngology誌オンライン版2024年2月8日号に掲載された。  本研究は、前立腺がん、肺がん、大腸がんおよび卵巣がん検診に関する臨床試験参加者のコホート解析だった。参加者は55~74歳、1993年11月~2001年7月に全米10施設で募集された。頭頸部がんを発症した参加者は、喫煙、飲酒、食習慣解析のため、人口統計学および頭頸部がん家族歴に加え、喫煙状況および喫煙期間に基づいて対照群とマッチングされた。

抗精神病薬使用と認知症リスク~40万人超のプロスペクティブコホート研究

 抗精神病薬は、最も汎用されている薬剤の1つであり、認知機能低下を引き起こす可能性が示唆されている。しかし、認知症リスクに対する抗精神病薬の影響に関する研究は、一貫性がなく、十分とは言えない。中国・青島大学のLi-Yun Ma氏らは、抗精神病薬使用と認知症リスクとの関係を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年3月15日号の報告。  英国バイオバンク参加者41万5,100例のプロスペクティブコホート研究のデータを用いて、分析を行った。抗精神病薬およびさまざまなクラスの使用が認知症リスクに及ぼす影響を評価するため、多変量Cox比例ハザードモデルおよび経口抗精神病薬用量反応効果分析を用いた。

トラスツズマブ デルクステカン胃がん全例調査の中間解析/日本胃癌学会

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の胃がんにおける製造販売後調査(PMS)の初回投与後4ヵ月の中間解析の結果を第96回日本胃癌学会総会において近畿大学の川上 尚人氏が発表した。この発表はASCO-GI2024のアンコール発表である。  T-DXdは胃がん3次治療以降に使用される一方、間質性肺疾患(ILD)の発現が重要なリスクとして認識されている。日本においては、ILDのリスクを評価するため、すべてのT-DXd投与胃がん患者を対象に観察期間12ヵ月の多施設観察研究が行われている。日本胃癌学会では観察期間12ヵ月のうち最初の4ヵ月の中間成績が発表された。

コロナによる認知障害、症状持続期間による違いは?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へ感染し、症状が消失・回復しても、症状の持続期間にかかわらず軽度の認知機能障害が認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAdam Hampshire氏らが、オンライン評価による大規模コミュニティのサンプル調査(14万例超)の結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の認知機能障害はよく知られているが、客観的に測定可能な認知機能障害が存在するか、またどのくらいの期間持続するかは不明だった。NEJM誌2024年2月29日号掲載の報告。   研究グループは、イングランドの試験に参加した成人80万例に対し、認知機能のオンライン評価の実施を依頼し、8タスクの全般的認知機能スコアを推定した。  感染発症後に12週間以上持続する症状を有した患者は、客観的に測定可能な全般的認知機能障害があり、とくに直近の記憶力低下または思考や集中困難(ブレインフォグ)を報告した患者では、実行機能と記憶の障害が観察されるだろうと仮説を立て、検証した。

オマリズマブ、複数の食物アレルギーに有効/NEJM

 複数の食物アレルギーを持つ1歳以上の若年者において、抗IgEモノクローナル抗体オマリズマブの16週投与は、ピーナッツやその他の一般的な食物アレルゲンに対するアレルギー反応の閾値の上昇に関して、プラセボよりも優れていることが示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のRobert A. Wood氏らが、180例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。米国では小児の最大8%、成人の最大10%が食物アレルギーを有し、その多く(30~86%)が複数の食物アレルギーを有しているという。一方で、唯一承認されている治療法は、ピーナッツアレルギーに対する経口免疫療法であった。NEJM誌2024年2月25日号掲載の報告。

電子タバコは本来の目的を逸脱せず禁煙目的に限定して代替タバコ(禁煙補助剤)として使用、盲目的に長期使用するのは時期尚早で危険!―(解説:島田俊夫氏)

広義の電子タバコは、加熱式タバコと狭義の電子タバコの総称です。わが国の特徴は加熱式タバコ使用者が多い。“電子タバコ”は元来タバコがやめられない、いわゆる紙巻きタバコ中毒患者用の代替タバコ(禁煙補助剤)として開発。その本来の目的を逸脱して使用する傾向に、懸念を抱かざるを得ません。タバコメーカーの広告情報から毒性が低いと信じ込んでいる喫煙者が、電子タバコを文字どおり安全だと疑うこともなく飛びつくのは危険です。目下のところ、毒性を含む安全性確認のためのエビデンスが乏しいと考えるのが妥当ではないでしょうか。

小児インフルワクチン接種は10月がおすすめ?(解説:栗原宏氏)

人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、気管挿管後48~72時間以上経過して発生する肺炎を指す。報告によって幅があるが全挿管患者の5~40%に発生するとされ、ICUでしばしばみられる感染性合併症である。死亡率は約10~30%と院内肺炎の中でもかなり高い。気管チューブから侵入した細菌が気管チューブ、気管支肺胞系、肺実質で増殖することがVAPの原因となる。抗菌薬吸入療法はこれらの部位に直接高濃度の抗菌薬が可能であり、小規模試験のメタ解析によればVAP予防に有効であることが示されている。これを踏まえて、著者らは人工呼吸器導入後3日目以降に、1日1回3日間、理想体重1kg当たり20mgのアミカシン吸入療法を行い、VAPの発生率が減少するかを検討した。

心臓病患者の “ニーズ見える化”へ、クラウドファンディング開始/日本循環器協会

 日本循環器協会は、心臓病に関わる患者・家族、医療者、企業を繋ぐホームページ作成を実現させるため、3月12日にクラウドファンディング『心臓病患者さんの声を届けたい 心臓病に関わる方々を繋ぐHP作成へ』を開始した。本協会は患者と医療者が持つ双方のニーズの“見える化”を目指すことを使命とし、この取り組みを始めた。 “心臓病は複雑かつ、年齢層もさまざま。関係者も多岐にわたり、患者の悩みやニーズが共有されにくい”という循環器領域の現状を踏まえ、本協会は「#患者さんのニーズ見える化プロジェクト」の第1弾として、心臓病患者の声を集めるためのホームページ作成に動き出した。今回はこのホームページを通じて患者ニーズを集め、心臓病のより良いケアを探求する医療者や企業に情報を届けるのが狙いだ。なお、本プロジェクトは All or Nothing 方式を採用しているため、第1目標金額に満たない場合、支援金は全額、支援者へ返金となる。

カフェインは片頭痛を引き起こすのか

 カフェイン摂取は、片頭痛の要因であると考えられており、臨床医は、片頭痛患者に対しカフェイン摂取を避けるよう指導することがある。しかし、この関連性を評価した研究は、これまでほとんどなかった。習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、強さとの関係を調査するため、米国・Albany Medical CollegeのMaggie R. Mittleman氏らは、発作性片頭痛成人患者を対象としたプロスペクティブコホート研究を実施した。Headache誌オンライン版2024年2月6日号の報告。  2016年3月~2017年8月に発作性片頭痛と診断された成人患者101例を対象に、カフェイン入り飲料の摂取に関する情報を含むベースラインアンケートを実施した。対象患者は、頭痛の発症、持続時間、痛みの強さ(スケール:0~100)に関する情報を1日2回、6週間、電子的日誌で報告した。年齢、性別、経口避妊薬の使用で調整した後、ベースライン時の習慣的なカフェイン摂取と6週間の頭痛との関連を評価した。

砂糖入り飲料は1杯/日でもCKDリスク上昇

 砂糖入り飲料または人工甘味料入り飲料を1日1杯(250mL)以上摂取することで、慢性腎臓病(CKD)の発症リスクが上昇し、それらの飲料を天然果汁ジュース(natural juice)または水に置き換えるとCKD発症リスクが低下したことを、韓国・延世大学校医科大学のGa Young Heo氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。  砂糖や人工甘味料の摂取と2型糖尿病や心血管系疾患との関連を示すエビデンスは増えているが、腎臓に及ぼす影響については不明な点が多い。そのため研究グループは、英国バイオバンクのデータを用いて、3種類の飲料(砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料、天然果汁ジュース)の摂取量とCKDの発症リスクとの関連、およびこれらの飲料を別の飲料に置き換えた場合の関連を調査するために前向きコホート研究を行った。

がん治療中のその輸液、本当に必要ですか?/日本臨床腫瘍学会

 がん患者、とくに終末期の患者において最適な輸液量はどの程度なのか? 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「その治療、やり過ぎじゃないですか?」の中で、猪狩 智生氏(東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野)が、終末期がん患者における輸液の適切な用い方について、ガイドラインでの推奨や近年のエビデンスを交え講演した。  猪狩氏はまず実際の症例として、70代の膵頭部がん(StageIV)患者の事例を紹介した:1次治療(GEM+nab-PTX)後にSDとなったものの、8ヵ月後に腹痛、吐き気で緊急入院し、がん性腹膜炎、麻痺性イレウスと診断。中心静脈確保、絶食補液管理(1日2,000mL)となり、腹痛に対しオピオイドを開始したものの症状コントロール困難となった。

在胎不当過小に関わる胎盤の異常をドプラ超音波検査で検出

 胎盤と胎児の血流を超音波で測定することで、在胎不当過小(small for gestational age;SGA)に関連する胎盤の異常を見つけられる可能性のあることが、アムステルダム大学メディカルセンター(オランダ)産科学准教授のWessel Ganzevoort氏らの研究から明らかになった。詳細は、「British Journal of Obstetrics & Gynaecology」に2月5日掲載された。  Ganzevoort氏らの説明によると、胎児の約10%は母親の胎内にいる時点で超音波検査によりSGAと判定される。SGAは、同じ在胎期間で生まれた新生児の標準的な体重分布の10パーセンタイル未満に該当する新生児の状態を指す。SGAであっても健康であれば、特別な介入は必要ない。しかし、胎盤に異常がある場合には対処する必要があり、分娩誘発が必要となることもある。Ganzevoort氏は、「こうしたことから、胎盤異常を原因とするSGAの胎児は、追跡が極めて重要だ」と言う。

3Dプリントで「会話」する脳組織の作成に成功

 ニューロン(神経細胞)が互いにネットワークを形成して「会話」する脳組織を3Dプリンティング技術で作成することに成功したという研究結果を、米ウィスコンシン大学マディソン校の研究グループが発表した。研究グループは、「研究室における神経学的プロセスの研究を進歩させる画期的な成果だ」と述べている。同大学マディソン校ワイズマンセンターのSu-Chun Zhang氏らによるこの研究の詳細は、「Cell Stem Cell」2月号に掲載された。  Zhang氏は、「これは、ヒトの脳細胞や脳の部位がどのようにコミュニケーションを取っているのかを理解する上で、非常に強力なモデルになる可能性がある」と述べ、「この3Dプリントの脳組織は、幹細胞生物学、神経科学、そして多くの神経疾患や精神疾患の発症機序に対する見方を変える可能性がある」と付け加えている。

悪性褐色細胞腫の治療に、スニチニブが有望/Lancet

 本試験(FIRSTMAPPP試験)以前に、転移のある褐色細胞腫および傍神経節腫(パラガングリオーマ)患者を対象とした無作為化対照比較試験は行われていないという。フランス・パリ・サクレー大学のEric Baudin氏らが、この腫瘍の治療において、プラセボと比較してスニチニブ(VEGFR、PDGFR、RETを標的とする受容体チロシンキナーゼ阻害薬)は、1年無増悪生存率を有意に改善し安全性に差はないことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月22日号で報告された。  FIRSTMAPPP試験は、欧州4ヵ国(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ)の14施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2011年12月~2019年1月に、年齢18歳以上、散発性または遺伝性の転移を有する進行性褐色細胞腫およびパラガングリオーマの患者78例(年齢中央値54歳、男性59%)を登録した(フランス保健省などの助成を受けた)。

認知症になる前に頭の中で何が起きているのか(解説:岡村毅氏)

アルツハイマー型認知症になる前に頭の中で何が起きているのだろうか? もうすぐ新学期だから、医学生・看護学生に話すつもりでわかりやすく説明しよう。かつてはアルツハイマー型認知症のことは何もわかっていなかったが、亡くなった人の脳を調べることで、重症になればなるほどアミロイドが溜まり、タウが溜まり、脳が小さくなっている(萎縮という)ということがわかっていた。しかし脳は、たとえば肝臓のように、バイオプシーができないため、実際に生きている人の脳の中で何が起きているのかはわからないという大問題があった。診断に関しても、血液検査や画像検査(こういうのをバイオマーカーという)ではわからないので、臨床診断しかなかったのだ。われわれがいつも使ってきたDSM4やICD10はバイオマーカーを用いない臨床診断である。

日本人胃がんの薬物療法研究の最新情報/日本胃癌学会

 新薬の登場で変化する胃がん薬物療法の国内研究の最新情報が第96回日本胃癌学会総会で報告された。  ペムブロリズマブと化学療法の併用は日本人胃・食道胃接合部がんの1次治療においてもグローバルと同様の結果を示した。  切除不能または転移を有するHER2陰性の胃・食道胃接合部腺がん1次治療で良好な結果を示したペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-859試験における日本人サブセットの結果が示された。日本人サブセットは101例で、ペムブロリズマブ+化学療法群は48例、コントロールとなる化学療法群は53例であった。

糖尿病患者の死因1位は男女ともに悪性新生物/糖尿病学会

 従来、糖尿病患者は、大血管障害で亡くなる患者が多かった。最新の『糖尿病診療ガイド 2022-2023』では、糖尿病治療の目標を「健康な人と変わらない人生」と定義し、糖尿病合併症である糖尿病細小血管合併症や動脈硬化性疾患の発症、進展の阻止を治療の柱としている。  では実際に糖尿病患者は、どのような死因で亡くなっているのだろうか。糖尿病学会では「糖尿病の死因に関する委員会」(委員長:中村 二郎氏[愛知医科大学医学部 先進糖尿病治療学寄附講座 教授])を設置し、全国の医療機関にアンケートを行い、死因の調査を行っている。

高齢者の睡眠の質改善に対するバイノーラルビートの効果

 バイノーラルビートとは、人間の耳では聞くことのできない脳に効果のある低い周波数を、特別な方法で聞こえるようにしたものであり、脳波をコントロールし、集中力や睡眠に影響を及ぼすことが期待される。高齢者の睡眠の質改善に対するバイノーラルビートの影響を明らかにするため、台湾・Shu Zen Junior College of Medicine and ManagementのPin-Hsuan Lin氏らは、単盲検ランダム化対照試験を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌2024年3月号の報告。  対象は、台湾の長期介護施設に入居している睡眠の質の低下が認められる高齢者64例。対象患者は、14日間のバイノーラルビートミュージック(BBM)介入を行ったBBM群と対照群にランダムに割り付けた。介入期間中、BBM群は、週3回、朝と午後に20分間、BBMを組み込んだTaiwanese Hokkien oldiesをリスニングした。

de novo転移乳がん、治療を受けない場合の生存期間

 新規に転移のある乳がん(dnMBC)と診断され、その後治療を受けなかった患者の全生存期間(OS)中央値は2.5ヵ月と、1回以上治療を受けた患者の36.4ヵ月に比べて有意に短かったことが、米国・Duke University Medical CenterのJennifer K. Plichta氏らの研究でわかった。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2024年3月5日号に掲載。