日本語でわかる最新の海外医学論文|page:131

抗精神病薬の多剤併用は50年間でどのように変化したのか

 抗精神病薬の多剤併用は、有害事象リスクが高く、単剤療法と比較し、有効性に関するエビデンスが少ないにもかかわらず、臨床的に広く用いられている。南デンマーク大学のMikkel Hojlund氏らは、精神疾患患者における抗精神病薬の多剤併用率、傾向、相関関係を包括的に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet Psychiatry誌2024年12月号の報告。  対象研究は、年齢や診断とは無関係に、精神疾患または抗精神病薬を使用している患者における抗精神病薬の多剤併用率を報告したオリジナル研究(観察研究および介入研究)。2009年1月〜2024年4月までに公表された研究をMEDLINE、Embaseより検索した。2009年5月以前の関連研究は、抗精神病薬の多剤併用率に関するこれまでの2つのシステマティックレビューより特定した。プールされた抗精神病薬の多剤併用率は、ランダム効果メタ解析を用いて推定した。抗精神病薬の多剤併用に関連する相関関係の特定には、サブグループ解析および混合効果メタ回帰解析を用いた。実体験を有する人は、本プロジェクトには関与しなかった。

心房細動の早期発見、早期介入で重症化を防ぐ/日本心臓財団

 日本心臓財団メディアワークショップは、都内で「心房細動の診療」をテーマにメディアワークショップを開催した。  心房細動(AF)は心臓内の心房が異常な動きをし、不整脈を引き起こす疾患である。AFでは、自覚症状を伴わないことが多く、気付かずに長期間放置すると心房内に生じた血栓が血流にのり、脳血管障害や心不全などを発症させる恐れがある。早期発見が重要であり、治療ではカテーテルアブレーションや薬物による治療が行われる。そして、早期発見では、日常の検脈や健康診断が重要となるが、近年では、テクノロジーの発達とデジタルデバイスの普及により、これまで見つかりにくかった無症候性や発作性タイプのAFの早期発見が可能になってきている。

食品中の果糖はがんの進行を促進する?

 糖の一種である果糖(フルクトース)は、がん細胞の増殖を促す燃料になる可能性があり、果糖の摂取を控えることが、がんと闘う手段の一つになり得ることが、新たな研究で示唆された。米セントルイス・ワシントン大学遺伝学・医学部教授のGary Patti氏らが、米国立衛生研究所(NIH)から一部助成を受けて実施したこの研究の詳細は、「Nature」に12月4日掲載された。  米国人が毎日口にしている食品には高果糖コーンシロップが多用されており、果糖はすでに米国人の食生活に広く浸透している。Patti氏は、「高果糖コーンシロップは、キャンディーやケーキから、パスタソースやサラダ用ドレッシング、ケチャップまで、極めて多くの食品に含まれている。意図的に摂取を回避しようとしない限り、高果糖コーンシロップを食事から除くことは困難である」と話す。

明晰な頭脳の維持には骨格筋量の維持が重要

 筋肉を維持することは認知症の予防に役立つ方法の一つである可能性があるようだ。新たな研究で、高齢者の側頭筋の減少はアルツハイマー病(AD)のリスク上昇と関連していることが示された。この研究を実施した米ジョンズ・ホプキンス大学医学部神経学教授のMarilyn Albert氏は、「骨格筋の少ない高齢者は、他の既知のリスク因子を考慮しても、認知症リスクが約60%高いことが明らかになった」と述べている。この研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2024、12月1〜5日、米シカゴ)で発表された。

中等~重度の椎骨脳底動脈閉塞、血管内治療vs.内科的治療/Lancet

 中等度~重度の症状を呈する椎骨脳底動脈閉塞患者において、標準的な内科的治療と比較して血管内治療は強固な有益性を示し、良好な機能的アウトカムの達成の可能性が高く、症候性頭蓋内出血のリスクは有意に増加するものの、全体的な機能障害および死亡率の有意な減少と関連することが、米国・ピッツバーグ大学のRaul G. Nogueira氏らが実施した「VERITAS研究」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年12月11日号で報告された。  研究グループは、急性椎骨脳底動脈閉塞患者における血管内治療の安全性と有効性を評価するために、標準的な内科的治療(対照)と比較した無作為化試験の系統的レビューを行い、患者レベルのデータを統合したメタ解析により、事前に規定したサブグループにおける有益性を検討した(特定の研究助成は受けていない)。

重症血友病A、新たな第VIII因子発現遺伝子治療が有望/NEJM

 第VIII因子インヒビターのない重症血友病A患者において、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入した自己造血幹細胞(HSC)による遺伝子治療は、安定した第VIII因子発現が得られ、第VIII因子活性は末梢血中のベクターのコピー数と相関することが、インド・Christian Medical College VelloreのAlok Srivastava氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2024年12月9日号に掲載された。  研究グループは、第VIII因子インヒビターのない重症血友病Aにおけるレンチウイルスベクターを用いた自己CD34陽性HSCによる第VIII因子発現遺伝子治療の安全性と有効性の評価を目的に、インドの単施設において第I相試験を行った(インド政府科学技術省などの助成を受けた)。

日本のメモリークリニックにおける聴覚障害や社会的関係とBPSDとの関連性

 認知症の行動・心理症状(BPSD)は、認知症患者とその介護者のQOLに悪影響を及ぼす。そのため、BPSDを予防するための修正可能なリスク因子を特定することは、非常に重要である。滋賀医科大学の田中 早貴氏らは、聴覚障害、社会的関係とBPSDとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。Psychogeriatrics誌2025年1月号の報告。  対象は、2023年7月~2024年3月に日本のメモリークリニックを受診した患者179例。純音聴力検査および質問票によるインタビューを行い、医療記録をレビューした。聴覚障害の定義は、聴力がより良好な耳における純音聴力検査で測定された平均聴力レベル40dB以上とした。BPSDの有無および重症度の評価には、BPSD25Qベースの質問票を用いた。交絡因子で調整したのち、聴覚障害、社会的関係指標とBPSDの有無および重症度との関連を評価するため、部分回帰係数を算出する多重回帰分析を行った。

一部の主要ながんによる死亡回避、予防が治療を上回る

 「1オンスの予防は1ポンドの治療に値する」は、米国の建国の父ベンジャミン・フランクリンの有名な格言の一つだが、がんに関してはそれが間違いなく当てはまるようだ。米国立がん研究所(NCI)がん対策・人口科学部門長のKatrina Goddard氏らによる新たな研究で、過去45年間に、がんの予防とスクリーニングによって子宮頸がんや大腸がんなど5種類のがんによる死亡の多くが回避されていたことが明らかになった。この研究の詳細は、「JAMA Oncology」に12月5日掲載された。

抗菌薬と手術、小児の虫垂炎に最善の治療法はどちら?

 過去数十年にわたり、小児の虫垂炎(いわゆる盲腸)に対しては、手術による虫垂の切除が一般的な治療とされてきた。しかし、新たな研究で、手術ではなく抗菌薬を使う治療が、ほとんどの症例で最善のアプローチであることが示唆された。この研究では、合併症のない虫垂炎(単純性虫垂炎)の治療に抗菌薬を使用することで、痛みが軽減し、学校を休む日数も減ることが示されたという。米ネムール小児医療センターのPeter Minneci氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に11月19日掲載された。

動物性から植物性タンパク質への摂取移行は心臓の健康に有益

 主なタンパク質源を肉から植物に切り替えると、心臓の健康に驚くべき効果がもたらされるようだ。30年にわたる研究により、動物性タンパク質に対する植物性タンパク質のエネルギー比率が最も高い人では、心血管疾患(CVD)リスクが19%、冠動脈性心疾患(CHD)リスクが27%低下することが示された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のFrank Hu氏は、「われわれの多くが、植物性タンパク質を主なタンパク質源とする食生活にシフトしていく必要がある。肉の中でも、特に赤肉や加工肉の摂取を減らし、豆類やナッツ類の摂取量を増やすことでそれが可能になる。このような食生活は、人間の健康だけでなく地球の健康にも有益だ」と述べている。この研究の詳細は、「American Journal of Clinical Nutrition」12月号に掲載された。

歯周病と糖尿病の強固な関連

 歯周病と糖尿病は、健康にダメージを与えるという点で恐ろしい関係性を持っていると、研究者らが警告している。その1人であるベルン大学(スイス)のAnton Sculean氏は、「最近の研究から、糖尿病は歯周病の主要なリスク因子であるだけでなく、この二つの病気の関係は双方向であって、互いに悪影響を強め合うことが分かっている」と解説する。なお、同氏は欧州歯周病連盟(EFP)の年次総会(EuroPerio11)の会長も務めている。  Sculean氏によると、この二つの病気の関係は、時間が経つにつれて致命的な結果を招く可能性さえあるという。中等度から重度の歯周病は、長期的には心臓病や全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスク上昇と関連してくるとのことだ。

抗凝固薬とNSAIDsの併用は出血リスクを高める

 抗凝固薬を使用している人が、イブプロフェンやナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用すると、脳や腸、肺、膀胱での制御不能な出血リスクが2倍以上に上昇することが、新たな研究で明らかにされた。抗凝固薬は通常、脳卒中や心筋梗塞、あるいは脚や肺の血栓を治療または予防するために処方される。一方、NSAIDsには血液を薄める作用のあることが知られている。オーフス大学病院(デンマーク)のSøren Riis Petersen氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に11月18日掲載された。  Petersen氏らは、デンマークの全国レジストリを用いて、抗凝固薬を使用している静脈血栓塞栓症(VTE)患者がNSAIDs(イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン)を使用した際の出血リスクについて検討した。対象は、2012年1月1日から2022年12月31日の間にVTEの治療のために経口抗凝固薬を処方された患者5万1,794人(年齢中央値69歳、女性48%)であった。

敗血症疑い患者の抗菌薬の期間短縮、PCTガイド下vs.CRPガイド下/JAMA

 敗血症が疑われる重篤な入院成人患者において、バイオマーカー(プロカルシトニン[PCT]とC反応性タンパク質[CRP])のモニタリングプロトコールによる抗菌薬投与期間の決定について、標準治療と比較してPCTガイド下では、安全に投与期間を短縮でき全死因死亡も有意に改善したが、CRPガイド下では投与期間について有意な差は示されず、全死因死亡は明らかな改善を確認することはできなかった。英国・マンチェスター大学のPaul Dark氏らADAPT-Sepsis Collaboratorsが、多施設共同介入隠蔽(intervention-concealed)無作為化試験「ADAPT-Sepsis試験」の結果を報告した。敗血症に対する抗菌薬投与の最適期間は不明確であり、投与中止の判断はバイオマーカー値に基づいて行われているが、その有効性および安全性の根拠は不明確なままであった。JAMA誌オンライン版2024年12月9日号掲載の報告。

閉経後HRT(ホルモン補充療法)のビッグデータを用いたtarget trial emulation(標的模倣試験)の結果(解説:名郷直樹氏)

閉経後のホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)は、かつて観察研究で心血管イベントを減らすがランダム化比較試験では増やすという真逆の結果が報告され、多くの論争を呼んだ。結論としては、RCTでは閉経直後でない多くの患者が対象とされていたり、 ITT解析がなされていたりすることと、観察研究での実際に投与された患者での解析による選択バイアスや、観察研究では排除できない交絡によって、違いが出たとされている。さらに最近では、新しいホルモン製剤によるHRTが主流となっている現状もある。

オンコタイプDX再発スコア≧31のHR+/HER2ー乳がん、アントラサイクリンによるベネフィット得られる可能性(TAILORx)/SABCS2024

 21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による再発スコア(RS)≧31の、リンパ節転移のないホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がん患者における術後療法として、タキサン+シクロホスファミド(TC)療法と比較したタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミド(T-AC)療法の5年無遠隔再発期間(DRFI)および無遠隔再発生存期間(DRFS)における有意なベネフィットが確認された。とくに明確にこのベネフィットが認められたのは、腫瘍径>2cmの患者であった。TAILORx試験の事後解析結果を、米国・シカゴ大学のNan Chen氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

日本におけるレカネマブ治療施設の現状〜北海道のいま

 認知症の中で最も多いアルツハイマー病は、認知症患者の70%を占める。日本では、2018年に65歳以上の高齢者500万人以上が認知症に罹患しており、この年齢層における患者数は2045年までに25〜30%増加すると予想されている。2023年、新たに認知症治療薬として承認されたレカネマブは、今後ますます使用されると予想されている。しかし、レカネマブの使用では、アミロイドPETスキャンやMRIモニタリングなどの厳格なマネジメントが必要とされ、専門施設の拡大が求められるため、治療施設の不足や治療アクセスの悪さに関する懸念が課題となる。北海道大学の大橋 和貴氏らは、地理情報システムデータを用いて、北海道におけるレカネマブの空間的アクセスの評価を行った。Health Services Insights誌2024年11月18日号の報告。

乾癬治療のデュークラバシチニブ、長期投与の有用性

 中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬において、3年間のデュークラバシチニブによる継続治療は安全かつ有効であることを、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のApril W. Armstrong氏らが、3試験(POETYK PSO-1、PSO-2、長期継続試験)の結果のプール解析を行い報告した。デュークラバシチニブ治療は3年間にわたり一貫した安全性プロファイルを示し、有害事象(AE)および重篤な有害事象(SAE)の発現率は、時間の経過とともに低下または同程度であった。結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬患者に対するデュークラバシチニブの長期安全性と有効性を、さらに支持するものであった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。

鉄剤処方や検査・問診のポイント~「鉄欠乏性貧血の診療指針」発刊

 貧血の7割を占めるといわれる鉄欠乏性貧血。これに関し『鉄欠乏性貧血の診療指針』が2024年7月に発刊された。これまでに「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」が2004年から2015年にわたり3回発刊されてきたが、近年では高用量の静注鉄剤をはじめとした新たな鉄剤が普及しつつあることから、鉄欠乏性貧血の診療の改訂が必要と判断され、このたび、タイトルを刷新して発刊に至った。そこで今回、診療指針作成のためのワーキンググループのメンバーである生田 克哉氏(北海道赤十字血液センター)に鉄欠乏性貧血を診断、治療するうえで知っておくべきポイントなどを聞いた。なお、本書は発刊1年後を目処に学会ウェブサイトへPDFとして掲載される予定だ。

患部への血流遮断で変形性膝関節症の痛みが軽減

 変形性膝関節症(OA)の患部への血流を遮断することで膝の痛みが軽減し、膝関節置換術の必要性を遅らせたり回避したりできる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ベルリン大学(ドイツ)シャリテ病院のFlorian Nima Fleckenstein氏らによるこの研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2024、12月1〜5日、米シカゴ)で発表された。  膝関節の周りでは、いくつかの枝を持つ動脈がネットワークを形成しているが、OA患者では、これらの動脈に異常が見られる。膝動脈塞栓術(GAE)は、介入放射線科医が膝の痛みのある部位に対応する血管の枝に小さな粒子を注入し、その部位への血流を遮断する治療法である。異常な血管の塞栓は、OAに特徴的な炎症、軟骨破壊、および感覚神経の成長サイクルの抑制につながる。

再利用ペースメーカーは安全で再利用可能

 再利用ペースメーカーは新しいペースメーカーと同程度に安全かつ効果的であり、低・中所得国の多くの人に利用可能な治療選択肢を提供する可能性があるとする研究結果が報告された。この研究を実施した米ミシガン大学医学部循環器科内科部門のThomas Crawford氏は、「米国と異なり、低・中所得国の人は、ペースメーカー治療が利用できなかったり、利用できたとしても費用が高額過ぎたりすることが多い」と指摘。「われわれのMy Heart Your Heart(MHYH)プログラムは、それを変えることを目指している」と話している。この研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16〜18日、米シカゴ)で発表された。