腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

救急患者の低血糖の原因は副腎不全が意外に多い

 救急部門に収容された患者の低血糖の原因として、血糖降下薬、飲酒に続き、副腎不全が3番目に多いというデータが報告された。新小文字病院内分泌・糖尿病内科の河原哲也氏らの研究結果であり、詳細は「Journal of the Endocrine Society」に8月4日掲載された。同氏は、「副腎不全による低血糖はわれわれが考えているよりもはるかに多い可能性がある。原因不明の低血糖症例では副腎機能を評価すべきと考えられる」と述べている。  低血糖の大半は原因を特定可能なものの、救急患者の低血糖の約1割は原因不明との報告も見られる。一方、低血糖の既知の原因の一つとして副腎不全が挙げられ、適切に治療されない場合、副腎クリーゼなどの重篤な状態につながる可能性がある。ただし、救急患者の低血糖原因としての副腎不全の実態は明らかにされていない。河原氏らは、同院の救急部門で低血糖が認められた患者を対象として、この点の詳細な検討を行った。

CKD女性の多くが未診断で管理も徹底されていない

 女性は男性に比較して、慢性腎臓病(CKD)の疑いがあるのに精査されていなかったり、糖尿病などを有するハイリスク病態であっても疾患管理が十分行われていない患者が多いことを示すデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のOskar Swartling氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Society of Nephrology(JASN)」に7月29日掲載された。  CKDの有病率や腎機能低下の進行速度、長期予後には性差が存在することが報告されている。Swartling氏らは、そのような性差の一部は、CKDの診断や疾患管理などのヘルスケア状況が男性と女性で異なることによって説明できる可能性があると考え、以下の検討を行った。

透析開始2週後の高BMIが死亡リスクの低さと関連―国内単施設での検討

 透析導入時点のBMI低値は死亡リスクの高さと関連する一方、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連するというデータが報告された。中東遠総合医療センター腎臓内科の稲垣浩司氏らの研究によるもので、結果の詳細は「PLOS ONE」に6月24日掲載された。  肥満は代謝性疾患や心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)のリスク因子だが、一方で高齢者や一部の慢性疾患患者ではBMI高値の方が死亡リスクが低いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる現象が見られることが知られている。日本人透析患者でも、BMIが低いほど死亡リスクが高いとする報告がある。ただし、BMI高値が死亡リスクの低さと関連することは示されていない。また透析患者のBMIは体液量によって大きく変動するため、どの時点でBMIを評価するかによって、死亡リスクとの関連性が異なる可能性がある。そこで稲垣氏らは、初回透析時のBMI、および、体液過剰が是正されたと考えられる透析開始2週間後のBMIと、全死亡のリスクとの関係を検討した。

免疫抑制患者、ブースター接種50日以降に入院・死亡リスク増/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株とオミクロン変異株が優勢であった時期に、ワクチンの初回および追加接種を受けた集団では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する肺炎による入院や死亡の発生率が低く、複数回接種により重症COVID-19関連疾患の予防効果がもたらされた可能性があることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJ. Daniel Kelly氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年9月26日号で報告された。

単回の中強度運動は腎血流量や腎機能を低下させない

 単回の中強度運動は腎血流量や腎機能に影響を及ぼさないことを示すデータが報告された。福岡大学スポーツ科学部の川上翔太郎氏らの研究によるもので、詳細は「Physiological Reports」に8月4日掲載された。  運動による代謝性疾患や心血管疾患などに対する予防・治療上のメリットは、既に強固なエビデンスで裏付けられている。ただし、運動によって筋肉への血流が増えて腎血流量が低下したり、運動後に尿蛋白が陽性になったりすることから、腎臓病の治療において運動はあまり強く推奨されず、むしろ運動を控える指導が行われることがあった。一方で、近年の研究で運動は慢性腎臓病(CKD)患者の蛋白尿を悪化させない可能性が報告されており、運動がCKD患者に対する治療の選択肢となり得る。しかしながら、CKD患者にとって安全で効果的な運動条件は整備されておらず、運動療法の基準を確立する必要性が高まっている。

教育研修プログラムとして高く評価(解説:野間重孝氏)

現在ヨード造影剤を用いた検査・治療手技は日常診療で欠かすことのできない存在となっている。その際問題になるのが造影剤による急性腎障害(CIN)であり、ヨード造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン値が前値より0.5mg/dL以上、または前値より25%以上上昇した場合と定義される。CINは院内発症の急性腎障害(AKI)の10~13%に及ぶと考えられ、多くのAKIが不可逆的であるのと同様にCINもその多くが不可逆的であり、その後の治療の大きな障壁となる。検査・治療に当たる医師は最大限の注意を払うことが求められ、裏付けとなる十分な知識・経験と技術が求められるところとなる。本研究は非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンションを施行する心臓専門医に対して教育、造影剤投与量および血行力学的に誘導された輸液目標に対するコンピュータによる臨床的意志決定支援、監査とフィードバックを行い、介入前後の成績を比較検討したものである。この一連の報告は、研究というより教育・研修プログラムの効果判定とその報告と考えるべきで、その意味から今回の試みは成功だったと評価されると考えられる。

SGLT2阻害薬とGLP1受容体作動薬の処方率、人種・民族間で格差/JAMA

 2019~20年の米国における2型糖尿病患者へのSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の処方率は低く、白人や非ヒスパニック/ラテン系と比較して、とくに他の人種やヒスパニック/ラテン系の患者で処方のオッズ比が有意に低いことを、米国・カリフォルニア大学のJulio A. Lamprea-Montealegre氏らが、米国退役軍人保健局(VHA)の大規模コホートデータ「Corporate Data Warehouse:CDW」を用いた横断研究の結果、報告した。2型糖尿病に対する新しい治療薬は、心血管疾患や慢性腎臓病の進行リスクを低減することができるが、これらの薬剤が人種・民族にかかわらず公平に処方されているかどうかは、十分な評価がなされていなかった。著者は、「これらの処方率の差の背景にある要因や、臨床転帰の差との関連性を明らかにするために、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2022年9月6日号掲載の報告。

冠動脈造影/PCI時、コンピュータ支援で急性腎障害軽減/JAMA

 非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する心臓専門医に対し、教育プログラムや造影剤投与量などに関するコンピュータによる監査とフィードバックを伴う臨床意思決定支援の介入を行うことで、これら介入のない場合と比べて施術を受けた患者が急性腎障害(AKI)を発症する可能性は低く、時間調整後絶対リスクは2.3%低下した。また、造影剤の過剰投与について同リスクの低下は12.0%だった。カナダ・カルガリー大学のMatthew T. James氏らが、心臓専門医34人とその患者を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果で、JAMA誌2022年9月6日号で発表した。AKIは、冠動脈造影やPCIでは一般的な合併症で、高コストおよび有害長期アウトカムと関連する。今回の結果について著者は、「こうした介入が今回の試験以外の環境下でも有効性を示すかどうか、さらなる検討が必要である」と述べている。

腎結石の再発予防のための食事とは

 腎結石の痛みを経験したことのある人なら、目がくらむほどの激痛を二度とは経験したくないと思うことだろう。腎結石の再発予防に役立つ可能性のある食事スタイルが報告された。米メイヨー・クリニックのJohn Lieske氏らが行った前向き研究の結果であり、詳細は「Mayo Clinic Proceedings」に8月1日掲載された。  Lieske氏らは、腎結石の再発に食事スタイルが関与しているか否かを検討するために、2009年1月~2018年8月に腎結石の痛みのために同院で治療を受けた411人と、比較対照群384人の食物摂取状況を把握した上で、4.1年(中央値)追跡した。その結果、腎結石既往群の73人が追跡期間中に症状を再発した。

低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。 . 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。