内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:43

肥満や脂質異常症がCKDリスクを増大か/東大

 日本のメタボリックシンドロームの基準値を外れる内臓脂肪蓄積や脂質異常症、肥満は尿蛋白の発現リスクが高く、HDLコレステロール低値は腎機能低下と関連していることを、東京大学の吉田 唯氏らが明らかにした。Internal Medicine誌オンライン版2025年4月12日号掲載の報告。  高血圧や高血糖と慢性腎臓病(CKD)との関連は多く報告されているが、肥満や内臓脂肪蓄積、脂質異常症とCKDの関連に関しては見解の一致が得られていない。そこで研究グループは、大規模な職域健診データを解析し、日本のメタボリックシンドロームの基準値(ウエスト周囲径[男性≧85cm、女性≧90cm]、トリグリセライド値≧150mg/dL、HDLコレステロール値<40mg/dL)およびBMI値25以上とCKDの発症・進行との関連を調査した。

帯状疱疹ワクチンで認知症リスク20%低下/Nature

 帯状疱疹ワクチンは、痛みを伴う発疹の予防だけでなく、認知症の発症から高齢者を守る効果もあるようだ。新たな研究で、英国のウェールズで帯状疱疹ワクチンが利用可能になった際にワクチンを接種した高齢者は、接種しなかった高齢者に比べて認知症の発症リスクが20%低いことが示された。米スタンフォード大学医学部のPascal Geldsetzer氏らによるこの研究の詳細は、「Nature」に4月2日掲載された。  帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の原因ウイルスでもある水痘・帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる。このウイルスは、子どもの頃に水痘に罹患した人の神経細胞内に潜伏し、加齢や病気により免疫力が弱まると再び活性化する。帯状疱疹ワクチンは、高齢者の水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫反応を高め、潜伏中のウイルスが体表に現れて帯状疱疹を引き起こすのを防ぐ働きがある。しかし、最近の研究では、特定のウイルス感染が認知症リスクを高める可能性が示唆されていることから、Geldsetzer氏らは、帯状疱疹ワクチンにも脳を保護する効果があるのではないかと考えた。

食事中の飲酒量が多いと片頭痛発生率が低い

 アルコール摂取と片頭痛または重度の頭痛との関係は、これまでの文献において依然として議論の的となっている。アルコールは広く消費されている飲料であるため、アルコールと片頭痛または重度の頭痛との関連を明らかにすることは、患者のマネジメントに役立つと考えられる。中国・安徽医科大学のYi Tang氏らは、アルコール摂取と片頭痛または重度の頭痛との潜在的な関係を調査するため、本研究を実施した。Brain and Behavior誌2025年3月号の報告。  1999年3月〜2004年12月の米国国民健康栄養調査(NHANES)データベースのデータを用いて、閾値効果、平滑化曲線フィッティング、多変量ロジスティック回帰を網羅した分析を行い、アルコール摂取レベルと片頭痛または重度の頭痛との関係を評価した。サブグループ解析と相互作用テストにより、異なる層別集団間におけるこれらの関連の安定性を調査した。

1日の心拍数を歩数で割った値がCVリスクの評価に有用

 健康増進のためにスマートウォッチを使って毎日の歩数を測定している人は少なくない。しかし、新たな研究によると、スマートウォッチは歩数だけでなく、健康にとって重要な別の指標も測定しており、それら両者のデータを用いることで、より高い精度で健康効果を予測できる可能性があるという。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のZhanlin Chen氏らの研究の結果であり、米国心臓病学会(ACC.25、3月29~31日、シカゴ)で報告された。  一般的に、健康のために1日1万歩歩くことが推奨されている。しかし実際には、研究によって、最適とされる歩数は異なる値が報告されている。一方、Chen氏らの研究結果は、単に歩数を測定するのではなく、1日の心拍数を歩数で割ると、心臓の健康状態をより高精度に評価できるというものだ。同氏は同大学発のリリースの中で、「われわれが開発した方法は、運動そのものではなく、運動に対して心臓がどのように反応するかという点に着目したものだ。身体活動が1日を通して変動する中で、ストレスが加わった時に心臓がそれに適応する能力を把握しようとする、より核心的な課題に迫る意義の高い方法である。われわれの研究は、スマートウォッチというウェアラブルデバイスでそれを捉える初の試みだ」と話している。

健康長寿を目指すなら、この食事がベスト

 高齢になっても健康を維持するためには、中年期にどのような食生活を送れば良いのだろうか。10万5,000人を超える男女を最長で30年間にわたって追跡し、8つのパターンの食事法について調べた研究からは、代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index;AHEI)が明確に優れていることが示された。コペンハーゲン大学(デンマーク)公衆衛生学准教授で、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の栄養学客員准教授でもあるMarta Guasch-Ferre氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に3月24日掲載された。  AHEIは2002年に、米国農務省(USDA)による米国の食事ガイドラインの遵守度の指標である健康食指数(Healthy Eating Index;HEI)の代替指標として、ハーバード大学の研究者らにより作成された。ハーバード大学によると、HEIとAHEIは似ているが、AHEIの方が慢性疾患のリスクを軽減することにより重点を置いた指標になっているという。AHEIの高い食事とは、果物や野菜、全粒穀物、ナッツ類、豆類、健康的な脂肪を豊富に摂取し、赤肉や加工肉、加糖飲料、塩分、精製穀物の摂取は控えた食事である。

ゾルピデムとBZDの使用が認知症リスク増加と関連〜メタ解析

 ガンマアミノ酪酸(GABA)系は、認知機能や記憶プロセスに関連していることが知られている。そして、GABAA受容体およびその他の関連経路の活動は、βアミロイドペプチド(Aβ)の蓄積に影響を及ぼす。そのため、GABAA受容体に影響を及ぼす薬剤の使用とアルツハイマー病および認知症の発症リスクとの関連を調査する研究が進められてきた。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのKimia Vakili氏らは、ベンゾジアゼピン(BZD)、ゾルピデム、トリアゾラム、麻酔薬に焦点を当て、GABAA受容体に影響を及ぼす薬剤とアルツハイマー病および認知症リスクとの関連を明らかにするため、文献レビューおよびメタ解析を実施した。Molecular Neurobiology誌オンライン版2025年3月20日号の報告。

「急性腹症診療ガイドライン2025」、ポイント学習動画など新たな試みも

 2025年3月「急性腹症診療ガイドライン2025 第2版」が刊行された。2015年の初版から10年ぶりの改訂となる。Minds作成マニュアル(以下、マニュアル)に則って作成され、初版の全CQに対して再度のシステマティックレビューを行い、BQ81個、FRQ6個、CQ14個の構成となっている。8学会の合同制作で広範な疾患、検査を網羅する。診療のポイントをシナリオで確認できる動画を作成、システマティックレビューの検索式や結果をWeb上で公開するなど、新たな試みも行われた。改訂出版委員会の主要委員である札幌医科大学・三原 弘氏に、改訂版のポイントや特徴を聞いた。  ガイドライン自体の評価はMindsなどが行っているが、私たちはさらにマニュアルに従ってガイドラインが実臨床や社会に与えた影響を評価しようと考えた。具体的には、初版刊行の前後、2014年と2022年に日本腹部救急医学会と日本プライマリ・ケア連合学会の会員を対象にアンケート調査を行った。ガイドラインの認知度と実臨床の変化を調べ、改訂につなげることが目的だ。

タバコ規制により米国で400万人近い人が死亡を回避

 喫煙者を減らすための公衆衛生キャンペーンやタバコ税の導入などのさまざまな対策によって、米国では過去50年間で約400万人の肺がんによる死亡が防がれたことが明らかになった。回避された肺がんによる死亡者数は、同期間に回避された全てのがん死の約半数を占めるという。  この研究は、米国がん協会(ACS)のFarhad Islami氏らによるもので、詳細は「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に3月25日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「肺がんによる死亡を回避し得た人の推定数は膨大な数に上っている。これは、喫煙防止のための公衆衛生対策の推進が、肺がんによる早期死亡の低減に大きな効果を発揮してきたことを物語っている」としている。ただし一方で同氏は、「それにもかかわらず、肺がんは依然として米国におけるがん死の主要な原因であり、さらに、喫煙に起因する肺がん以外のがん、および、がん以外の喫煙関連疾患の罹患率や死亡率は依然として高いままだ」と、さらなる改善の必要性を強調している。

熱中症の重症度が尿でわかる?

 昨年、5~9月に熱中症で搬送される人の数は過去最多を記録した。熱中症の重症度は、搬送先施設で血液検査により評価される。しかし、尿中の肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)も熱中症の重症度と相関するという研究結果が報告された。L-FABPは熱中症の生理学的重症度や予後を予測するツールになり得るという。日本医科大学救急医学教室の横堀將司氏、関西医科大学総合医療センター救急医学科の島崎淳也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月12日掲載された。  熱中症は、高温多湿環境下で体内の水分・塩分量のバランスが崩れ、体温調節機能や循環機能が破綻して発症する。熱中症に対する適切な介入と転帰の改善には重症度の迅速な評価が不可欠だが、救急外来(ER)であっても、血液検査では結果の確認に長い時間がかかる。このような背景から、熱中症の重症度の判断には、よりアクセスしやすい簡易迅速検査の開発が待たれていた。

症状のない亜鉛欠乏症に注意、亜鉛欠乏症の診療指針改訂

「亜鉛欠乏症の診療指針2024」が2025年1月に発行された。今回の改訂は7年ぶりで、きわめて重要な8つの改訂点が診療指針の冒頭に明記され、要旨を読めば最低限の理解がカバーできる構成になっている。だが、本指針内容を日常診療へ落とし込む際に注意したいポイントがある。そこで今回、本指針の作成委員長を務めた脇野 修氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 腎臓内科分野 教授)に、亜鉛欠乏症の現状や診断・治療を行う際の注意点などについて話を聞いた。