内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:154

病院機能評価「医療安全」への対策強化で「カルテレビュー」導入へ

 最近では紙カルテ(診療録)から電子カルテへの普及が進み、病院のみならずクリニックでの導入も多くみられるようになった。また、国が推進するマイナンバーカードによる健康保険証には、個人のカルテ情報の搭載も予定され、いつでも、どこでも自分のカルテが読める時代が期待されている。そんなカルテは、医療事故などが発生した場合、真っ先に調査が行われる患者や患者遺族、医療機関などにとって事故と結果の因果関係を証明する大切な資料となるが、カルテの中身の記載については個々の医師の判断に任されている。

PPIと認知症リスクの新たな試験、4.4年超の使用で影響か

 長年にわたってプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されている高齢者では、認知症を発症するリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で示された。米ミネソタ大学公衆衛生学部教授で血管神経学者のKamakshi Lakshminarayan氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に8月9日掲載された。  この研究は、PPIの長期使用に伴う潜在的な危険性を明らかにした研究の中で最新のものだ。PPIは医師によって処方される医療用医薬品のほか、一般用医薬品(OTC医薬品)としても販売されている。PPIは慢性的に胃酸が食道に逆流し、胸やけの症状などをもたらす胃食道逆流症(GERD)に対して処方されてきた。しかし近年、PPIの長期使用が心筋梗塞や腎臓病、早期死亡などさまざまな健康リスクに関連することを示した研究結果が相次いで報告されている。2016年には認知症もこのリスクに含まれることを示唆する研究が発表されて話題となった。

運動で認知機能が改善する一方、ビタミンDは効果なし?

 認知機能が軽度に低下している高齢者を対象とする研究から、運動と認知機能トレーニングによって認知機能が改善する可能性のあることが明らかになった。一方、それらにビタミンD摂取を追加しても、上乗せ効果は見られないという。モントリオール心臓研究所(カナダ)のLouis Bherer氏らが行ったランダム化比較試験の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に7月20日掲載された。論文の上席著者であるBherer氏は、「認知症の確立された治療法はまだないが、ライフスタイルの改善は認知症の予防に役立ち、加齢や慢性疾患が脳の健康に及ぼす影響を部分的に打ち消すことができる」と話している。  この研究は、認知機能が正常な状態と認知症との中間にあたる「軽度認知障害(MCI)」の患者175人(年齢73.1±6.6歳、女性49.1%)を対象に行われた。全体を無作為に5群に分類して20週間介入し、認知機能の変化を調査。設定されていた5群では、有酸素運動、バランス力を高める運動、認知機能トレーニング、偽りの認知機能トレーニング、ビタミンD摂取(1万IUを週3回)、ビタミンDのプラセボ摂取が組み合わせて行われており、それらの介入効果を比較できるという研究デザインだった。

ファイザーのXBB.1.5対応コロナワクチン承認/厚労省

 厚生労働省は9月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株対応ワクチンの一部変更について承認したことを発表した。今回の承認で、ファイザーのオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む1価ワクチンが追加された。一変承認されたのは対象年齢別に、「コミナティRTU筋注」、「コミナティ筋注5~11歳用」、「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用」の3タイプとなる。いずれも2023年7月7日に製造販売承認事項一部変更申請されていたもので、9月20日以降の秋開始接種に使用される。

日本人のBMIと認知症リスク、男女間で異なる

 BMIと認知症リスクとの関連は、年齢によりばらつきがあり、性別の影響を受ける可能性がある。新潟大学のAlena Zakharova氏らは、地域在住の日本人を対象に、BMIと認知症リスクとの関連に対する性別の影響を明らかにするため、コホート研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年8月1日号の報告。  ベースライン時(2011~13年)に40~74歳であった地域在住の日本人1万3,802人を対象に8年間のフォローアップ期間を伴うコホート研究を実施した。直接測定により収集された身長、体重、腹囲を含む社会人口統計学的およびライフスタイル、病歴に関する情報を自己記入式アンケートで収集した。BMIに基づき参加者を次の6群に分類した。

DOAC内服AF患者の出血リスク、DOACスコアで回避可能か/ESC2023

 心房細動患者における出血リスクの評価には、HAS-BLEDスコアが多く用いられているが、このスコアはワルファリンを用いる患者を対象として開発されたものであり、その性能には限界がある。そこで、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らは直接経口抗凝固薬(DOAC)による出血リスクを予測する「DOACスコア」を開発・検証した。その結果、大出血リスクの判別能はDOACスコアがHAS-BLEDスコアよりも優れていた。本研究結果は、オランダ・アムステルダムで2023年8月25日~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology 2023(ESC2023、欧州心臓病学会)で発表され、Circulation誌オンライン版2023年8月25日号に同時掲載された。

スタチン開始後の効果、高齢者では大きい!?

 高齢になってからスタチンの使用を開始した患者では、若いときにスタチンの使用を開始した患者と比べて、同薬により得られるLDLコレステロール(LDL-C)の低減効果が大きい可能性のあることが、約8万3,000人のデンマーク人患者のデータ解析から明らかになった。デンマーク国立血清研究所のMarie Lund氏らによる研究で、詳細は、「Annals of Internal Medicine」に8月1日掲載された。Lund氏は、「スタチンによる治療が必要な高齢患者は、同薬による副作用のリスクを最小限に抑えるために、低強度のスタチンから開始すると良いのではないか」との見解を示している。  スタチンは安全な薬と考えられているが、一部の人に筋肉痛や血糖値の上昇などの問題を引き起こすことがある。副作用が生じる可能性は通常、スタチンの強度が高まるほど上昇し、また、高齢者では若い人よりも副作用が起きやすい。そのため、高齢患者にとっては、低強度のスタチンで治療を開始することが「好ましい選択肢」になり得るとLund氏は言う。ただし、その際には、高齢者の健康状態や、その後の心筋梗塞や脳卒中のリスク低減の必要性といった問題を考慮する必要があることも付け加えている。

NSAIDsがC. difficile感染症を悪化させる機序とは

 多くの人々に鎮痛薬や抗炎症薬として使用されている非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は、クロストリディオイデス・ディフィシル(C. difficile)への感染により生じる消化管感染症(CDI)を悪化させることが報告されている。こうした中、マウスを用いた研究でこの機序の解明につながる結果が得られたことを、米ペンシルベニア大学のJoshua Soto Ocana氏らのグループが発表した。詳細は、「Science Advances」に7月21日号に掲載された。  C. difficileは世界の抗菌薬関連下痢症の主要な原因菌である。CDIは、軽度の下痢から複雑な感染症まで多様な症状を引き起こし、死亡の原因になることもある。

オリーブ油の摂取で認知症による死亡リスクが低下する?

 年を重ねても鋭敏な頭脳を保ちたい人は、マーガリンの代わりにオリーブ油を使うようにすると良いようだ。米国のヘルスケア専門家9万人以上を対象とした予備的研究から、オリーブ油の愛用者は、オリーブ油をほとんど摂取しない人に比べて、今後30年間で認知症により死亡するリスクが25%低いことが明らかになった。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAnne-Julie Tessier氏らによるこの研究の詳細は、米国栄養学会(ASN)の年次総会(Nutrition 2023、7月22〜25日、米ボストン)で発表された。

RNA干渉が切り開く、画期的な高血圧治療薬―zilebesiranの挑戦―(解説:石上友章氏)

核酸・DNAを鋳型にして、メッセンジャーRNAが転写される。4種類の塩基の組み合わせを暗号にして、20種類のアミノ酸に翻訳されることで、タンパク質の合成が行われる。人体は、さまざまなタンパク質から構成されており、染色体DNAは、人体の設計図である。RNA干渉(RNA interference)とは、2本鎖RNAが、いくつかのタンパク質と複合体を作り、相同な塩基配列を持つメッセンジャーRNAと特異的に対合し、切断することによって、遺伝子の発現を抑制する現象である。RNA干渉は、遺伝子の機能を人為的に抑制することに応用できるので、遺伝子機能解析のツールとして、実験室ではおなじみの技術であった。